04 なんやかんやで寿司完成!
そんなこんなで、ゲシクテの指導のお陰で二人はサバを捌いてしめ鯖の寿司を完成させた。
「初めてにしては上出来よ♪ 少し身割れしちゃってるけれど、しめ鯖ならそこまで気にならない範疇だわ」
「しかし、ゲシクテ殿のしめ鯖と吾輩のしめ鯖では完成度が違うのである……」
シリーの言う通り、ゲシクテのしめ鯖は見事で身割れもなく、骨を抜いた痕の他に形が崩れていない。
一方で、ルーデとシリーのしめ鯖は身が崩れて形が悪くなっていた。
「この差はいったい……うごごご!」
「捌く時に力が入っていたでしょう? その圧力と包丁を入れる力が合わさって身が崩れるのよ。よく研いだ包丁を柔らかく入れて、押さえる力は最低限で捌くとキレイに捌けるわ」
「うぬぬ、魚、奥が深いのであるな……!」
案外やる気に満ちているシリー。
一方で、ルーデはすでに死んだ魚のような目をしていた。
飽きたのである。
「なぁクーゲル、シガテラ毒限定10連ガチャやろーぜ~」
「何のためにだよ。当たったとして俺だけ毒効かねーし」
「ブルルルルル、ドン! ガタガタガタ、パカッ! ふぁぁああああん♪」
「口でガチャ演出すな」
「お、Rフエダイ×5に、SRはイシガキダイ、バラハタ、マハタ! うおおおおお! SSR以上が二枚確定!!」
「シガテラに当たるってわかってると引いても嬉しくねぇなぁ……」
無から魚がガチャ演出と共に発生している事実には突っ込まないクーゲル。
「一枚目!SSR!! 渦鞭毛藻類!!」
「毒の原因になるやつな?」
「二枚目! うおおおおおお! USSR! なんかカラフルで名前も種類もよくわからんトゲトゲしたヒトデ!!」
「それ本当に危ないのはシガテラ毒だけか? なあ?」
「アタシこんなに食えね―からクーゲルが貰ってってくれよ」
「ひでーお裾分け。まあ最強だから食うけどさ……」
と言いながら、USSRのキモいヒトデをバリバリと貪るクーゲル。
最強すぎて人として持つべき当たり前の感覚を失っている。
とまあ、そんなこんながあって。
「って感じで、今やシリーのヤツ、毎日のように魚を捌いてるんだよなぁ」
「へぇ、そうなんか」
飯処†煉獄†にて、食事をしながら真地女と世間話をするクーゲル。
「そういえば、真地女さんは魚捌いて刺し身とか出したりしないの?」
「ウチはフツーの食堂やからな。そんな大層なもん作っとらん。作ってもアジフライぐらいよ」
「へぇ……真地女さん、料理上手だから何でもできそうだけどなぁ」
自然とラブコメ主人公みたいな言葉で真地女を褒めるクーゲル。
「生の魚を専門で出すような店にはかなわんよ。ウチの技術なんて、家庭料理に毛が生えたようなもんや」
「俺は好きだけどな、真地女さんの魚料理。ホッケ定食とか」
「残念、アレは仕入れた干物を焼いて出しとるだけのもんや。ウチの手はほとんど入っとらんで」
最強のくせして見る目の無い男、クーゲルであった。
「……っていうかクー坊」
「ん?」
「さっきからウチに向かって口説き文句みたいなことばっか言いよるの、気づいとるか?」
「あ、えっと、そのつもりはなかったです……ごめんなさい……」
「そうかそうか。ならコイツは没収やな」
「うわっ!? 俺のカキフライ! 返せ!」
普通にイチャイチャする二人を、店内のお客さん一同が温かい目で見守っていた。
が、その時! 乱入者が現る!
「ふはははははっ!! ついに吾輩は魚料理を極めたのである!!」
テンションの高い様子のシリーであった。
「あれ、どうしたんだよシリー」
「吾輩はついに魚料理を極めたのである。よって、まずはクーゲル殿の胃袋を掴んでいるバイト殿と料理勝負に来たのである!!」
「無茶な展開だなぁ……」
言いながらクーゲルは真地女の方を見る。
「あの、真地女さん」
「はぁ……まあ、このまま放置しとっても営業の迷惑になるだけや。さっさと受けてさっさと終わらしたるか」
「なんか我が家のクソメイドがすいません……」
普通に迷惑なので代理で謝るクーゲル。
「――話は聞かせてもらったのじゃ!」
と、さらにここへ事態をややこしくするボケナスが一人乱入する。
「料理対決ならば、妾が仕切ってやろうなのじゃ!」
飯処†煉獄†の店長、アルアであった。
「はぁ? なんで店長が仕切んねん」
「ちょうどこないだ作った全自動お料理採点マシーンの性能を試すのに良い機会だからなのじゃ!」
「すっげー都合のいいマシーン作ってたんだなオイ」
呆れつつもツッコミを忘れないクーゲル。
だが、こういう時に天才科学者が都合のいい発明品を持ってくるのも一つのあるあるネタと言えよう。
というわけで、こうして真地女VSシリーのお料理対決が始まることとなった。