表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/12

第六話 南の都ズヒェル

 翌朝、アカシアと朝食を共にしたレイシはウェルベライトと一緒にズヒェルに向かう。先にハッカと合流して対策を考えているフノボリたちの進捗を確認するためだ。

 馬車に乗っている間、レイシは楽しそうに窓の外を眺めていた。聞けば東の都オスティアから出たことがないという。


「じゃあ今は初めての遠出なんだな」

「はい! ズヒェル楽しみです!」


 嬉しそうににこにこする姿は子どもらしい。そんなレイシを微笑ましく思いながらウェルベライトは窓の外に視線を投げかけた。オスティアの都会的な街並みを抜けて、都を分ける大きな水路をよぎる。しばらく走って遠くに田畑が現れた。一旦ウェルベライトたちは軍の南部支部に馬車で向かう。ハッカの家は支部からそう離れていないのだ。

 支部に着いて、支部にいる軍人に話を聞くとすでにフノボリはハッカの家に行ったらしい。自分たちも赴こうとウェルベライトもレイシを連れてハッカの家に進路を変える。

 レイシはご機嫌な足取りで田園を眺めながら少し前を歩く。彼女が転ばないように気を付けながらウェルベライトも周りの様子を見た。遠目ではあまり被害の痕跡は見えない。オスティアと同じように半分近くを森に囲まれている都市なので、恐らく森側の方の畑が被害が酷いのだろう。

 もともと、そんなに害獣被害は多い方ではなかった。というのもズヒェルは他の都に比べ、獣人の割合が多い。その獣人の匂いが残る場にあまり近寄らない、というのがおそらくの理由だろうと考えられてる。ただその分、それを気にしない力の強い害獣がやってくるので、いやな意味での量より質の被害があるのだ。

 農家の住民を慮っていると「あらまあ」と近くで声が上がった。そちらをみると農作業中の麦わら帽子の老婆がウェルベライトたちを見ていた。


「騎士さんがこっちにくるなんてめずらしいねぇ。何かあったのですかい」

「お疲れ様です。先日害獣被害の相談を受けまして、それの対応に」


 ウェルベライトが理由を告げるとまた老婆は「あらあらあら」と声を上げる。


「それはそれは、ご足労いただきありがとうございます。なんとかなりますかねえ」

「先にこちらに来ている関係者の者と合流して進捗や対策内容を確認しますので、それによりけりですね。確実に結果は出したいところですが……」

「そうですかあ。よろしくお願いしますねえ。ところで、そのうさぎさんは……」


 老婆がレイシを追求しようとしたところでウェルベライトは、レイシの説明はどうするか、と焦る。騎士団や王族の関係者とは見えないだろうし、うさぎが害獣対策に参加するというのも変に見られるか? と迷っているとレイシに目線を合わせ屈んだ老婆に彼女は元気よくあいさつした。


「ぼく、害獣対策に参加してるお母さんのお迎えに来ました! 騎士さんにはそこまでの案内も兼ねてもらってます!」

「あらぁ、そうなんねえ。小さいのにえらいねえ」


 老婆は軍手を取ってレイシの頭を撫でる。それにレイシも嬉しそうに対応する。

レイシが相対する相手を王族しか見てなかったせいか気が付かなかったが、レイシは普通に人と話せる性格らしいと思い直す。

 人込みが苦手なのは身長差ゆえに囲まれるのが怖いから、ということだったしちゃんと考えればそうか、と認識を改める。が、しかし。最初に自分と会ったときは驚いて木の影に隠れてしまっていたが、あれは何故だろうか。

 ウェルベライトがひとりで不思議がっていると「ばあちゃーん」と男の声が聞こえてきた。


「あれ、騎士団のヒトだ。それに……うさぎ?」


 寄ってきたのは白い丸眉の模様に口元以外は黒い犬の獣人だった。ウェルベライトもそれなりに身長があるが横に並んだらきっと同じくらいだろう。こちらも麦わら帽子に軍手を着けている。


