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異世界での俺の物語  作者: モンモン
第1章 異世界召喚編
9/14

第9話 始まり

ダンジョンから帰還した直後、魔力感知で異変を感じた2人は、急いで再度ダンジョンに入りクラスメイトの元へ向かって行った。


その先には、今にも魔物に襲われそうになっていた優奈がいた。



「助けて…」


「任せろ!」




ズパンッ!!!



目にも留まらぬ速さで放たれた天夜の一閃に、魔物は抵抗する間もなく倒れ伏した。





「…天くん?」

「おう。」

「天夜…なの?」

「あぁ、俺だよ。」

「天夜…。」

「みんな……ただいま!」



そう言うと、5人は一斉に天夜に駆け寄り、その胸に飛び込んできた。



「天くん! 天くん!」

「無事だったのか!」

「ずっと心配してたんだぞ!」

「ははっ、やっぱ生きてたね。」

「天夜君…うぅ…。」

「あはは、久しぶりだなぁ。」

「…天くん、また助けられちゃったね。」


優奈は涙目になりながらも、ぽつりと呟く。


「ん?」

「……あの日、助けてくれて。2ヶ月前も、自分を犠牲に私たちを助けてくれて。

今度こそ私たちがって思ってたのに、また今日も助けてくれた…。私、ずっと天くんに助けられてばかりだね…って思って……。」

「そんな事ねぇよ。」

「…でも」

「あの時、…両親がいなくなってずっと落ち込んでいた俺を、救ってくれたのはお前らだった。

ずっと側にいてくれたお前らは、俺の心の拠り所なんだ。」


5人は言葉を失い、黙って天夜を見つめている。


「だからな、そんなお前らを助けるなんてことは当たり前だ。お前らとずっと生きていくために、笑い合うために、俺はみんなと一緒にいるんだ。

お前らが俺に助けられてると思っていても、俺はずっとお前らに支えられているんだ。」

「天夜…。」

「…まぁ、ちょっと恥ずかしいこと言ったけどさ。

これからも、ずっと俺と一緒にいてくれるか?」

「「「「「…うん(おう)!!」」」」」




その後、彼らはこれからのことを話すため、ダンジョンの出口へと向かった。




「天夜…久しぶりだな。」


ダンジョンを出たところで、ガイルが俺に懐かしむような目で話しかける。


「あ、ガイルさん。あの時はありがとうございました。」

「…よせ、俺はお前を助けられなかったんだ。」

「それでも、あいつらを助けてくれてありがとうございます。」

「そうか、…済まなかったな。そして、よく戻ってきた。これからはどうするつもりだ?」

「そうですね、取り敢えずギル爺と話し合わないと。」

「ギル爺?」

「下層に落ちた時に助けてくれた人です。あ、ギル爺!」



天夜とガイルが話していると、こちらに向かってギルバードが歩いてくる。



「無事だったかの、天夜。」

「おう!」

「ギル爺って…まさか、あのギルバード!?」

「「「「「ええええぇぇぇぇ!?」」」」」


天夜以外の全員が、驚きの声を出す。


「え、みんな知ってんのか?」

「知ってるも何も、人類最強って言われてる人だよ!? "銀老のギルバード"っていえば、誰もが知るS級冒険者って教わるのに、…天くん知らないの!?」


優奈が驚いた声で、俺に問いかける。


「ほぇー、どうりで強かったわけだ。」

「いや、そんな反応なのか…。」

「ホッホ、天夜には言ってなかったからのう。」

「ってギルバードさんもあのダンジョンにいたんですか!? ってことはその前にここにいるってことは、ダンジョンをクリアしたのか!?」

「62階層まで落ちた時に助けて貰って、そこから修行しながら攻略して戻ってきたんです。」

「……これをクリアしてきたのか…。流石、人類最強だなぁ。」

「いや、ほとんど天夜がいたおかげじゃよ。ここまで早く帰って来れたのも、天夜のスキルがあったからじゃ。」

「確かに、天夜がとんでもなく強くなってる…。

これではもう、俺が教えることはないな。ギルバードさん、これからどうするか決めてますか?」

「そうじゃのう。取り敢えずここから離れてエルカトーレ王国へ向かおうと思うが良いかの?」

「もちろんです。こいつらにとっても、その方が良いでしょう。王には俺の方から伝えておきます。」

「すまんの。」

「いえ、元はといえば俺たちが原因ですから。」

「そっちの子らもそれで良いかの?」


ギルバードが、優奈たち5人に問いかける。


「はい! もう天くんと離れたくありませんし!」

「そうだな、ここに思い入れもあまりないしな。」

「ホッホ、良い友達を持ったのう天夜。」

「あぁ、最高の友達だ!」




その時、魔物の一撃で気絶していたはずの薫が、ふらつきながらも目を覚まし、天夜たちの前に立ち塞がる。




「待て! 何故3人ともそいつについていくんだ!? それに、僕達には使命があっただろう! それを忘れたのか!?」


薫の叫びに、葵が一歩前に出る。


「そんなの、知りません。勝手に召喚されて、使命って言われても私たちには関係ありません。

それに、ようやく天夜くんと再会したんです。邪魔しないでください!」


睨みながら言う葵に続き、凛も言い返す。


「そうだな。そして私の幼馴染を侮辱するような奴には、絶対についていかない。

ずっと言っているだろう、お前には興味がないんだ。分かったら、もう付き纏うな。」

「な、何でだ!? 何故僕よりそいつを選ぶんだ!? そんな奴より、僕の方が絶対に優れているんだ!

