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異世界での俺の物語  作者: モンモン
第1章 異世界召喚編
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第2話 召喚

「──ドミナ帝国の王として、どうかお力をお貸しいただきたい」


その言葉と共に、玉座に座っていた老人──王と名乗った男が、唐突に頭を下げた。


異世界に突然召喚されたという動揺も冷めない中、教室の床が光に包まれた次の瞬間、俺たちはこの巨大な謁見の間に立たされていた。


「ふざけんなよ!!」

「何これ!? 意味わかんないんだけど!」

「早く帰しなさいよ!」


クラス中が騒然となる。大半の生徒は、困惑と怒りを隠しきれないようだった。




そんな中、俺と一樹はというと


「一樹、あの人てっぺんハゲてたぞ。」

「だね。そういえば校長先生もハゲてたし、人の上に立つ人ってハゲてる人が多いよね。」

「きっと、人の上に立っても調子乗らせないように、神様がハゲさしたんだろう。」


異世界召喚の最中とは思えない、あまりに脱力した会話だった。


当然ながら──


「おい、今はそれどころではないだろう。」

「そうですよ、もう少し緊張感を持ってください。」

「何でこいつらはこんな会話できるんだ…。」



と、凛と葵に怒られ涼には呆れられてしまった。






「まずは、いきなり君たちをここへ連れてきたことを謝罪する。君たちもいきなりのことで何が何だか分からんだろう。だから、我々に説明させてくれ。」



そして王は、自らの口で俺たちに語り始めた。

どうやら、ここはアースハイドという世界で、人間──人族以外にも多種多様な種族が存在するらしい。


獣人族、エルフ族、ドワーフ族、魔人族、魚人族、天使、悪魔、精霊、幻獣種……聞いたことのない名前がいくつも飛び出してきた。

基本的に1つの種族に1つの国が割り当てられているようだが、人族だけは例外らしく、数が多いため複数の国に分かれているとのこと。


ここドミナ帝国は、その人族の国家の中でも最大規模を誇る帝国……つまり、アースハイドの中でも屈指の大国ということらしい。



さらに王は続けた。


この世界には、魔物と呼ばれる存在も棲んでおり、日常的に人々を脅かしている。そして、それに対抗するために人々は"スキル"と呼ばれる力を用いて戦う。

中でも特別なのが、魔法系スキル。これを習得することで、誰でも魔法を使えるようになるのだという。


スキルには段階があり──

通常のスキル、上位互換のレアスキル、そして最上位である皇帝(エンペラー)スキルという順で進化していく。

最初からレアスキルを持っている者もごく稀にいるらしいが、皇帝(エンペラー)スキルは例外なく"進化"によってしか得られない。



また、それとは別に──


「世界でたった一人しか持ちえない"ユニークスキル"というものも存在する」と、王は言った。

このスキルは他者が得ることはなく、唯一無二の存在として扱われる。そして、それすら進化すれば"皇帝(エンペラー)スキル"へと至ることもあるのだそうだ。


さらには種族に特有の"固有スキル"なるものもあり、これはその種族全体が生まれながらにして持っているらしい。たとえば、獣人の"獣化"などがそれに当たる。


そして、話はついに核心へ──



「君たちを召喚した理由。それは……この世界に存在する"魔王"を討つためだ」


魔王。それはアースハイドの頂点に君臨する、最強の存在。しかも、一体や二体ではない。

現在確認されているだけでも──七体。


他の国々は、魔王との戦いを避け、種族の存続を優先する姿勢をとっている。

だが、ドミナ帝国は違った。


「我が国は、人族至上主義だ。他種族に頭を下げてまで、平穏を得ようなどという考えはない。故に、魔王の存在を許容することができないのだ」


王の口調には、理想と傲慢が入り混じっていた。


そして、最後にとんでもない一言が放たれる。



「異世界から召喚する方法は知っているのだが、帰還させる方法は分かっていないのだ。だが必ず、その方法は我々が見つけ出すと約束しよう。無茶な要求だとは分かっているがどうか、我々のために力を貸してはもらえないだろうか?」


勝手に呼び出しておいて、帰る方法は分からない?


冗談じゃない。あまりにも一方的すぎる。

当然、全員が文句を言うと思っていたのだが──



「なあ、みんな聞いてくれ。」


騒ぎが収まらない中、教室の中心に立ったのは、クラスの委員長──薫だった。

彼はいつものように冷静な口調で、けれどどこか熱を帯びた声で言葉を続けた。



「僕はこの人たちに、この国に力を貸してあげたいと思っている。困ってる人たちを放ってはおけないんだ。でも、僕だけじゃ無理なことは分かっている。

それに帰還する方法も探してくれると言っている。だったら信じてみてもいいんじゃないかな。だからみんなも、僕と一緒この世界を救わないか?」


その言葉に、一瞬の沈黙が落ちる。


──が、次の瞬間。


「お前にそこまで言われたらやるしかないか!」

「キャー! 薫くんステキー!」

「薫くんがやるって言ってるんだから、私たちもやろうよ!」


誰かが言ったその一言を皮切りに、教室は謎の団結ムードに包まれた。


(……え、ちょっと待て、なんでそうなる?)


