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妻、猫になり逃走中! 至急確保し溺愛せよ!  作者: 専業プウタ@コミカライズ準備中


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18.呪いを解く鍵

「なんで、謝るの?」

「また断られる気がして、自分が傷つきたくない保険かな? ビルゲッタの気持ちが固まったら、その指輪を左手の薬指に付けてくれる?」


私はコクコクと頷いた。

頭の中にはいつもキルステンがいる。それでも、フランシスと私をここまで思ってくれる男を手放せる気がしない。


月が真上に来るような真夜中。フランシスを抱いた私とフェリクスはクリフトン・アルベールの王宮内の住居の前に立っていた。そこには門番のような案内人がいる。


「この門を潜って緑のアーチをずっといくと、クリフトン様の邸宅ローズパレスです。この敷地内にある庭も劇場も舞踏会などが行われるホールも全てクリフトン様の持ち物です。招待された人間以外はこのアーチを潜る事を許されていません。私はここでお待ちしています」


「ありがとうございます」


クリフトン・アルベールは王城の中の閉鎖された空間で住む、変わり者と聞いていた。しかし、実際は自分の満足のいく小さな国を作っている完璧主義者にも見える。


緑のアーチを潜って百メートル程歩いたところで、腰までのウェーブのかかった真っ白な髪を靡かせてくる銀色の瞳をした泣きぼくろのある男性が歩いてくるのが分かった。


クリーム色のドレスを着た一目で分かる高貴さを持った彼の正体を、私は肖像画を見て知っていた。肖像画の彼は軍服を着ていた。彼の肖像画から想像していた印象は婀娜っぽい女を垂らしこむ危険な男。だけれども、今、彼はドレスを着ている。


「クリフトン様、初めまして、エリナと申します」

私が優雅にゆっくりとお辞儀をすると、彼は私を見下すような目で意地悪そうに笑った。


「成る程、厳しく採点してしようとしても、減点する箇所が見つからないくらい美しいわね。貴方がアルベール王国の人間なら今すぐ地下牢行きにしてるわ」


クリフトン様は自分より美しい人間は地下牢に入れるという噂がある男。

当然、根も歯もない噂だと私は思っていたが、噂ではなく本当の事なのかもしれない。


「ふふっ、私のような平民を褒めて頂き光栄ですわ」


クリフトン様は私の物言いに面を食らっているようだった。


「平民? もう少し演技をしたら? どんな格好をしても、貴方の身元が透けて見えるわ」

私は彼の言葉に心臓が跳ねて、思わず隣にいるフェリクスを見る。


「そうやって、すぐに男に助けに求める女は嫌いよ。女ってほんと狡いわよね。雲を食べてそうな顔をして、無自覚に強か⋯⋯」


私は一瞬何を言われているのか分からなかった。クリフトン様は前世の世界でいうところの「オネエ」。しかし、この世界にオネエという概念は存在しない。そのせいか、フェリクスも事前に彼のことを性別もこの世の原理も全てを超越した方だと私に説明した。前世と今世も合わせてオネエに会うのは初めてだが、非常に毒舌だ。しかしながら、彼の的を射た意見に胸が痛くなる。


「私は自分の足で立っていけるようになりたくてここに来ました。立ち話も何ですから、中に案内して頂いても宜しいですか?」


夜風が寒くて寝入っているフランシスが起きてしまいそうだ。


私はクリフトンから隠しきれない孤独のような感情を感じ取っていた。自分を呼びつけながら罵倒から入る彼の心の内を理解する事は難しい。


「王女の私にメイドのように案内をしろと行ってるの?」

(王女?)


彼の言葉に今後、彼を女性扱いするべきだと理解した。


「クリフトン様しか、ここにいないので⋯⋯私が探検してローズパレスを探すのも楽しそうですけれど」


クリフトン様はふんっと鼻で笑うと、緑のアーチを奥の方に歩いて行った。鳥や虫の鳴き声だけが静かに響き渡る。

私とフェリクスは彼女の後を静かについていった。


緑のアーチを潜り終わると、手入れされた美しい真っ赤な薔薇が咲き誇る薔薇園に出た。その奥には少女趣味の可愛らしいクリーム色をした宮殿が見える。


「素敵な場所ですね。私、こういう静かで自然に溢れた所が大好きです」

「私のこと、実は大人しい王女なんじゃないかと思っているんでしょ。全く貴方は表面的にしか人を見ないのね。夫の愛にも気が付かず逃亡するだけあるわ?」


私はクリフトン様の言葉に驚いて、またフェリクスの顔を見る。

フェリクスも動揺しているのか、首がもげそうなくらい首を振っていた。

 

ローズパレスの中にある家具は、布製の椅子にはボタニカルな刺繍がしてあるものが多く少女っぽい内装だった。

 

私たちが部屋に入るなり三人のメイドが、無言で手際よくお茶の準備を始める。


私が促され席に着席すると、三段重ねのアフタヌーンティーセットが出てきた。目の前のティーカップに琥珀色のお茶を注がれると、クリフトンは手で合図してメイドを下げた。


「でっ! ビルゲッタ・ルスラム。ああ、離婚したから今はビルゲッタ・ロレーヌ? 貴方を助けて、私に何の得が?」


部屋に私とフェリクス、クリフトン様の三人きりになるなり、身を乗り出すようにクリフトン様が私に質問してくる。

(私の正体に気がついている? 何で?)


少しでも面白いと思っていただけたら、ブックマーク、評価、感想、レビューを頂けると嬉しいです。貴重なお時間を頂き、お読みいただいたことに感謝申し上げます。

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