トライアングルレッスン:B ~Happy birthday to me!~
小説家になろうラジオ 「トライアングルレッスン」への投稿作品です
基本ユイコがヒロシかタクミ、もしくは両方から思われる設定を望まれる企画ですが
今回、敢えての逆張りです
「ユイコ、来週の水曜の午後って予定ある?買い物に付き合って欲しいんだけど。」
そんなヒロシからのメッセージが届いた。
「いいよ。珍しいね、買い物のお誘いなんて。行き先決まってるの?」
二つ返事で返信をすると
「うん、まあね。」
と、ちょっと歯切れの悪い返しが来た。
当日、お気に入りのワンピを着て待ち合わせ場所に行くとヒロシはもう来ていた。
「悪いね、付き合わせちゃって。でも、女の子の好みって分かんなくってさ。」
そう言ってヒロシと向かった先はジュエリーショップだった。
(待って?私の誕生日、明後日じゃない?もしかしてジュエリー選ばせてくれちゃうの?)
私は有頂天。(指輪だったりして!)なんて。
「で、あのさ。この子にプレゼントしたいんだけど、何がいいかな?
もうすぐ誕生日なんだけど、いきなり指輪とか、引かれるかな?」
ちょっと照れたようにそう言うと、ヒロシはスマホの写真を私に見せた。
ピクッ。盛り上がっていた気持ちが引いて、身体が凍り付いた。
スマホの中で笑うその人は、清楚系の美人でヒロシの好みそうな女性だった。
そっか、どうりでお洒落してきたのに触れられないはずだよね。
私は必死に笑顔を取り繕う。
「そうだな~。指輪じゃない方がいいかも。この人ならねぇ…。」
真剣に選んじゃう私、バカみたい。
ずっと自分を見ててくれると思っていたわけじゃない。
だけど、まるで失恋したかのような痛みが抜けない。
そんな痛みを引きずっていた金曜日、タクミからの電話が鳴った。
「ユイコか?今家か?今日お前の誕生日だろ?祝ってやるから出てこいよ。」
もう既にアルコールが入っているんだろう、タクミはご機嫌だった。
「行く行く。何処の店?」
「お待たせっ」
元気よく店に入る。
「お、主役登場だ。」
はしゃぐタクミを見つけると、隣にぴったり寄り添うように女の子。
目がきゅるんと大きくて、向日葵みたいに華やかな子。
「ビックリした?紹介するわ、オレの彼女。こっちはユイコ。
妹みたいに可愛いやつなんだよ~。」
(妹か)私の奥で心が砕けた音がした。
引きつりそうになるのを必死にこらえて
「タクミでも、彼女出来るんだね~。」
なんて、冗談を飛ばす。
「失礼だな。それから、こっちは後輩の亮平。」
知的で優しそうな笑顔の人が照れたようにペコッと頭を下げた。
乾杯して飲んで騒いで夜は更けていく。
歯を食いしばって痛みを逃した。でも、限界。
「私、明日も予定あるからそろそろ帰るね。」
意地をかき集めて笑顔で告げる。
でも、扉が閉まるのと同時に私は顔を覆ったのだった。