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怪獣特殊処理班ミナモト  作者: kamino
第2章 王族親衛隊
41/127

どういうつもり

40話です

「人違いだ、他を当たれ」

「ふむ。やはりこの姿では分からぬか」

レストアは首をかしげて見せた。アーサーはこっそり赤本に耳打ちした。

「…おい、アカモト。信じらんねえとは思うが、アレはレストアだ。間違いねえ」

「はあ?あのちんちくりんがか?」

赤本は思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。素体を入れ替えたという話は聞いていたが、あのレストアがまさか、可憐な少女の姿に変わってしまうなどとは予想だにできなかった。

「お、お前本当にレストアなのか?」

「正真正銘、一部の隙も無くレストア・ユグト・カンニバスだ。わけあってこの容姿となった。許せ」

「訳って、一体なんだ?」

「適合率の高さよの。以前の体は我向きではあったが、適合率は中の上ほどしかなかったのだ」

「それで適合率の高いその少女を見つけ出し、その皮を被ったってのか?」

「これはストックの内の一つよ。確か生まれは西暦の1945年とか言っていたな」

「な…!1945だと?」

「神獣協会は第2次世界大戦前からの組織だ。なにもおかしい話じゃない」

アーノルドがフォローを入れる。レストアはアーサーにも目を付けた。

「と、そこなガキは米軍の人間もどきか」

レストアはそう言ってアーサーを見た。

「それに一人増えているな。おかしな見た目だが、道化か何かか?」

「おいアーサー。あいつは俺が殺していいか?」

「だめだ、俺がぜってえぶっ飛ばす」

すでにアーサーとカートマンは殺気立っている。

「まあ本命はお前だ赤本。貴様のことは良くよく調べてきた。得意は剣術なのであろう?我も剣には心得がある。そこでだ、ここは一つ我がお前に指南してやろう」

「チッ、野郎アカモトに気があんのかよ」

アーサーはさも悔しそうに舌打ちした。

「その言い方はやめろ。いいか、レストアは俺が受け持つ」

「それが一番よさそうだ。アーサー、お前はあの2番目に強そうな怪人を狙え。後は俺とカートマンでどうにかする」

アーノルドはそう言うと、ブローニング機関銃を変形させた大斧を構えた。カートマンは意外とすぐ折れた。

「はあ、分かりましたよ。アーサー、お前もそれでいいな」

「……旦那が言うんなら」

「戦い方は決まったか?」

レストアは腕を組んでその様子を静観していた。

「ああ、お望み通りお前の相手は俺だ」

赤本は術刀を目の前に構えた。

「良い!では早速始めよう」

レストアが両腕を広げると、隣にいた怪人以外が一斉に襲い掛かってきた。

「手頃な的をいくつか用意してやった。まずは肩慣らしと行こうではないか!」

「こいつら、奴隷階級か!」

アーノルドは向かってきた怪人を一撃で切り倒すと、目の前を怪人の上半身が横切って行った。

「おい、カートマン!無闇に殴るな!こっちに死体が飛んでくる!」

カートマンはそれを聞くと、手近の怪人の首を掴み、そのまま握りつぶした。

「これならいいでしょう!」

「それならいい」

赤本はレストアに切り掛かったが、それを数人の怪人が塞いだ。その向こうから声が響く。

「まず最初の教えだ、アカモト!その見た目が古き友であろうと、妖艶な妾であろうと、それは全て敵!敵に他ならない!故に、如何なる場合においてもその手を緩めることは許されん!」

「何が許されないだ!お前もつい最近、手加減をして死にかけただろうが!」

「あれは当然の褒美だ。油断の無い強者に幾ら挑もうと、勝ち筋も無い。そこでこちらから隙を与えてやるのだ。強者ゆえの娯楽とでも思え」

「偉そうに…」

赤本はやっと1人、怪人を切り伏せた。

(こいつら、雑魚扱いの癖に強い!フィジカルで大きな差がある!)

