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妻、猫になり逃走中! 至急確保し溺愛せよ!  作者: 専業プウタ@コミカライズ準備中


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25/38

25.強くならなきゃ

扉が閉じる音がすると、部屋には私とクリフトン様とフェリクスの三人になった。

昼の光を遮る重厚なカーテンで薄暗く、空気は張り詰めていた。


「クリフトン様、フェリクスを早く治してください」


「もう、本当に不器用なのね。見てられなかったわよ。さっきのやり取り⋯⋯」

クリフトン様が眉を下げ呆れ顔でフェリクスを治癒する。

彼女がかざした両手から淡い光が発せられた。

フェリクスの内出血はひき、顔色は戻って来てるがフラフラの右手と左足が気になった。


「右足と左足も大丈夫ですよね」

「はぁ、こっちはね。ビルゲッタ元皇太子妃殿下の治療でクタクタなの。フェリクスちゃんの治療には時間がかかるわ」

「申し訳ございません。クリフトン様。フェリクスもごめんね」

私の言葉にフェリクスは顔を赤める。

(もしかして、さっきの愛の告白を本気にしてる?)


「フェリクス、ごめん。さっき、貴方を愛してると言ったのは嘘なの。そうでも言わなきゃキルステンが引かない気がして⋯⋯」

「分かってるよ。でもさ、もう少し夢見させようや」

左手で軽く私を小突いてくるフェリクスに、我慢していた涙が溢れる。

「おい! 大丈夫か?」

フェリクスが心配そうにするので、私は笑えて来てしまった。

どう考えても瀕死の彼が一番大丈夫ではない。


(そうだフランシスは!)

私は立ち上がり部屋を出ようとすると、遠慮がちなノック音と共に見慣れたメイドが入ってきた。


「ヘルカ!」

私は実家ロレーヌ侯爵邸のメイドであるヘルカがフランシスを抱いて現れたので驚いてしまう。

そっとフランシスを受け取ると、彼はキルステンそっくりのアメジストの瞳を隠すようにすやすやと眠っていた。


「ビルゲッタお嬢様、あの時の猫だったんですね」

「キルステンから事情を聞いたの? ここにはどうして?」

「はい。キルステン皇太子殿下から、遠い地で不安な生活をしていただろうお嬢様を気遣って欲しいと言い使って参上した次第です」

私は心臓をギュッと掴まれたように胸が苦しくなった。

逃げた私を探して、生活を気遣って、侯爵邸のメイドまで連れてきた彼。

ヘルカは皇宮の侍女とは違う。

幼い時から私をずっと支えて来てくれた人だ。

私に興味ないように見えたのに、キルステンは私が心から信頼する相手を知っていた。


私の拒絶する言葉を聞いて去っていった時、彼はどんな気持ちになっただろう。


胸を押さえていると、私の腕に触れる男の手に気がついた。

「フェリクス、右手大丈夫になったの?」

私の言葉にフェリクスが笑顔で応える。


「そうよ。今、私が全力で治してるからね。いくら何でもフェリクスちゃん不憫過ぎるでしょ!」

クリフトン様は額に汗をかいていて、無理をしているのが分かる。

私は無力で、今も自分の失態を人に尻拭いさせていた。


胸に抱いている愛しい我が子の為にも強くならなければならない。


「ビルゲッタ、皇族の血を引くフランシスがいる以上、ルスラム帝国が俺たちをこのままにしておくとは思えない」

フェリクスが真剣な目で私に語りかけた。

彼の言う通りだ。まるで駄々っ子のようにキルステンを追い返したが、フランシスが彼の血を引く皇族の子だという事はバレているだろう。


「そうね。でも、フランシスも昼間は猫になっちゃうわ。呪いがかかっている限り、帝国には渡せない」

フランシスのいるべき場所に戻しても、昼間は猫。


いくら皇族でもそんな危うい存在を立太子させられない。

キルステンは新しい妻を娶るだろう。

そして、その女との子が立太子して、やがてルスラム帝国を治めることになる。


フランシスの今後を考えなければいけないのに、私はキルステンが他の女を抱いている想像をしてしまい気分が悪くなった。


「おい! 大丈夫か? クリフトン様、俺は良いのでビルゲッタをお願いします」

どこまでも優しい幼馴染の眼差しと、クリフトン様の全てを見透かすような瞳。

私は胸に抱く我が子の温もりを力に変えて、どこまでも強かに強くなる決意をした。

少しでも面白いと思っていただけたら、ブックマーク、評価、感想、レビューを頂けると嬉しいです。貴重なお時間を頂き、お読みいただいたことに感謝申し上げます。

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