07 聖剣と聖女
で、結局大樹と聖剣の伝説とか色々が捏造され、普通にクーゲルの案とほとんど同じ感じで聖剣めぐりツアーが村の名物として開始されることとなった。
「えー、こちら右に見えますのは~、土です」
で、ツアーガイドを率先してやると言い出したルーデが研修をやることとなり、それをクーゲルが監督する羽目となった。
「いや、土なんか案内してどーすんだよ」
「大樹生えてんだから何かしら良い土だろ、たぶん」
「だとして、喜ぶのは農家ぐらいだろ」
辛口のクーゲルに、不機嫌になるルーデ。
「じゃあどうやって土の紹介すりゃいーんだよ!!!!!!」
「しなくて良いんだよ土なんかさぁ!!!!」
お互いにキレあうクーゲルとルーデ。
「おう、頑張っとるようやな」
そこへ顔を見せたのはテスタ。
実はこの聖剣めぐりツアー、事業者は村ではなく清光会なのだ。
なので、最高責任者はこのテスタ。ちゃんと働いているか監督するのも当然である。
「テスタの方はどうだ? 色々用意してるんだろ?」
「聖剣射的、聖剣くじ、聖剣焼きそば、聖剣かき氷……他にも色々準備中や」
これらの販売が清光会のシノギとなる予定である。
「そーいや、てめー聖女なんだし聖剣抜けたりすんじゃねーの?」
そこでふと、気づいたようにルーデが言う。
「確かにワシは聖女や。しかしなぁ……他所のシノギを荒らしてまで聖剣なんぞ欲しゅうない。昔ながらのシノギでワシら清光会は十分やってけるわ」
「立派じゃねーか聖女! ほーびに土やるよ!」
「土はいいから、お前はまずガイドの練習をしてろ!」
スパァン! とハリスカリバーでルーデを引っ叩くクーゲル。
大人しく、「えーこちらは土~」と繰り返す機械となるルーデ。
「で、実際のところテスタは聖剣に興味無いのか?」
「……ちっとだけ興味はある」
恥ずかしそうに本音を告げるテスタ。
「じゃあ、一回ぐらい抜けるかどうか試してもいいんじゃないか? もし抜けたとしても、また大樹のとこに封印しとけばいいだけだしさ」
「……兄弟がそこまで言うんやったら、ワシも男見せなあかんな!」
というわけで、ウキウキの聖女テスタを連れて大樹へと向かうクーゲル。
なんやかんやでサクッと聖剣の前までたどり着くと、とりあえずテスタの背中を押す。
「ほら、テスタ。試しに抜いてみろよ」
「お、おう。男見せちゃる!」
見るからに緊張した様子で聖剣に近づくテスタ。
そして聖剣の柄を握って……思いっきり引っこ抜いた!
スポーンっ!!
抜けた!
「おお、すげーなテスタ! その聖剣が抜けるって、SSS級冒険者ぐらいの実力が無いと無理なんだぞ!? しかも聖剣にふさわしい、聖なる魔力の持ち主じゃなきゃ反応しないのに、抵抗なくスポっていったじゃん!」
べた褒めのクーゲルに、照れるテスタ。
「そ、そないな大層なもんとちゃうわ!」
わたわたと慌てるテスタが、クーゲルには年相応の女の子らしく可愛くみえた。
「でも、これで村の名物が一つ減っちゃうな。聖剣があった場所ってだけじゃあ、観光客もがっかりするだろうし」
クーゲルが観光資源が減ったことを心配すると、テスタは何か考え込む。
そして意を決して……聖剣を元の場所にぶっ刺した!!
「えっ、テスタ!? なんで戻しちゃうんだよ!」
「これでええんや。ウチが聖剣を持っとったところで何にもならん。村の為にもならん。せやから、必要になるその時まで、ここで眠っといてもらった方がええんや」
あれだけ聖剣を気にしていたテスタが、なんと村の為を思って聖剣を元に戻したのだ!
「そっか……。テスタ、ありがとな!」
「こ、こんなん当たり前や! 村のモンには世話になっとるし、兄弟の考えた村おこしが台無しになるのも嫌やから……」
と言って、照れるテスタ。
が、すぐに気を取り直してクーゲルに向き直る。
「けどまあ、兄弟のお陰でええ経験させてもらったわ」
「楽しかったなら何よりだよ」
まあ、テスタが良いならそれでいいか、と納得するクーゲル。
「で、これは兄弟へのお礼や」
そして――クーゲルの不意を突くようにテスタは近寄る。
クーゲルの頬に顔を寄せると……そのままほっぺにキスをする!
「へっ?」
クーゲルが事態を理解する前に、サッと離れるテスタ。
「こっ、これはただのお礼、聖女の祝福ってやつやからなっ! あんま気にするもんとちゃうで!」
テスタはそう言いながら、照れた様子で慌てて下山していくのであった。
そんなテスタを見送りながら、クーゲルは頬を何となく触る。
「ちくしょう、可愛いじゃねぇか……!」
とまあ、テスタの思わぬ行動によって、自分まで顔が赤くなるクーゲルであった。
この話でとりあえず書き溜めた分は終わりです!
また気が向いた時に書いて、いい感じに投稿していこうと思います!!
今後もクーゲルの異世界ハーレムを見たい人は評価ポイントといいねボタンを押してくれると泣かずに喜びます!!!!