「さて、二つ目の教えだ。お前は今、目の前の奴隷ども相手に苦戦しているな。それも当然だ。お前がいくら全霊を賭して挑もうと、その身体の程度が決定的に違うのだから。だが案ずるな。手はある!それはつまり、潜在の顕現だ」

「潜在の顕現?クッ…!」

赤本は尋ねる間も無く怪人の蹴りを受け止めた。繰り出された足は、術刀の強度と切れ味で縦に裂かれた。

「そうだ。後ろの米兵たちやお前のかつての仲間が行った身体強化方法。そして今回、それをお前に教えてやる」

「結構だ!敵から、ましてお前から教わることなどない!」

「では今の状況をどう切り抜けるのだ。お前はまだ2体しか奴隷どもを屠っていない。それでは押し負けるぞ?」

「それは…!」

それは確かに、的確な問いだった。このままでは数と膂力で劣る赤本は怪人達に負ける。つまり死ぬ。

「なるたけ早く決断した方が良いぞ?お前、そのままではもって3分といったところであろう」

これまた正確な予測だった。赤本はすでに息切れしてきている。数えて4人の怪人たちを捌ききれない。アーノルドたちも目の前の怪人に精一杯といった感じである。アーサーもかなり苦戦している。残された選択肢は多く無かった。

「……教えろ」

「何だと?」

「潜在の顕現とかいうやつだ。お前直々に教えてくれるんだろ?」

「おお、ついに観念したか。頼み方は少し癪だがそれはまあ良い。では、我が完璧に教えてやろう!」


その頃源たちは、いくつもの爆炎に包まれながらも、微塵もその足を止めない大怪獣、玄武を見据えていた。

「ジークさん、本部からの合図はまだなんですか?」

「まだだ。あと少し、距離がたらねえ」

玄武は源たちのいる電波灯台まで、あと10キロの位置にいた。電波灯台の集中照射の有効射程距離は8キロである。

「おそらくあと1分弱であそこまで到達する。ミナモト、手袋を取っておけ」

「分かりました」

2人の間に静寂が訪れた。地上では赤本たちが激闘を繰り広げていたが、それも一キロ上空のここではそよ風の音でかき消される。その時は不意に訪れた。

『こちらコマンド、目標が到達。直ちに浄化に移行せよ』

「了解!」

源とジークは低い唸り声をあげ始めた光源に素手で触れた。そして、2人の意識はあの白い空間へと移された。

「…ここは?」

ジークは、目の前の風景に混乱していた。今までこんな空間見たことも聞いたこともなかった。

「ここは僕が浄化する時に訪れる空間です。この真っ白な空間の中にコアが漂って…」

源が後退りをしていたジークの方を振り返った。そして絶句した。なんとジークの口からは、白の背景に良く映える真っ赤な血が吹き出していた。そして左胸からは、内臓で汚れた手が突き出ている。

「ジークさ…」

「久しぶりだね、ギルガメシュ」

源がその声にジークの後ろを見ると、端正な顔立ちをした日本人の男が、自らの腕でジークの胸を貫いていた。そしてあろうことか、源を見て微笑んでいる。その光景に源は激しく混乱した。

「あ、え?ジー…誰?」

「混乱するのも無理はない。なにせ今の君は僕を知らないんだから。ああ、何故この男の心臓を穿っているかだって?それはもちろん、君と一対一で話したいからさ。いや、実に懐かしい」

