04 大樹と聖剣作り
というわけで、三人は裏山に来た。
大樹を生やすのにちょうどいい場所を探しているのである。
「お、クーゲル! こことか大樹生えてそうじゃね?」
「山入って一分も経ってねえのに?」
「会いに行ける伝説って感じで良いのじゃ?」
「伝説って?」
ああ!
そんなこんなをしているうちに、かつてブラックドラゴン『ひやむぎ狩り』が住んでいた辺りに到着する三人。
「おお、ちょうどいい感じに開けた場所があるのじゃ!」
「ここなら大樹が生えてても雰囲気悪くないし、奥まった場所だから説得力もある。ちょうどいいと思うぞ」
「ここで決定のじゃ!」
こうして大樹を生やす場所は決まる。
しかし問題がある。
「けど、どうやって大樹をここに生やすのじゃ?」
そう。急に木は生えてきたりしないのだ!
「あー、そこはルーデを使うから大丈夫」
「のじゃ?」
クーゲルが意味不明なことを言う。
「よしルーデ、そっちに立て!」
「あ? まあいーけどよぉ~」
クーゲルに言われるまま、開けた場所の中心にルーデが立つ。
「で、そこで大樹ごっこしてみてくれ」
「大樹ごっこのじゃ?」
「大樹ごっこだな? 任せろ!」
そしてルーデが任せろと言った途端――ニュニュニュニュンッ! と奇妙な音を立ててルーデの身体が巨大に変形!
瞬く間に立派な大樹がその場に生えた!
「アタシは~♪ 大樹~♪ サンクトペテルブルグ出身の大樹~♪」
大樹になってゴキゲンなルーデは歌い出した。
「の、のじゃあ……意味不明のじゃあ……」
そして案の定、意味不明な力に怯えるアルア。
そんな二人の様子を見て、そろそろ頃合いだな、と判断するクーゲル。
「よし、ルーデ! もう戻っていいぞ! こっち来たらおかき食わしてやるから!」
「え? 大樹やってる場合じゃねーな!」
すると、大樹のどっかその辺からルーデがスポーンっ! と飛び出てくる。
その場にはちょっと大きめな穴の空いた大樹だけが残された。
「よくやったルーデ、ご褒美のおかきだ」
「とっととよこせ!」
クーゲルがどこからともなく取り出したおかきを、ルーデは勢い良く分捕る。
そしておかきを手に取った途端、高く掲げて踊りだす。
「お~おお~~♪ おかき~♪ 尺度はヤードポンド法だよ~~~♪」
歌って踊りながらおかきを奉るルーデ。
やがておかきは天から差し込む光に包まれ、消えていった……。
「よし、これで大樹は完成だな」
「何が『よし』なのじゃ!? 意味分からんすぎなのじゃ!!!」
さすがについていけないアルアはツッコまずにはいられなかった。
「深く考えるな、アルアさん。これがルーデっていう生き物なんだ」
「のじゃあ……人類怖いのじゃあ……」
涙目になるアルア。今日は泣いてばっかである。
「で、次は聖剣作るんだろ? どーすんだよクーゲル」
ともかく話を先に進めるルーデ。
「まあ、聖剣ぐらい最強の俺が適当に用意するよ」
言うと、クーゲルはどこからともなく立派な剣を取り出した。
「のじゃあ!? その剣は何なのじゃ!?」
「前に依頼で攻略に行った古代遺跡で拾ったよくわかんない剣だよ。弱すぎて使い道が無いけど、見た目は良いからなんかに使えないかと思って異空間に収納しといたんだ」
「その剣、妾とかだと軽く一突きされただけで大ダメージを受けかねないぐらい聖なる力が溢れてるのじゃが……?」
「ははは、まさかぁ」
最強すぎて常識が壊れているクーゲルには、古代遺跡で拾ったヤバい剣の強さが全然理解できていなかった。
「で、この程度で聖剣なんてお笑い話になっちゃうから、俺がテキトーに力を注ぎ込んで強化して……っと」
で、クーゲルがすんげー力を剣に注ぎ込む。
今までとは比にならないぐらいすんげー聖なる力を放つようになった。
「はわわわ……近寄るだけで体調悪くなるレベルで神聖のじゃあ……」
「で、これを大樹の辺りに突き刺しとけばいいか」
クーゲルは出来上がった聖剣を、大樹の近くの地面に突き刺す。
途端に神聖な力が周囲に満たされ、花が咲き乱れ、暖かな光が降り注ぐようになった。
「まー、こんなもんかな。子供だましだけど、村のレクリエーションなんてこれぐらいで十分だろ」
「いや、間違いなく世界最高レベルの聖剣になっとるのじゃ」
とまあ、クーゲルの力が強すぎたので、聖剣の伝説はマジになっちゃったのである。




