05 そうして今日も一日がおわる
「ただいまー! 父さん、母さん!」
「おじゃまするぞー!」
クーゲルとルーデは、クーゲルの家へと帰ってきた。
当然、ドラゴンの卵を抱えている。
「あらあら、クーゲルにルーちゃん? その卵は?」
「ギルドにあった依頼をやったら手に入ったんだ!」
怒られたくないので、広域討伐依頼だったことは秘密にするクーゲル。
「まあ! そんな立派な卵をもらったのね?」
「美味しく料理してほしいんだけど、いいかな?」
「もちろん大丈夫よ。ルーちゃんも食べていくのよね?」
「あたぼーよ!!」
「じゃあ、腕によりをかけて卵料理を作らせてもらうわね!」
ゲシクテはルーデの持つ卵を受け取ると、キッチンへと引っ込んだ。
「ふむ。クーゲルよ、あの卵はいったいどこで手に入れてきたのだ?」
「あえっと、父さん……それは……」
「山だぞ! ブラックドラゴンをぶちのめしたんだ! 肉の方はギルドに卸しちまったけどな!」
「……クーゲル?」
「あはは……」
こうして、クーゲルとルーデはラングザマーのお説教を受けることとなった。
ラングザマーのお説教が終わった頃に、ちょうどゲシクテは料理を終えた。
「さあ、出来たわよ! 席に座ってちょうだいな」
そうして、次々と卵料理が並んでいく。
ドレスドオムライスとか、半熟トロトロのスクランブルエッグとか、やたら美味そうで手の込んだ卵料理ばかりである。
「うわー美味しそう! ありがとう、母さん!」
「うふふ。そんなに喜んでくれると、頑張った甲斐があったわねぇ」
「なあ、さっさと食おーぜ!」
「だな。――いただきます!」
二人は同時に卵料理に手をつけた。
「う、美味い! こんな濃厚な卵はじめて食べたよ母さん!」
「あら。じゃあ私達も頂きましょうか」
「だな」
と言って、ゲシクテとラングザマーもようやく食べ始める。
子供が食べる姿を見たかったから、とかではない。得体の知れない卵だったので、無敵のクーゲルに毒見させただけである。
なにげに強かな両親であったが、クーゲルはそれに気付くことは無かった。
「なあクーゲル。卵とってきて良かっただろ?」
「だなぁ。こんなに美味いなんて思わなかったよ」
「なー。やっぱ良いもん食ってたりしたのかな」
「ひやむぎだよ」
等と言い合いながら、クーゲルとルーデはさくっと卵料理を平らげた。
「ごちそうさまでした!」
「でした!」
「うふふ。お粗末さまでした。お風呂も沸いてるから、入ってきなさいな二人とも」
「はーい」
「あ、おい待てクーゲル!」
と、クーゲルは返事をして風呂に向かう。ルーデもそれに付いていくのであった。
お風呂でちゃぷちゃぷしながら、二人は今日あったことを振り返る。
「いやー今日も大変だった……ドラゴンには襲われるわ、結局依頼で退治に行くわで」
「そうか? 大したことなかっただろ?」
「いやお前、『あわわわ』とか言いながら後ろに隠れてただけだよな?」
その通り。ひやむぎ狩りが襲ってきたときも、逆に狩りに行ったときも、ルーデはしっかりビビって距離を取り、物陰に隠れて焦っていたのである。
このルーデ、態度がデカいわりにビビリなのだ。
さらに言えば人見知りでもあり、ある程度親しい相手でなければ粗暴な態度はなりを潜め、何を言われてもうつむき気味に「あっす……」とかしか言えなくなる。
「まあでも、最終的には美味い卵も食えたし。ルーデがいたわりには、平和でいい一日だったな」
「は? アタシがトラブルメーカーみたいに言うのやめろや!」
「自覚ねーのが一番こえーわ」
等と、くだらないやり取りを続ける二人。
そうして風呂を上がった二人はゲシクテが言われるままにお休みの時間となる。
「ルーちゃん。今日は泊まっていくのかしら?」
「おう! 任せろ!」
「うふふ。じゃあクーゲルと一緒のベッドでお休みなさいな」
「うえっ!? く、くーげると一緒のべっど……!?」
「お前そこ照れるの? 風呂も一緒だったのに」
等とやり取りをした後。
クーゲルの部屋で、一つのベッドに身を寄せ合って眠りにつく二人。
「……なあ。クーゲル」
「うん?」
クーゲルの背中に、まるで抱きまくらでも抱くかのようにギュッとくっつくルーデが口を開く。
「……いつも、一緒にあそんでくれてありがと」
珍しくデレたルーデに、クーゲルは目を見開いて驚く。
が、すぐに返事をする。
「気にすんなよ。俺たち幼馴染で、友達だろ?」
「……うん」
「一緒に遊ぶのなんて、当たり前じゃん。これからも、ずっとそうなるよ」
「……うんっ! おやすみ、クーゲルっ♥」
より一層クーゲルをギュッと抱きしめ、ルーデは眠りにつく。
やがてクーゲルも、ルーデの体温を感じながら眠りに落ちてゆく。
そんな二人の様子を、部屋の扉をこっそり開けて覗く二人がいた。
「うふふ。やっぱり仲良しさんね」
「ああ。いい幼馴染がいて、クーゲルは幸せ者だな」
ゲシクテとラングサマーはそんなことを小声で言い合ってから、静かにドアを閉めるのであった。
これで第一章終了!
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