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妻、猫になり逃走中! 至急確保し溺愛せよ!  作者: 専業プウタ@コミカライズ準備中


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16.まさかの妊娠

「くしゅん」


私はくしゃみをし、手で口を塞ぐことができずに飛沫が思いっきり向き合っていたフェリクスの顔にかかってしまった。


「わっ、フェリクスごめんなさい」

「いや、凄い返事の仕方だな⋯⋯」

私はレースのハンカチを取り出し、フェリクスの頬を懸命に拭いた。


気が付くと泉から噴水が噴き出している。


「素敵ね。こういうタイプの噴水はルスラム帝国では見られないわ。キルステンにも見せてあげたい」

思わず出た私の本音にフェリクスは苦笑した。


「さっきは、本当にごめなさい」

 

「謝らないで、ビルゲッタ。俺が欲しい言葉は謝罪の言葉じゃない。俺はお前から愛していると囁かれたいんだ。ビルゲッタ、よく聞いて。呪いを解く方法は今のところない事がわかったんだ」


私は足元から色々なものが崩れていくのを感じた。フェリクスは呪いを解けない可能性を考え、この場所に本当の夫婦として移住しようと考えていたのだ。頭の中がいつまで経ってもキルステンでいっぱいの私と違い、彼は極めて現実を見据えている。


 

「フェリクス、私は大丈夫。もし、呪いが解けないことが分かったら、貴方は一人でルスラム帝国に戻って」

私の言葉に、あからさまに傷ついたような顔をして彼はため息を吐いた。


「ビルゲッタ、俺が今プロポーズしようとしていたのを分かっているよね。どうして、そんな残酷なことが言えるの?」

「ごめんなさい。フェリクス! 貴方を傷つけるようなつもりはなかったの」


いくら恋愛にとても疎い私でも、最近のフェリクスの私への好意は感じ取れていた。


「じゃあ、お詫びに俺に口付けしてくれる? それが出来たら許してあげる」

フェリクスが笑いながら冗談めかしてした提案は流す事もできたが、私は彼が自分の為にした今までの犠牲を思うとできなかった。


「目を瞑ってくれる?」

私が思いの外応えてたのが嬉しかったのか、フェリクスが緊張したように目をそっと瞑る。

私は彼の長いまつ毛を見つめながら、そっと頬に口付けた。


「えっ? ほっぺなの?」

フェリクスが驚いて目を開ける。


私は居た堪れないくらい恥ずかしくなり、顔を真っ赤になっているのが分かった。

すると、彼は突然私の唇の端に口付けをしてきた。


私は衝撃のあまり目を丸くして固まった。

フェリクスの口説きモードは結構ガンガン来る。

私はずっと兄のように見てきた彼の突然のキャラ変についていけない。


「ビルゲッタが俺を男としてみられないならば、次は唇にするよ」

「うっ」

私はまた吐き気が襲ってきて、口元に手を当てる。


「流石にその反応は傷つく」

「違うの。最近、なんか吐き気が止まらなくて。眩暈もするし、精神的にも不安定で突然涙が出たりするのよ。風邪とかとは違うのよ。胃がムカムカするというか⋯⋯」


「ビルゲッタ、お前妊娠してないか? いや、でもいつ? もしかして、あの夜?」

フェリクスの声が震えている。


彼が庭で一晩中、キルステンの部屋を見上げていた夜。

妊娠についての知識はある。時期的にもぴったりだ。

(私のお腹にキルステンの子が?)


私は静かに頷いた。


「嘘だろ?」


フェリクスが涙声だ。

私はキルステンの子がお腹にいることを喜びたかった。

それでも言いようのない不安が襲ってくる。


「呪いを受けた私の子はどうなるの? 無事、産まれてくる?」

私は自分の声も震えているのが分かった。

産まないという選択肢は考えられない。愛する人との大切な子。まだ、豆粒くらいの大きさだろうけれど、私は既にこの子を愛している。


「大丈夫。何があっても俺が大丈夫なようにするから」

私の不安な気持ちを察したのか、フェリクスが務めて冷静に振る舞っているのが分かる。


「もう、迷惑は掛けられないよ。皇族の子を隠していた事が露見したらフェリクスもタダじゃ済まない。もう、貴方はルスラム帝国に帰って」

私の言葉にフェリスくは怒ったような顔をしたかと思うと、私をそっと優しく抱きしめてきた。


「俺は皇太子妃を攫ってきたんだぞ。お前の呪いが解けて戻っても、良くて身分剥奪国外追放。普通に考えれば断頭台行きだ」

「そんなこと、私が絶対させない!」

思わず出た自分の無責任な発言にゾッとする。


今の私はキルステンと離婚し皇族でもなんでもない。

ただの家出した我儘侯爵令嬢だ。


「ごめん、フェリクス。本当にごめん」

私は自分が猫になったことで、気が動転し視野が狭くなっていた。

キルステンの寵愛に溺れたのも束の間。

一生このまま昼間は猫になる事に恐怖した。


助けて欲しいと手を伸ばしたら、フェリクスがその手を引いてくれた。

私を連れ去る事で彼が負うリスク、犠牲を考えて自分で何とかするべきだった。


「ごめんじゃなくて、ありがとうだろ。良いの! 俺が好きな女を何とか助けたかっただけだから」

フェリクスがダイヤモンドの指輪を握り締めていた手をポケットに入れるのが分かった。


少しでも面白いと思っていただけたら、ブックマーク、評価、感想、レビューを頂けると嬉しいです。貴重なお時間を頂き、お読みいただいたことに感謝申し上げます。

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