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04 冒険者登録




「そうそう、二人とも。今日は午後から冒険者ギルドに行ってきなさいな」

「冒険者ギルド?」

「ええ。クーゲルも六歳になったでしょう? だから見習い登録してもらえるはずよ。一緒にルーちゃんも試験を受けられるように頼んでおいたから、行ってらっしゃいな」


 ゲシクテからの思わぬプレゼントに、クーゲルは笑顔を浮かべた。


「ありがとう、母さん!」

「うふふ。見習い試験、頑張ってね?」

「うん!」

「ルーちゃんもね。うちのクーゲルをよろしくね?」

「おう! まかせときな!!」


 こうして二人は、冒険者ギルドに登録へ向かうこととなった。





 お昼ごはんを終えた後。二人は冒険者ギルドへと向かった。


 普段は「大人のお仕事場だから入っちゃ駄目」と言われていた場所である。

 ルーデはもちろん、クーゲルもワクワクしていた。


「こんにちわー!」

「たのもー!!」


 二人は元気よく扉を開いて挨拶する。


「いらっしゃい、クーゲルちゃん。ルーデちゃん」


 冒険者ギルドの受付をしているおばさんが、笑顔で迎え入れてくれた。

 小さな田舎村の冒険者ギルドなので、おばさんも顔見知りである。


「おばさん! 見習い冒険者の登録にきました!」

「そうだそうだ!」

「ええ。見習い冒険者の登録ですねぇ。では、こっちの紙に、お名前と年齢、それと住所は書けるかしら?」


 おばさんは紙を二人にそれぞれ渡した。


 冒険者として登録するには、あまりにも簡単な書類だが、見習い登録なので問題ない。

 そもそも、先に親から『登録して欲しい』という申請を書類で受け取っているからこそ、子供は見習い登録が出来るからである。


 なので、ここで紙に書くのは、あくまでも6歳児の文字の練習としての意味しか無いのだ。


「できました!」

「あら、早いわねぇ」


 で、当然クーゲルはこれぐらい楽勝である。


 一方、ルーデはめちゃくちゃなことを書いていた。


「おいルーデ」

「なんだよ?」

「名前が『ドラカニアの秘宝』ってなんだよ」

「その方がかっこいいだろ?」

「おめーが秘宝になるのは流石にダサいだろ」

「うるせー! そんなん個人のセンスだろーが!!」

「じゃあ次の年齢はなんで『666』なんだよ?」

「悪魔の数字だって前にクーゲルが言ってただろ?」

「いや、悪魔の数字なら書くなよ。年齢書くんだよ年齢を」


 まるでまともに書く気が無いルーデである。


「で、住所とかもう絵じゃん。これなに?」

「草からおかきを生み出したもうたおかき神の絵だ」

「え? 宗教画なの?」

「うふふ。いいわよ、ルーデちゃん。これで受け付けておくわね」

「うむ! よく出来たやつだな! ほーびにおかきをやろう!」


 ルーデは紙を提出すると共に、おかきをつけておばさんに渡した。ぽっけから出したやつである。


「あらあら……」


 さすがにホコリもたっぷり付いていて汚いので、おばさんも困ってしまう。


「すいません……ほんとルーデがすいません……」

「あ、いいのよクーゲルちゃん。気にしないで!」


 おばさんは自分のポケットにおかきをしまい、謝るクーゲルの頭を上げさせた。


「ふぅ。これで登録の申請は終わり。次は二人とも試験を受けてもらうわね」

「わかりました!」


 元気に返事をするクーゲル。

 それを見たルーデはニヤリと笑って言う。


「ふん! まだまだガキじゃねーか! こんなんでもつとまるほど冒険者はあまくねーんだぞ!」

「いや、登録する側だよなお前? なんでテンプレの絡んでくるヤツやってんだよ」


 なぜかテンプレぶっているルーデに、クーゲルがツッコミを入れる。


「おめーが冒険者としてやっていけるか、試してやろうじゃねーか!」


 そしてテンプレ通り、ルーデがクーゲルへと襲いかかる!





「満足したか?」

「ふぁい」


 顔の原型がわからないほどボコボコにされて落ち着いたルーデであった。


「……それだけ動けるならクーゲルちゃんは試験も合格でいいわね」

「えっ?」

「それに、ルーデちゃんもアレだけ殴られて大丈夫なら合格でいいわね」

「いや、あの?」


 ルーデをボコボコにする様子を見ていたおばさんは、あっさりと二人を合格にしてしまう。


 まあ、人外の動きでルーデをボコボコにしていたクーゲルはもちろん、その人外の動きでボコボコにされても顔が腫れてるだけで済んでいるルーデも一目瞭然でヤバいやつだと分かる。

 当然の結果であった。


「はい! これで二人は今日から見習い冒険者よ!」

「あ、えっと……ありがとうございます?」


 試験に合格した実感が沸かず、首を傾げながら感謝するクーゲル。


「さあ。二人とも、向こうの掲示板を見に行ってらっしゃいな。見習いでも受けられる依頼票も貼ってありますからね」

「はい。分かりました!」

「まあ、そうは言ってもここは田舎ですからね。ほとんどは常設の討伐依頼と採集依頼、それに広域手配されている討伐依頼だけですけど」

「でも、街の雑用みたいな仕事もあるんですよね?」

「もちろんよ。二人が受けてもいいのは、そういう依頼の中でも簡単なものだけですからね」

「はーい!」


 おばさんに言われて、クーゲルは掲示板に向かう。


「なあクーゲル! これにしようぜ!」


 先に掲示板に来ていたルーデは、一つの依頼表を指さした。


「えーっと、なになに?……『広域討伐、ブラックドラゴン『ひやむぎ狩り』。草食のドラゴンでひやむぎが好物であり、街の乾物屋を集中的に襲撃する為非常に危険である。縄張りにうんこを落としてマーキング完了したと思い込む特殊個体でもある』……ってこいつ、今日見逃したブラックドラゴンだろ絶対!! 好物がひやむぎってなんだよ!!!」


「討伐していーなら殺そうぜ! そんで卵食べよう!!」

「……まあ、それでもいっか」





 その後、無事『ひやむぎ狩り』を見つけた二人は、ボコボコのぐちゃぐちゃにして討伐し、卵を頂くことが出来たのであった。

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