03 アルアのターン
「つーかメシ屋もなんか考えろよ」
ルーデに振られたので、アルアも特産品を考えるターンがやってきた。
「ふむ、たしかに村の顔となるマスコットキャラクターが必要だというアイディアは良かったと思うのじゃ。しかしクーちゃんでは弱いのじゃ」
「いや、俺最強だけど」
「そういう意味じゃないのじゃ!」
クーゲルのズレた最強アピールにツッコミを入れるアルア。
「そこで村周辺で現れる魔物をマスコットキャラクター化するのじゃ! 妾の技術があれば、安全かつ可愛らしい姿に品種改良することも可能! そして品種改良したモンスターを捕獲するレクリエーションを名物にすればとても効果的なのじゃ!」
「へー、悪く無さそうだな」
クーゲルは思ったよりもまともなアイディアを出すアルアに感心する。
「そしてモンスターの捕獲には、投擲してぶつけるだけでいいボールを使うのじゃ!」
「ん?」
「ボールの色は縁起が良いので赤と白が良かろう!」
「ちょっと?」
「そうやって捕まえたモンスターはボールに入れたままポータブルに持ち運び可能となる! ポータブルモンスター、ちぢめてポタモンと呼ぶのが良かろう!」
「はいアウトおおおおおお!!!」
スパァンッ!! とアルアの頭をハリスカリバーで引っ叩くクーゲル。
「……痛いのじゃ」
涙目のアルア。
「何があかんかったのじゃ?」
「いや、パクリは駄目だろ」
「どこがじゃ! ポータブルモンスターなんぞ生まれてこのかた見たことないじゃろ!」
「見たことあるやつばっかの世界があるんだよ! いいから大人しくポタモンはやめとけ!」
「ぬうう……クーちゃんがそこまで言うなら仕方ないのじゃ……」
というわけでポタモンは廃案となった。
「しかし、そこまで言うならクーちゃんはどんな特産品が良いと思うのじゃ?」
「フツーに村で昔から作ってるもんでいいんじゃないか? 無理して新しいもの作る方がリスクも高くて良くないと思うけど」
「正論のじゃ……」
面白くないことを言うクーゲル。
「じゃが、一発ドカンと当てる為には何か目新しくて珍しくて面白くて人目を引くすごい特産品を考案する必要があるじゃろ!!」
「一発ドカンと当てる必要があるかどうかまず考えるべきだと思うけどな? まあ、ちょっと考えてみるか」
つまんない正論をかましつつも、アルアの話に乗ってやるクーゲル。
そして少し考えたあと、良いアイディアを思いついたらしくポンと手を打つ。
「確か、ウチの村の裏山って聖剣があるって伝説があるんだよな?」
「そーいえばそんな話もあったな。でもあれ、クーゲルが引っこ抜いて使ってんじゃん」
ルーデがクーゲルの持つハリスカリバーを指差して言う。
「でもこれが聖剣だなんて誰も信じないだろ? だから聖剣があるって話はまだまだ利用出来ると思うんだよな」
「なるほどのじゃ!」
感心したように頷くアルア。
「例えば女神が世界を創造した後に、自分を大樹に変えて眠りについたのがこの山という設定でいくのじゃ! そして聖剣は女神の杖が変化したもので、大樹の根本に刺さっておる設定でいこう! この聖剣を探しに行くレクリエーションを『聖剣伝説』と名付けて広めればガッポガッポなのじゃ!」
「だからアウトだっつうの!!!」
スパーンッ! とハリスカリバーでアルアを引っ叩くクーゲル。
「のじゃ……? 何が駄目だったのじゃ……?」
「あー、とりあえず聖剣伝説は直接的だからやめような?」
涙目のアルアに、さすがに悪い気がしてきたクーゲルは妥協点を提案する。
「ふむ。確かに直接的すぎるのも考えものじゃの。では、クーちゃんが良い名前を考えるのじゃ!」
「ええ……聖剣めぐりツアーとか、わかりやすいのでいいんじゃないの?」
つまんねー名前を提案するクーゲル。
「まあ、確かに学のない冒険者ごときでもパッと分かる名前であるのは重要なのじゃ」
「ちょっと?」
冒険者のクーゲルとルーデを前にして、なかなか挑戦的な発言をするアルア。
「よし、名前はこれで決定して良いとして、肝心の聖剣と大樹を作りに行くのじゃ!」