「おや、クロタ。どうしたんだい」

「あっちの畑の収穫全部終わって倉庫に持って行ったって言いに来たんだけど……」


 クロタと呼ばれた獣人は屈みこんでレイシの顔を覗き込む。じっと彼女の目を見つめて不思議そうに首を傾げた。


「きみ、移民だったりする?」

「生まれも育ちもオスティアです!」

「オスティア? 今何歳?」


 レイシも不思議そうに思いながら「六歳」と言うとクロタは考え込む様に俯いた。


「どうかしましたか」


 ウェルベライトが訊ねる。


「ああ、いや……。昔、よくしてくれたうさぎの獣人がいて、その人も白い毛並みに青い目だったから。年齢的にもその人たちの子どもかなぁって。その人たち、六年前に行方知れずって聞いてたけど、この子がいるならまだ生きてるんだろうな。青い目のうさぎなんてそういないし」


 そう言うとクロタは「引き留めてすんません。ばあちゃん、作業戻ろうぜ」と老婆にも声をかけた。老婆も二人に頭を下げて畑の中へと戻っていった。

 足元のレイシは俯いているように見えた。ウェルベライトはレイシを抱き上げ、視野を広げる様に顔を上げさせる。


「フノボリのところに行こう。きっと待ってる」

「……うん。あのね、ウェルベライトさん」

「ん?」

「ぼく、あんまり本当のお母さんとお父さんのこと関心がなかったんです。師匠は生まれてすぐに自分の元に来たからそれも仕方ないって言ってくれたけど、ぼく、何も感じないことが悲しくて。親不孝者だなって。でも、今。両親のことを覚えてくれてる人の話を聞いて、ぼくのお母さんとお父さんは生きてたんだなぁって、思いました。なんだか、ちょっと、胸が苦しくて」

「……そうか。きっと、レイシの無意識のところで本当のご両親に対する愛情があるんだろう。人は、産まれる前から親のことを知っているものだから」


 ウェルベライトのその言葉を聞き、レイシがきゅ、と騎士の服を握った。



 ハッカの家の前に来るとこれまた作業服を着た黒髪の青年が今、戸を叩こうとしていた。片手には野菜の乗った竹ザル。


「こんにちは、ハッカの家に何か御用ですか」


 ウェルベライトが声をかけると振り返った青年は二人を見て驚いた顔をする。


「え、と、その服って騎士、いや騎士さん? の制服? え、この家の人って偉い人なの?」

「一応王家専属の発明家ですが」


 そう告げると青年は天を仰いで「ばあちゃん先に言ってよぉ」と苦情を漏らした。


「改めて、何か彼に御用ですか」

「いや、大家のばあちゃんから畑でとれた野菜をハッカさんに持って行ってくれって言われて。初めての人だし、どんな人って聞いたら発明家の人としか。王族関係者だったらもっとましな格好してきたのに」

「ハッカはそういうのは頓着しませんよ。良くも悪くも大抵の人への態度に差は付けないので」

「そっすか……あ、ちなみに騎士さんと……その、うさぎの獣人? さんはなんでまた」


 騎士が子どもを抱き上げ、発明家のもとにやってくる図は確かにだいぶヘンテコだろう。ウェルベライトは先ほど農家の老婆に話したように事情を話すと、青年はレイシをまじまじと見て「大変っすね、騎士さんも」と同情を表した。

 とりあえず一緒に入るということになり、ウェルベライトが扉を叩く。中から「どーぞー」と男の声がして三人は揃って中に入った。入って目に映ったのはウェルベライトの背ほどある金網。まとめて壁際に置かれていた。そして金網の側で作業する人物ふたり。一人は天然パーマの長いプラチナブロンドを乱雑にひとまとめにした長身の白衣の人物。もう一人は赤髪の身長のある人物。ふたりの後ろ姿にウェルベライトは率先して呼びかけた。


