06 聖剣めぐりツアー
で、村に戻った三人は具体的な聖剣めぐりツアーのアイディアを出し合う。
「やっぱ豪勢にフェリーとかでめぐろうぜ!」
「山だよ」
雑なルーデの提案を、雑なツッコミで蹴るクーゲル。
「だったらクーゲルはどうすりゃいいと思ってんだよ? ああん? かぼす生やすぞ、へそに!!」
「かぼす好きだし別にいいけど……」
最強だとへそからかぼすが生えても平気らしい。
「まあ、無難に大樹までの道を整備して、それっぽい名所を何箇所か捏造して、あとは大樹までの案内をするツアーガイドみたいな役職を用意すればいいんじゃね?」
「無難のじゃ……」
やっぱ面白くないことを言うクーゲルに、アルアは唖然とする。
「ここまで来たら、もっと盛大なツアーにしたいのじゃ! いっそ、まじでフェリーで行くのもアリなのじゃ!!」
「は?」
「妾の技術なら、陸を泳ぐフェリーを作ることも可能なのじゃ!」
「もうそれを名産品にして売った方が早くねぇか?」
つまんねー男クーゲルには無粋なツッコミしか出来ないのである。
一方で、なぜだか元気の無い表情を見せるルーデ。
「はぁ……憂鬱」
「どした、ルーデ?」
「いや、飽きた……マジもうつまらん……かぼす食いながら帰る……」
そう行って、ルーデはどこからともなく取り出したかぼすを食べながら家へと帰ってゆく。
とぼとぼと帰ってゆくルーデを見送りながら、アルアは唖然とする。
「全部ほっぽり出して帰るのじゃ!?」
「まあ、ルーデだし」
むしろここまでわりと話に付き合ってくれただけマシである。
「で、どうするアルアさん? マジで陸戦用フェリーでも作るか?」
「いや、あれはルーちゃんに悪ノリしただけなのじゃ。作るならもっとマシなもん作るのじゃ」
クソみたいな理由だったので、真面目に新しいアイディアを考える。
「うーん……クーちゃんのアイディアが妥当すぎて何も良いアイディアが分かんのじゃ……」
「じゃあそれでいーじゃねえか」
「嫌じゃ! もっとおもろいアイディアを出したいのじゃ!!」
クーゲルのセンス無いアイディアに屈したくないアルアは必死に考える。
「――何してんねん、店長にクー坊」
すると、そこへ真地女が現れる。
「むっ! 邪魔するなのじゃバイトよ! 妾は今、村の特産品を考えるので忙しいのじゃ!」
「はあ? その前に店の仕事あるやろ。開店準備しに来いやボケ。っちゅうか、なんで村の特産品を店長が考えとんねん」
「実はな……」
クーゲルがかくかくしかじか、詳細を真地女に説明する。
「店長、アホなん? 今期はウチらも含め村に移住して来た住民が多かったから、公共設備の増設に金掛かって赤字になっただけやろ」
「のじゃ?」
「そもそも赤字の方も、来季に決済してもええ設備を今期にまとめて赤字決済にすることで領主様へ減税措置の申請するために会計上で処理したから出たもんやで? 別に村の財政の負担にもなっとらんわ」
えらい村の財政事情に詳しい真地女。
「真地女さん、なんでそんなに詳しいんだ?」
「いや、村の事業者向けの説明会でそう言われたんや。そこのアホの店長も出席して聞いとったし、普通やったら覚えとるはずやで? 説明会で寝とったりせん限りは」
「のじゃあ……!」
要するに、重要な話をアルアが聞き逃しただけというオチであった。
「まあ、そんなことだろうとは思ってたけどな」
呆れつつも、まあ大した問題とは思っていなかったクーゲルは驚かなかった。
「せやから、店長はウチで引き取らせてもらうで」
「ああ、うん。お仕事頑張って、真地女さん」
「のじゃあ! クーちゃん助けてのじゃあ!!」
「労働からは逃れられないぞ、アルアさん」
こうして、アルアは真地女によって連行されて行った。
「……とりあえず、大樹と聖剣があったってことだけはギルドにでも報告しとくか」
途中までせっかく作ったのだし、報告することにしたクーゲルであった。




