第四章
研究室の扉を閉めると、二人は暗闇の中に取り残された。健太はすぐに懐中電灯のスイッチを入れ、部屋の中を照らし出した。
「父さんの使っていた研究室だ。」健太は懐かしい匂いを嗅ぎながら言った。「ここにはきっと何かがあるはずだ。」
梨香も懐中電灯のスイッチを入れて、部屋の中を探索し始めた。書棚や机の上には散乱した書類やノートが積み重ねられていた。そして、彼女の手が本棚にある一冊のノートに触れた。
「健太、これを見て。」梨香はノートを持った手を、健太のほうに向かって伸ばした。「これは父さんの手書きのノートよ。」
健太はノートを受け取り、その表紙を見つめた。そこには父親の名前が書かれていた。
「これは、父さんがメモに使っていたノートだ。研究を進める上でのアイデアや、実験結果が書かれているはずだ。」
健太はノートを開いた。そのページには彼自身の手書きのメモも残されていた。
「俺も父さんの研究を手伝っていたんだ。父さんの研究に参加し、メモを取っていた。」
梨香は驚いた表情で健太を見つめた。「健太、父さんの研究に関わっていたの?」
健太は深い溜息をついた。「そうだ。父さんは俺に自分の仕事を理解させようとしていた。でもその時は、この研究がこんなに深刻なものだったとは思いもしなかった。」
梨香はノートを見つめ、父親の緻密な手書きの文字を目で追った。「ここには、人間の脳の潜在能力に関する研究について書かれているわね。記憶の操作や意識の制御…難しいことがたくさん書かれている。」
健太は苦々しい表情で続けた。「父さんは人間の脳の無限の可能性を信じていた。だからこそ、記憶の改ざんや意識のコントロールの研究に没頭したんだ。でも、この研究がどれだけ危険なものなのか、研究を手伝っていたときには分かっていなかった。」
梨香はページをめくりながら言った。「父さんは何か重大なことを発見したのかもしれない。だから、この研究が狙われたのかもしれないわ。」
健太は静かに頷いた。「そうかもしれない。だからこそ、俺たちはこの研究の全容を理解しなければならないんだ。」
梨香は再び本棚に目を向けた。「もっと情報があるはずよ。私たちが知るべきことが、この部屋のどこかに隠されているはず。」
健太は懐中電灯の光を本棚や机の上に移動させながら言った。「父さんが何を見つけ、何を恐れたのか、それを突き止めなくては。」
二人は黙々と探索を続けた。書棚の奥にある古いファイルや、机の引き出しの中に隠されていたノートを次々と開いていった。資料の中には、様々な実験結果や理論の詳細が記されており、彼らは一つ一つを丹念に調べていった。