「ハッカ、フノボリ。進捗の確認に来たぞ」


 天然パーマの人物が振り返る。その男性の目元にはクマがあり、顔つきはやつれてやや年老いて見えた。ただウェルベライトにとってはその顔は普段通りでたいして変わりなく、彼が実年齢の二十九より年を取っているように見えるのは依然と変わりないものだということを知っている。

 天然パーマの男性、ハッカはウェルベライトを視界に入れると大げさに笑って見せ「ウェルベライトか!」と抱擁をしようとしたが、ウェルベライトに手で制された。


「そういうわざとらしい愛想はいい。進みはどうなんだ」

「つまらんなぁ。必要なものは揃ってるし、あとは設置だけだよ。ただ電流の調整が上手くいかないから、フノボリに調整してもらってる」

「え? フノボリは発明にも精通してるのか」

「いや、これを使う」


 振り返ったフノボリの手には、こぶし大の大きさの淡く琥珀色に輝く鉱石があった。


「それは?」

「一定の魔力を石に固めたものだよ。魔力源として使えて、ちょっとした魔法が使える。と言っても魔力の操作だから別に魔法でも何でもないんだけどね」


 そういうと彼女は石を両手でパキンと半分にした。


「そんな簡単に割れるものなのか」

「いや、魔力を両端に動かして割っただけ。これ自体は相当固いよ」


 そうこう話しているとハッカとフノボリがやっと青年に気が付いた。


「そちらの青年は?」

「あ、ボク二つ隣の貸家に引っ越してきたトワって言います! 大家のばあちゃんからハッカさんに野菜届けてきてって言われて」

「ああ、あのばあさんか。ありがと、あとでお礼言いに行く」


 キッチンに置いといて、と指示するハッカ。トワは言われた通りキッチンに置きに行く。その姿をフノボリが妙な表情で見ていた。まるで喉に小骨が引っ掛かったような、違和感の表情。


「どうした、フノボリ」

「いや……」


 何か言いたそうにしていたが、フノボリはそれ以上言葉を続けることはしなかった。

 発電機に魔石を内蔵しようとしていたフノボリだが、少し困ったように発電機とにらめっこしている。そして「レイシ、ちょっといいかな」と呼んで何やらレイシの頭に触れていた。


「それじゃ、ボクの用は済んだんで帰りますね!」

「待った待ったトワくんや。来たついでだから手伝いも頼む」


 一方で逃げる様に去ろうとしたトワを手招きしながらハッカが呼び止める。トワは「えー」と文句言いたげな顔をしたが、それを無視してハッカがウェルベライトにも「お前にも手伝ってもらうからな」と続けたので諦めて溜息を吐いた。


「で、何をすればいいんです?」

「この金網の設置を手伝ってくれ。数が多いのと力仕事任せられるのがいなくてさぁ。ほら、僕学徒の人間だから」

「お前、研究職じゃなく発明家だろ」

「発明家だって学問に精通してるぞー?」

「とりあえず発電機に魔力源は内蔵したよ。実際に金網と合わせて動かすのは外にしよう」


 ウェルベライトとハッカの軽口のやり取りを遮って、両手で抱えられるほどの大きさのオレンジ色の発電機を掲げて見せた。

 金網をウェルベライトとトワに持たせ、発電機はハッカ、フノボリ、レイシの三人で一個ずつ持ち、五人揃って家を出る。先頭をハッカとトワが歩くのを後ろでついていくウェルベライトたち三人。ウェルベライトが先頭の二人に聞こえないくらいの小声でフノボリに訊ねた。


「トワがいたのに気が付かなかったといえ、ハッカにもトワにも魔法が使えること公言してよかったのか」

「ハッカはユリオプスたちと一緒に対策会議をした時に一応伝えてるよ。他言無用の約束でね。トワ……くんは、まあ仕方ない。気付かなかったこっちが悪いんだし。それに、多分だけど」