男はジークから腕を引き抜くと、反対の手で源に握手を求めた。ジークはそのまま床に崩れ落ちた。

「だ、誰だアンタ!なんで、こんな…」

「そうだね。まずは自己紹介をしよう。えーと、この場合はまず日本名を言った方が良いのかな。はは、年甲斐もなく緊張しているよ」

「よくもジークさんを!」

「話を聞きなよ。いいかい、僕は金城実。本名はアシュキル・バラン・レコアトル。君は源の……王城だったかな。本名はギルガメシュ。僕の親友だ。また会えて嬉しいよ」

「俺は、アンタを知らない!ギルなんとかだってきっと人違いだ!もういい、お前は俺が浄化してやる!」

「うーん、やはりこのままでは駄目か。仕方ない、君には退場願うとするよ」

金城はそのまま源の頭に触れようとした。その時だった。金城の伸ばした腕は源に触れる前にボトリと落ちた。切り落とされた。

「させるかよ。アシュキル」

何処からか女の声が聞こえる。とても懐かしい響きだ。

「…トラグカナイ。何故君が生きている」

「バックアップだ。旧式じゃあ予備までは壊さなかったみたいだな。ざまあねえ」

その声に金城はみるみる顔を歪ませる。

「貴様!」

「キレんなよ。そいつは俺のモンだ。てめえは出てってもらう」

「何を…!」

その瞬間、金城の首が切り落とされた。それに続いて四肢がバラバラになり、白い床に散らばった。

「さて、邪魔者は消えたな」

「今度は誰だ!」

源は周囲を見渡したが人影は無い。

「後ろだ」

その声は確かに後ろからした。源が驚いて振り返った瞬間、裸の女が源の首を締めて後ろに押し倒した。

「ク、が、ああ!」

「最後くらい静かにしろ。俺が誰だかも分からねえのに、みっともない奴だぜ」

「だ、れ?」

源は女の常人離れした腕力になすすべなく意識を失った。そして走馬灯を見た。

放課後の教室、窓の外には夕陽に染まった校庭で練習に励む野球部の姿が見える。奥には都心のビル群、その摩天楼が天高くそびえたっている。そして微かに聞こえる金属バットの打撃音が心地いい。源がそれにつられて窓際の席に腰掛けると、目の前の席に見慣れた制服を着た女生徒が座ってきた。とても可愛い、そう思った。彼女は髪をなびかせて源の方を振り返るとこう言った。

「王城の夢って、何?」

源は答えた。

「戦闘機に乗る。そんでもって怪獣をぶっ飛ばすんだ」

「じゃあ私も一緒に目指す。王城もそれで良いよね?」

「ああ、俺たちはずっと一緒だ」

源の発言に彼女は気をよくしたのか、満面の笑みで、

「うん!」

と元気よく答えた。そして場面は急に変わる。今度は誰もいない教室ではなく、狭いコックピットの中だった。窓の外は灰色の雲が立ち込めていて、雨粒がガラスに強く打ち付けていた。

「源2尉、レーダーに反応が」

無線が聞こえてきた。その声は少し低くはなっていたが、確かにあの女生徒の声だった。どうやら複座戦闘機に2人して乗っているらしい。源はそれに答える。

「進路維持だ。迂回をしていては燃料が尽きる」

「…了解です」

その瞬間、機体が激しく揺れたかと思うと、強烈な負荷が体にかかった。背中がうっすらと熱い。エンジンが爆発したのか。

「まさか奴が!」

「源2尉!貴方から脱出を!」

「それでは君が間に合わない!まず君からだ!」

それに無線は沈黙した。そして、

「……王城、ごめんね?」

悲痛な声が聞こえた。源はそれに強烈な抵抗を感じた。酸素マスクをとり、大声で叫んだ。

「よせ!せめて君だけでも!」

「大好きだったよ。王城」

「待ってくれ!」

「私、向こうで待ってるから。迎えにきてね?」

その途端、源は吹き付ける風と、爆発によって生じる光と熱を感じた。源は落ちた。雷雨の中を。深く深く沈み込むように。そして…

「カナ!」

源は走馬灯から覚めると、咄嗟に首を締める両腕を掴んだ。そして馬乗りになっている、見知った顔の女を睨みつけた。

「てめえ、一体どう言うつもりだ?」

「ハッ、やっと思い出したって訳か!」


良き

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