02 相性最悪の二人
「ところでお主、特産品を作るとはなかなか良いアイディアじゃな。名は何というのじゃ?」
「あ? メシ屋ごときに名乗る名なんかねーよ!!!」
バシン! と地面から土を拾って投げつけるルーデ。
「……何故、妾はこんなに嫌われてるのじゃ?」
「ああん? 低賃金で飲食店で働いてるよーなヤツは実質社会の奴隷だろーが?」
「だいぶ思想が強いのじゃ……」
従業員相手には態度がデカくなる最低なルーデに困惑するアルア。
「と、ともかくお主ののび~る醤油瓶は売れるポテンシャルはあると思うのじゃ! この調子で特産品をどんどん考案するのじゃ!」
「メシ屋が仕切ってんじゃねー!!!」
バシン! と直接アルアを殴るルーデ。
さすがにこれにはキレたアルア。
「……親父にもぶたれたこと無いのにじゃ!!」
「でも真地女さんにはぶたれたことあるんじゃねーの?」
無粋なツッコミをするクーゲルを置いて、アルアとルーデの戦いが始まる。
「通信教育で習ったカンフーで修正してやるのじゃ!!」
「あ? そんじゃあアタシは伝統派空手じゃい! 腹で砲弾でも何でも受け切っちゃる!!」
「いや、色々混じって間違ってるぞルーデ」
ルーデの勘違いはともかく、アルアのカンフーとルーデの知ったかぶり空手による戦いが始まる!
「……お前ら、満足したか?」
「「ふぁい」」
二人の争いが泥沼化したので、クーゲルが両方を顔面パンチで陥没させて戦いを集結させた。
「じゃあ、二人仲良く特産品の開発、できるな?」
「「ふぁい」」
こうして顔面陥没したまま、特産品の開発が始まる。
「じゃあメシ屋、まずはアタシのアイディアからだ」
「うむ、任せるのじゃ」
「うちの村って言ったら、やっぱクーゲルだろ?」
「否定はできんのじゃ」
「まあ、一応高ランク冒険者だし顔っちゃあ顔なのか?」
言われてみれば、村の外から見た時にクーゲルは有名人であると言えた。
「だからクーゲルを商品化したら売れると思うぜ!!」
「確かにのじゃ!」
「そうかなあ」
疑いながらも止めはしないクーゲル。
「つーわけで、これがクーゲルおかき。こっちがクーゲルまんじゅう。で、最後のこれがクーゲルのはなくそ」
「最後のゴリラみてーな扱いだけは気に入らねぇなあ!?」
とはいえ、お土産としてはある程度理解できるラインナップである。
「ふむ。クーゲルおかきは着色料でクーちゃんの髪と同じ色に染めるのじゃ。そしてクーゲルまんじゅうは瞳の色。クーゲルのはなくそは……まあ、うんこ色でいいじゃろ」
ルーデの出した特産品候補を、次々と薬品で染めていくアルア。
赤いおかきに緑のまんじゅう、そしてこげ茶色のはなくそ。
「なんか、最悪だな」
「のじゃあ……」
クーゲルにちなんだせいで不味そうになった。
「でもこれって素敵かも♪」
言いながらルーデはクーゲルグッズを空へと放り投げる。
すると上空でクーゲルグッズが弾け飛び、キラキラと光りながら塵となって消えた。
「わーきれい!」
「じゃねーよ、どんな原理でそうなるんだよ」
勝手にクーゲルグッズを塵にして光らせて悦に浸るルーデに、ハリスカリバーを抜いてバシンッ! とツッコミを入れるクーゲル。
「ど、どうやってただのおかきとおまんじゅうとはなくそが光る塵になったというのじゃ……魔力すら感じなかったというのに……恐ろしいヤツじゃぁ……!!」
そして原理不明の現象に恐れおののくアルア。
「く、クーちゃんよ。人間とはかくも恐ろしい意味不明な力を使いこなす種族なのかじゃ?」
「いやー、これはルーデが例外だと思うけどな」
「じゃあ、クーちゃんはこんなことは出来ないのじゃな?」
出来ないと言われると、最強チート持ちとしてはムッとするクーゲル。
「いや、やろうと思えば出来るけどな」
言って、クーゲルはルーデの頭を掴んだ!
「どっせええええい!!!」
「うおおおおおおお!!」
そして力いっぱい投げる!
空高く舞い上がったルーデは……なんと上空で弾け飛び、光の粉になって消えた!!
「は、はわわわ……人殺しじゃあ……!!」
ビビるアルア。
「ほら、俺にも出来た」
「あー、楽しかった!!」
出来たことを自慢気にクーゲルがアピールすると同時に、地面からルーデがボコッと生えてくる。
「え、どういう理屈なのじゃ? まさか、上空に投げたのは偽物で、本物は地面の下に……」
「いや? 普通にルーデ本人を投げて、上空で爆発させたら地面から生えてきただけだぞ?」
「理屈がおかしいのじゃあ……!!」
意味不明な現象に頭を抱えるアルア。
「要するに因果律を強制的にイジって、関係ない原因から望んだ結果をもたらすってだけの能力だからな。最強の俺なら簡単なことよ」
「え、化け物のじゃ……」
説明されるほど、クーゲルがヤバいやつにしか見えないアルア。
「まあ、普段はこんなことしないから安心してくれ、アルアさん」
「わ、わかったのじゃ。絶対その意味不明な力を妾に使うでないぞ? 絶対じゃぞ!?」
「フリになってるが?」
恐れおののくことですらあるあるネタに収束するアルアであった。