「うん?」

「トワくんは、他に言いふらさないと思う」


 真っ直ぐな目でフノボリは前を歩く青年を見ながら言った。


「そうなのか?」

「理由は言えないけどね」


 話していると、前方で目的の畑に着いたハッカたちがウェルベライトたちを呼んでいた。早歩きで向かう。

 電流の流れる金網を試験的に使うのは森に一番近い畑だ。ハッカから聞くにイモ類が植えられているらしい。その土を掘り返してイノシシなどが食べてしまう。これが上手くいけば、他の畑にも活用できるのだが。


「僕がフノボリの活用する石の力が尽きる前に、一般的な動物の対処のために電力調節を完璧にしないといけないんだよ。そこはまあ、時間があればなんとかなるわけだけど。今回はできるだけスピーディーな解決をって話だからな。完成するまではフノボリを頼る。大いに力を借りさせてもらうからな!」

「石も限りがあるから頼りすぎないでほしいなぁ。今回は魔石だけじゃなく、私の髪を発電機を繋げる電線に絡めたから何とか馴染んでるけど、数か月経てば焼き切れるだろうからハッカには頑張ってほしいね。それ以外の相談ならある程度は聞くよ」


 と、苦笑いで答えるフノボリ。

 トワとウェルベライトが金網の足を埋め込み、金網同士を繋ぎ合わせながら設置していく。大暑の時期、日差しが鋭く制服で作業するのはさすがに厳しい。上着を脱いで上半身シャツの姿になる。上着は汚れると困るのでハッカに渡した。そのハッカはフノボリに渡し、フノボリはレイシに渡した。

 すべての金網を設置し終え、今度はハッカが発電機を備え付ける。発電機の電源を入れて、すべての準備が完了した。


「よし、じゃあうさぎのきみ。金網に触れてもらえるか」

「え? あ、はーい?」


 何も臆することなくレイシは金網に触れた。瞬間バチッと音がして、レイシがふらりと後ろに倒れた。


「レイシ!」


 大慌てでフノボリやウェルベライトが駆け寄る。抱き上げられるレイシは目を開けたまま痙攣している。フノボリはレイシの目を閉じさせ、頭に手を当てた。数秒もすればレイシの痙攣は収まり、短い呼吸を始めた。


「レイシ、深呼吸だよ。ゆっくり、吸って……吐いて……」


 レイシに呼びかけ、フノボリも併せて呼吸する。うさぎの彼女は落ち着いたのかくったりとフノボリの腕の中で横になった。

魔女はハッカに低い声で言った。


「……ハッカ、怒るよ?」

「同じ動物の生態なら、効果を試す対象として獣人の方がいいだろ?」

「うちの子は小さいし、まだ六歳なんだ。危ないだろ」

「人間年齢に換算したらだいぶ年だろう?」

「それでもまだ子供だよ」

「そんなに威力が大きいのか?」


 ウェルベライトが聞くと、フノボリは「いや、一応そんなに強くはない」と答えた。


「触れて一瞬痛いと感じるほどに私が触って調整したけど、動物は人間ほど体が大きくないからね、特に今回の被害を生んでる動物に関しては。熊とかになると、さすがに電気程度で退散するかというと微妙だけど」

「え、それは……彼女、大丈夫なんですか」


 トワが心配そうにする。フノボリは「多分ね、涼しいところでいったん休ませよう」と平静を装っていた。

 レイシがフノボリの腕の中にいる間に、フノボリが騎士の上着を拾いウェルベライトに渡す。さすがにまだ体が熱を持っているし、汗もかいているから着ることはせず腕にかけるだけに留めた。



 設置を終えトワとハッカの二人と別れて、フノボリと一緒にオスティアに帰る準備をする。軍の南部支部に行き、レイシを風通しのいい場所で横にしている間にフノボリが泊まりの荷物を持ってきた。三十分ほど後になり、だいぶ回復したらしいレイシと一緒の馬車に乗る。フノボリとレイシの二人と向かい合うように座り、レイシは窓から流れる外の景色を眺めていた。魔女はそれを見守っていた。