内心ツッコミを入れた俺だったが、すでに場の空気は完全にやる気満々の方向へと動いていた。


薫は再び王の前に立ち、堂々と言い切る。



「ありがとうみんな! そういうことです、王様。僕たちは魔王を倒すために戦います!」



「おお! やってくれるか! 感謝するぞ! ところで貴殿の名は何と言ったか?」

「天上院 薫です。」

「ほう、天上院という名前なのか?」

「いえ、薫が名前です。」

「なるほど、そうなのか。こちらの世界では、貴族以上の者は全員がファミリーネームを持ち、名前が前に来る。

そなたらも、貴族と同等の扱いを受けることになる。ならば、それに倣った方がよかろう。」

「分かりました。」


薫は頷き、王の言葉を受け入れる。


「では早速、薫殿たちのステータスを確認しよう。おい、準備を急げ!」

「「ハッ!!」」


王の号令に、控えていた数人の騎士が一斉に動き出した。

ほどなくして、彼らはどこかの部屋から大きな装置のようなものを運び込んでくる。

魔法の紋様が刻まれ、魔石が埋め込まれたその装置は、いかにも異世界の代物といった雰囲気を放っていた。



「すみません、"ステータス"とは何ですか?」


薫が尋ねると、王は頷いて答える。


「うむ、まだ説明してなかったな。ステータスというのはその者の持っている名前や種族、スキル等その者の持つ情報を表示するものだ。今からこの場でそなたらのステータスを確認してもらう。」

「なるほど、ではこれは何ですか?」


薫は騎士たちが持ってきた大きな装置を指差す。


「これは"鑑定の魔道具"という。手に触れた者のステータスを映し出すことができるのだ。

さらに、どれだけ魔道具が光ったかでその者の魔力量も分かるようになっておる。」

「魔力?」

「魔力とは魔法の元となる力のことだ。こちらの世界の生物は皆魔力を少なからず持っておる。魔法やスキルの行使にはこの魔力が必要だ。

そして、スキルについても補足しよう。スキルは、最初から持っていなくとも後から獲得することができる。修行や経験で進化もする。──ただし、"ユニークスキル"だけは別だ。」


「先程も説明したがユニークスキルとは、この世界で唯一の存在に与えられる特別な力。誰もが後天的に手に入れられるものではない。

この国にも数えるほどしか存在しないが、異世界から来た者は、なぜかそのユニークスキルを持っていることが多い」

「過去にも、異世界人が来たことが?」

「うむ。過去に何度か異世界召喚が行われておる。そして、かの"勇者"と呼ばれた人物も異世界の出身であり、彼はユニークスキル"勇者"を持っていたと記録にある」


王の言葉に、クラス内がざわついた。



「それでは、準備が整ったためこれからそなたらのスキルを確認していく。まずはこの国の騎士のステータスから見ていただこう。」


王の言葉に頷き、ひとりの騎士が無言で前に進み出る。そして、静かに鑑定の魔道具に手を置いた。


装置がぼんやりと青く光り始め、次の瞬間──空中に淡く輝く文字列が浮かび上がる。



─────

名前:カイン

年齢:23

種族:人族

スキル:魔力感知・魔力視・気配感知・腕力強化・脚力強化・火魔法・剣術

レアスキル:魔纒

─────



「このようにステータスは映し出される。このステータスと魔力量は、訓練された兵士の平均くらいだ。さあ、では薫殿からやっていこう!」


王の言葉に、そっと騎士が手を差し伸べ、薫を装置の前へと誘導する。


薫は落ち着いた様子で装置に手を置いた。

すると、魔道具が先程とは比べ物にならないほど強く、眩しく光り始めた。


その場がどよめく中、薫のステータスが表示される。




─────

名前:天上院(てんじょういん) (かおる)

年齢:15

種族:人族

スキル:魔力操作・魔力感知・魔力付与・剣術・鑑定・アイテムボックス・詠唱破棄・魔法耐性・物理耐性・状態異常耐性

レアスキル:神聖魔法

ユニークスキル:勇者

─────




「おおっ! ユニークスキル"勇者"を持ってるぞ!」

「しかもこのスキルの数...!」

「魔力量も規格外だ! これは期待出来る!」


王の近くに控えていた重臣たちが、まるで宝でも見つけたかのようにざわめいた。

王も満足げに頷き、薫に目を向ける。


「やはり薫殿こそが勇者だったか。

そして最初からこのステータスとは…大いに期待できる。我々はそなたを最大限サポートしよう。これからは頼むぞ。」


王はそう言うと、今度はクラスメイトたちへと視線を向けた。


「さて、他の者たちのステータスも確認していこう」


そして、次々にクラスのみんなが魔道具に手をかざし、その能力を明らかにしていった。




─────

名前:獅子元 涼(ししもと りょう)

