03 喧嘩両成敗
で、まあクーゲルは最強なので特に盛り上がりもなく速攻でボコボコにした。
「「すいませんでした」」
ボコボコにされて顔の原型がわからないぐらいの状態で謝罪するのは一匹と一人。
ブラックドラゴンと、その怒りを買う元凶となったルーデである。
「全く……まずルーデ!」
「ふぁい」
「野生の魔物の卵を持って帰ってきちゃ駄目だって、何度も教えたし村の大人にも教わってるよなぁ!?」
「ふぁい」
「そもそもさぁ!! ドラゴンのうんこあった時点で卵もドラゴンかもって気づけよ!!! ちょっと考えれば分かるだろーが!!!!」
「ふぁい」
ボコボコにされたルーデにはもはや抵抗の意思など皆無であった。
説教されるがままである。
「で!! 次はお前! ブラックドラゴン!!!」
「はい……」
「人間のガキに盗まれるような場所に卵を置くな! 不用心だろ!」
「いやでも、我がうんこ置いとったし。普通なら「うんこあるしドラゴンおるじゃん……」ってなって逃げるぞ!??!?!??」
「普通じゃねーバカが居るからこうなったんだよ!!!」
「はい、すいません!!!」
「うんこしたぐらいでテメーのガキを守った気になってんじゃねーぞ!!!」
「はい……すいません……」
「あとムカついたからって気軽にブレスを吐くな!! 俺が止めてなけりゃあ山火事になってただろうが!!!」
「いや、山火事ぐらい別に……」
「うるせえ人様に迷惑かけんな!!!」
「ひいっ! はいすいません!」
強すぎるクーゲルには、たとえブラックドラゴンでも頭が上がらないのだ。
「はぁ……まあ、今回は俺の友達が迷惑を掛けた形だから、そこは悪かったよ。お詫びに卵が外敵に襲われないように魔法で守ってやる」
「な、なんとそれは真か!?」
「もちろん。――守護結界、極大!」
クーゲルはそう言って、自身のスキル『天下夢想』のお陰で習得している魔法の一つ、『守護結界(極大)』を発動した。
最強クラスの結界であり、しかもクーゲルが発動したものだから、たとえ隕石が落ちてきても壊れない優れもの。
「おお、ここまでしてくれるとは! すまなかったな、人間よ!」
「もう盗まれるようなとこに卵置くんじゃねーぞ?」
「うむ! ではさらばだ!!」
こうして無事、ブラックドラゴンは卵を抱え自分の巣へと帰っていくのであった。
「なあクーゲル」
「ん? なに?」
「卵とおかき、すり替えたら気付かれずに盗めねーかな?」
「出来るわけねーだろ!! つーかやるな!!!!」
「ぐへっ!!」
そしてバカなことを言うルーデには、再び制裁を加えるのであった。
とまあ、ドラゴンの襲来などもあったが、無事二人は村へと帰ってきた。
「っていうかルーデ」
「ん?」
「おまえポケットにまだおかき入ってるよな?」
「もちろん!」
「ハラ減ってるならそれ食えばよくね?」
今更なことをルーデに問いかけるクーゲル。
「は? お前おかきのことバカにしてんの?」
「してないけど」
「アタシがおかき食うようなクズだって言いてぇのか!?」
「おかきぐらい誰でも食うが?」
「くっ……そこまでとは……っ!! おかき神ヌールブサモッチョ様に示しがつかねぇ……っ!!」
「ぬーるぶ……なんだって?」
「ムガモニップメソボヌ様だ!!」
「いやちげーだろ」
無茶苦茶なことを言うルーデにも呆れず付き合ってツッコミを入れるクーゲル。
そういうところがルーデにつきまとわれる原因となっているのだが、本人には残念ながら自覚が無い。
「うるせー! そんなに言うんだったらおかき神様の良いところ10個言ってみろや!!」
「いや、まず知らんしその神様……」
「じゃー文句言うな!」
「だったら名前ぐらい正確に覚えとけよ!!!」
いつもどおりのやり取り。
そんな二人を見かけた、とある人物が声を上げる。
「こら二人とも! 喧嘩しちゃだめでしょ!!」
クーゲルの母、ゲシクテである。
ゲシクテは二人に近寄ると、喧嘩両成敗とばかりに両方へげんこつを落とした。
「うげっ!」
「いたっ!」
「まったくもう。仲良く遊んでたとおもったら、すぐ喧嘩をするんだから。めっ、よ? 仲良くしなきゃね?」
「はい、母さん……」
しゅん、とうなだれながら、真の世界最強は母さんかもしれない、と思うクーゲルであった。
ちなみに実際、ゲシクテはあらゆる防御を貫通してダメージを与えるスキルを持っているので、けっこう凄い。
それ以外が一般的な主婦レベルである為に目立っていないだけだったりする。