僕は勇者なんだぞ!? 勇者より優れているやつなんか、いる訳ないだろう!」


歪んだ叫びに対し、天夜はゆっくりと告げる。


「なら、試すか?」

「っ!? 急に何を?」

「そろそろ鬱陶しいと思ってたんだ。ずっと難癖付けられる、こっちの身にもなれ。だからここでどっちが強いか、はっきりさせよう。」

「はははっ! 急に何を言い出すかと思えば、そんなことか! いいだろう、ここで僕の方が優れていると証明させよう!」

「よし、なら早速やるか。」



そうして2人は距離を取り、戦いの準備をする。



「天夜! ボコボコにしちゃえ!」

「天くん、頑張ってー!」

「おう! 任せろ!」

「天夜。」

「あ、ギル爺ちょっと待っててくれ。すぐ終わるから。」

「一撃で終わらせてはならん。まずは、足を潰すのじゃ。その次に腕、身体とどんどん追い詰めてから、最後に脳天にかかと落とし。きっちり分からせてやるんじゃ。」

「いや、そこまでやらないよ!?」

「む、そうなのか。」




薫は、剣を構える。その表情には焦燥と怒気が入り混じっていた。

一方で、天夜は剣を抜かず、素手で静かに拳を握った。




「何のマネだい? 早く剣を構えなよ。」

「いや、お前如きに剣はもったいないからな。」

「チッ、…どこまでも舐めやがって! ここで勝って、3人を貰うのはこの僕だ!」

「俺が勝ったら、もう関わってくんなよ。」

「うるさい! 死ね!」



薫が叫び、渾身の力で剣を振り下ろす。


だが、天夜はその一撃を軽やかに避ける。


「なっ!?」


驚いた表情を浮かべたが、すぐさま次の攻撃を放つ。

それも、空を切る。


その後、何度も斬りかかるが、天夜の身体にはかすりもしない。

全ての攻撃を、無駄のない洗練された動きで避け続けた。




「何故、当たらない!?」


薫が焦りの声を上げる。


「俺がこの2ヶ月、何もしてなかったと思うか?」

「うるさい! 僕は勇者だぞ! こんなことが、あってはならない!」

「…現実を見ろよ。お前の剣は俺に一度も届いていないし、あの3人は、お前には振り向かない。」

「うるさい、黙れぇぇぇ!!!!」



薫が、さらに怒りと魔力を込めて斬りかかる。


だが、天夜はそれを親指と人差し指だけで止めた。



「っ!?」

「まずは、1発!」



天夜の少し力を込めた拳が、薫の腹に突き刺さる。


鋭い音とともに、薫の身体が弾かれるように吹っ飛び、地面を転がる。

苦しげに胃の内容物を吐き出しながら、彼は身をよじった。



「グハァッ!?」

「…ふぅ。」


静かに息を吐いた天夜は、ゆっくりと歩き出す。



「ひっ!? く、くるなぁぁぁぁぁ!!」


地面に這いつくばりながら、薫は恐怖に顔を歪め、必死に後退ろうとする。



「や、やめろぉぉぉ!! 僕に近づくなぁぁ!!」


天夜は何も言わず、薫の目の前に立つ。

そして、拳を高く振り上げた。




「ひっ!? …あぁ……。」

「…終わりか。」



拳が下ろされる直前、薫は失禁し、白目を剥いてそのまま気絶した。




「…よし、すっきりしたし、行こうか!」



天夜はそう言い幼馴染たちの元へ歩いていく。

5人は、呆気に取られながらも、少しだけ誇らしげに笑っていた。




そこへ、ガイルが話しかけてきた。


「もういいのか?」

「えぇ、もう充分です。」


天夜が短く答えると、満足げに頷いた。


「そうか、こっちは俺がどうにかしとく。お前たちは気にせず、そのまま行け。」

「ありがとうございます。ガイルさん、…お世話になりました。」

「おう…。俺はお前が、…お前らがこれから何を成すのか、楽しみにしているぞ。」

「ガイルさん、本当にお世話になりました。…あなたのおかげで、天くんともこうやって再開できました。」

「あなたが居なかったら、ここまで強くなれませんでした。本当に、ありがとうございました。」

「……あぁ、またな。」



そう言ってガイルは俺たちから離れ、薫を回収しに行った。





「…ここから、だな。」


静かに呟いた天夜に、5人が頷く。


「そうだな。…こっちに来てから3ヶ月か。」


涼が思い出すように、呟く。


「天夜くん、もう私たちの側からいなくなっちゃダメですよ?」

「そうだ、しっかり監視しないとな。」


葵と凛が、俺に釘を刺すように言う。


「ははっ、もうどこにも行かないって。」

「…ここから、僕たちの冒険が始まるんだね。」


一樹が言った言葉に、6人が不安と期待、そして覚悟を決めた顔をする。


「この先、何があってもこの6人はずっと一緒、こっちに来た日に天くんが言った言葉だよね?」

「あぁ、…この先何が起こるかなんて誰にも分からない。それでも、お前らとならどんなことだって乗り越えられる。お前らと生きていく為に、俺は強くなって戻ってきた。」

「…私たちももう、守られるだけじゃない。天夜程とはいかないが、少しは強くなった。…だから天夜も、無理はしないでくれ。」

「あぁ、頼りにしてるよ。」



語り合う6人の元へ、ギルバードがゆっくりと近づいてきた。


「天夜。」

「ギル爺、お待たせ。いつでも行けるよ。」

「そうか。なら、早速行くとするかの。」

「おう!」





そうして


天夜・涼・一樹・優奈・凛・葵の幼馴染6人の


新たな冒険が始まった。







第1章 異世界召喚編 完

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