年齢:15

種族:人族

スキル:気配感知・格闘術・脚力強化・魔法耐性・物理耐性・状態異常耐性

レアスキル:怪力

ユニークスキル:拳聖

─────


─────

名前:蛇草 一樹(はぐさ いつき)

年齢:15

種族:人族

スキル:魔力操作・鑑定・アイテムボックス・魔法耐性・物理耐性・状態異常耐性

レアスキル:魔法の才・思念伝達

ユニークスキル:賢者

─────


─────

名前:小鳩 優奈(こばと ゆうな)

年齢:15

種族:人族

スキル:魔力操作・魔力視・光魔法・魔法耐性・物理耐性・状態異常耐性

レアスキル:治癒魔法

ユニークスキル:聖女

─────


─────

名前:御馬舎 凛(みやま りん)

年齢:15

種族:人族

スキル:魔力付与・剣術・短剣術・大剣術・刀術・魔法耐性・物理耐性・状態異常耐性

レアスキル:思考加速

ユニークスキル:剣聖

─────


─────

名前:孤梟 葵(こきょう あおい)

年齢:15

種族:人族

スキル:魔力操作・魔力感知・鑑定・アイテムボックス・魔法耐性・物理耐性・状態異常耐性

レアスキル:魔法の才

ユニークスキル:魔導師

─────




──そして、次は俺の番。


静かに、騎士の手招きに従いながら、俺は魔道具の前に立った。

手をかざした瞬間、眩い光が魔道具から溢れ出す。クラス全体が、一瞬で静まり返った。




─────

名前:竜美 天夜(たつみ てんや)

年齢:15

種族:人族

スキル:腕力強化・脚力強化

レアスキル:武芸の才

ユニークスキル:異空間・加速

─────




「ユニークスキルが…ふ、2つ!?」

「"武芸の才"まであるではないか!」

「魔力量も群を抜いている…間違いなくこの中で1番だ!」



騎士たちや王の側近たちが、驚きの声をあげて騒然となる。


魔道具は、薫のときよりもさらに激しく輝いていた。

俺自身、とても驚いたが……クラスメイトたちの目線が痛い。


特に男子たちの視線は、妬みと警戒心の入り混じったものだった。

そして中でも、薫の目だけは、まるで敵を見るような鋭さを帯びていた。



ちなみに魔力量は天夜>葵>一樹>薫>優奈>凛>涼>その他といった感じだ。



「まさか…勇者以外にここまでの逸材が多くいるとはな。」


王が静かに呟く。だがその目は、興奮と期待に満ちていた。


「この戦力が全て我が国の味方、これ以上に心強いことはない。

とはいえ、突然この世界に呼び出されて動揺している者も多かろう。今夜は各自、部屋でゆっくりと休んでくれ。

明日から訓練を開始するつもりだ。よろしく頼むぞ」



その言葉と同時に、王は近くの執事風の男に視線を送る。

すぐに執事は礼儀正しく頭を下げ、俺たちをそれぞれの部屋へと案内し始めた。


だが、寝るにはまだ早い時間なので俺たち6人は俺の部屋に集まることにした。




───────




「まさか…本当に異世界に来るとはな。」


涼がソファに深く腰を下ろしながら、ぼそりと呟く。


「漫画とかではよくあるけどさ。実際体験すると…なんか不思議な感覚になるな。」


俺も窓の外を見ながら答える。異世界の空は、どこか地球のものとは違って見えた。


「私たちは…本当に帰れるのだろうか?」


凛の言葉には、不安が滲んでいた。


「多分、無理だろうね。」


一樹がためらいもなく告げる。


「なっ!? …それはどうしてだ?」

「さっき王が過去に何回も異世界人を召喚してる記録があるって言ってたでしょ?ならその時から帰還させる方法は研究しているはず。

それなのに未だに見つかってない…つまり、もうそういうことなんじゃないかな。」

「それはつまり、あの王はそれを知っていながらも、私たちを召喚したということですよね?」


葵が静かに言葉を重ねる。


「そうだと思うよ、元々帰す気なんてないんじゃないかな?」


一樹の声は冷静だったが、その分、現実の冷たさが際立っていた。


「そんなっ!? ……ねえ天くん、私たち…どうなるのかな?」


優奈の声が震える。俯いた彼女が、そっと俺の方を見上げた。


俺は窓の外を見ながら答える。



「…そんなの知らない、この先何がどうなるのかなんて全く分からない。

でもさ…どこに行っても、俺たち6人は変わらない…。

それだけ、分かってればいいんじゃねえの?」


優奈は一瞬目を丸くしたあと、ふっと微笑んだ。


「…うん、そうだよね。きっとこの世界でも、この6人で生きていけるよね。」



その言葉に、誰もが少しだけ顔を和らげた。

目の前の不安は消えない。けれど、それでも一緒にいるという事実が、確かに心を支えていた。


そして俺たちは、短い静けさのあと、軽く言葉を交わしてそれぞれの部屋へと戻っていった。

こうして、異世界での最初の夜が、ゆっくりと幕を下ろした。







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