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影の記憶  作者: サニー
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第八章

数日後、梨香と健太は再び父の研究室に足を踏み入れた。記憶を少し取り戻した梨香にとって、その場所は忌まわしい記憶と共に、重要な手がかりが隠されている場所であることがわかった。蘇った記憶の断片が、彼女の心に重くのしかかる。


「梨香、大丈夫か?」健太が心配そうに声をかけた。


「うん、大丈夫。記憶が蘇ったことで、少し混乱してるだけ。でも、今はすべてを明らかにしなければならないわ。」梨香は静かに答えた。


彼女は蘇った記憶に従い、研究室の奥にある机に向かった。そして、二重底になった引き出しに隠されていた父のメモを見つけた。そこには、梨香の力に関する詳細な実験結果と考察が記されていた。彼女の能力が突然死を引き起こすものであること、そしてその力がどのように発現するかが詳述されていた。


「この部分を見て。」健太が指差した箇所には、梨香の力が脳内の特定の部位に働きかけることで、心臓を停止させることができるという事実と、そのメカニズムが記されていた。


「私が…人を殺してしまう力を持っているなんて…そして、それを父さんが利用していたなんて…」梨香は震える声で言った。


健太は梨香の肩に手を置き、優しく言った。「父さんは、その力を利用して自分の研究を進めていたけど、梨香の力を制御しようとはしなかった。だから、まだ幼かった君の脳は徐々に異常をきたし始めたんだ。」


梨香は深呼吸をして、冷静さを取り戻そうとした。「私の力をコントロールする方法があるなら、それを知りたいわ。もう誰かを傷つけたりしたくない。」


健太は頷いた。「父さんのメモによれば、訓練によって集中力を高めれば、その力を制御することができるようになるみたいだ。」


梨香はメモを読み進め、訓練方法について詳しく書かれているページを見つけた。「この方法を試してみるわ。自分の力をコントロールできるようになれば、もう人を傷つけずに済むかもしれない。」


しかし、父の残した資料を読み進めるうちに、梨香はさらに驚くべき事実に直面した。その中には、健太の力に関する記述もあったのだ。それによれば、健太は現在の記憶だけではなく、人の過去の記憶を消して、そこに新たな記憶を上書きすることができるとちうことだった。そして、その力を梨香に対して使っていたことが記されていた。


「健太、ここに書かれていることは本当なの?あなたが私の過去の記憶を操作していたって…。」梨香は深刻な表情をして、健太に問いかけた。


健太は深いため息をついて答えた。「そうだ。父さんの命令で、幼い君の記憶を書き換えていた。この実験に関する記憶をすべて消したんだ。君が罪悪感に苛まれないように。梨香を守りたかった。だけど、それが正しいことだったのか、今はわからない。」


梨香は静かに言った。「健太が私を守ろうとした気持ちはわかる。でも、今は真実を知りたい。そして二度と人を傷つけないように、力をコントロールできるようになりたい。」


健太は強い決意を込めて言った。「一緒にがんばろう。梨香が力をコントロールできるようになるまで、俺にできることはなんでもするよ。」


梨香は頷き、父の記述に従って訓練を始めることを決意した。自分の力を制御し、失われた過去と向き合うための日々が始まった。


その日から、梨香は毎日、訓練に励んだ。集中力を高める瞑想や、特定の思考パターンを練習することで、自分の力をコントロールする術を身につけていった。健太もまた、自分の能力を使って梨香の訓練をサポートし、記憶の断片を整理する手助けをした。


梨香は次第に自分の力がどういったものなのか、感覚的に掴んでいった。そして、その力を少しずつ制御できるようになっていった。しかし、心の奥底には、父が自分を利用していた事実と、健太が自分の記憶を操作していたことに対しての複雑な感情が渦巻いていた。


「私の力を悪いようには誰にも使わせない」梨香は決意を新たにした。「もう誰も傷つけない。真実を明らかにするんだ。」


健太は静かに頷いた。「そうだ、梨香。自分の未来は自分の手で切り拓くんだ。」


梨香は自分の能力と失われていた過去に向き合い、自分の手で未来を切り拓いていくと決意を新たにした。

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