「そういえば師匠。なんで自分の髪を電線に絡めたの?」


 レイシのふとした疑問。フノボリはなんてことないように答えた。


「私が作った魔石と発電機の嚙み合わせが悪くてね。電気、というのがあまり魔力と噛み合わせが良くなかったのかもしれない。今回の魔石自体の魔力が電気と繋がりが浅いみたいでね、直接繋げるだけだと駄目だったんだけど直前まで魔力を持った私と繋がっていて、魔力を水のエネルギーに変えた私の髪を魔石に繋げて組み合わせれば上手いこと発電機と動くようで。それで自分の髪の毛を絡めたんだ」

「へー、自分から離れても魔石に繋がっていれば魔力は通うんだ」

「そうだね。魔力を持った人間や魔石みたいな魔力源に繋がってなくても暫くは魔力を保ったまま他のものに使うことができる。魔力を持つ獣人とかは、自分の抜け毛をブレスレットに他の糸と混ぜ込んでお守りに使ったりもするよ」

「なるほど……」


 レイシとの会話が途切れると、フノボリはうとうとと舟をこぎ始めついには眠ってしまった。

一度見ただけじゃ飽きないのだろう。外を見るレイシの髭は楽しそうに上下に動く。

 その様子を見ていて、なんとなく告げておきたい気がした。


「レイシ」

「なあに、ウェルベライトさん」

「君は……人と獣人が一緒に暮らすことをどう思う?」


 丸い青い目がぱちぱちと瞬きをする。


「うーん……ぼくはこのままみんな仲良く過ごせればいいなぁって思います。随分昔のコウエニンティア王国は獣人と人が仲良く暮らしてたんですよね? 多分その時もお互いないものを補って生きてきてたはずだと思うんです」

「そう、だな」

「それに師匠に勉強を見てもらってた時に知ったんですけど、獣人が生まれた起源は魔法を使う動物と人間がまぐわったから、獣人が生まれたそうなんです」

「ああ、それは俺も知ってる。小さいころに勉強した」

「だから、人と獣人も仲良く過ごせるはずとは思います。国王様も王女様も獣人と仲良くしてくれるから、それを見た国民の人たちも獣人と仲良くできるんじゃないかなって。ズヒェルの一緒に仕事をする人たちみたいに」


 笑顔を見せていうレイシ。戦災孤児の彼女がそう言えるのはフノボリの教育の賜物だろう。そうあってほしいとは思わないが、普通ならもっと世を捻くれた解釈で見てもおかしくはないのだ。


「……俺と、レイシも」

「うん」


 言葉を、慎重に選ぶ。


「もっと近い存在になりえると思うか」

「もっと近い存在?」

「例えば、恋仲とか」

「……え、え!?」

「……すまない、こんな風に言うつもりはなかったんだが、つい口をついてしまった」

「そ、その、ウェルベライトさんは、ぼくの……恋人に、なってくれる、の?」

「なれたらいいなとは、思う」

「……ぼ、ぼくはなりたい、です……! ウェルベライトさんのこと、好き、だから」

「そう……か。ありがとう。……だめだ、にやけてしまうな」

「ウェルベライトさん、照れてる?」

「まあ、その、俺も男だから。好きな子が自分の恋人になったっていうのは、嬉しいし、照れるだろ」

「話まとまった?」


 目をパッチリ開けてウェルベライトを見るフノボリに、騎士はギョッとした。レイシも慌てて声を上げる。


「師匠!?」

「起きてたのか」

「寝たふりしたら油断して口を滑らせてくれないかなと思って。切り出すの下手すぎないか?」

「言わないでくれ」


 ウェルベライトは頬杖を突き顔を外に逸らす。両頬に手を当て恥ずかしがっているレイシの頭を撫で、「よかったね」と優しく宥めるフノボリの姿は、子を思う母のようであり、妹をかわいがる姉のようであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