02 小学生でもやらない
「で? すげーもんって何だよ?」
ルーデに連れられて、村の裏手にある山の近くまでやってきたクーゲル。
「ふっふっふ、見て驚くなよ?」
「いや驚くよ。すげーもんなら」
律儀にツッコむクーゲル。
一方ルーデは、草むらに棒切れを突っ込んで何かを探す。
「う~~~ん……あった、これだ!」
じゃーん! と、棒に突き刺したなにかを掲げる。
「見ろ! ドラゴンのうんこだぞ!」
「ブッ!!?!?!? なんてもん持って来てんの!?!???」
あまりにも予想外なブツを差し出されて吹き出すクーゲル。
「はははっ! これ肉屋のじーさんの家に塗りたくってやろーぜ!」
「やめとけ! 普通に迷惑だ!!」
「あ? じゃあクーゲルおめーが有効活用する方法考えてみろよ?」
「無理だろ、うんこだし」
「じゃあおめーは自分がうんこだとしても同じことが言えるのかよ!!!!」
「だとしても、じゃねーよ。うんこだとしたら俺自身がおかしいわ」
いつも通りのやり取り。ちなみに、この間にもルーデはクーゲルのスネをげしげしと蹴っているが、クーゲルが最強なのでノーダメージで済んでいる。
「うぅ……アタシは悲しいぞ。うんこの気持ちもわからないようになって。クーゲル、お前をそんな子に育てたやつは誰だ!!!」
「さっき会っただろ」
「それよりも腹すかねーか?」
「話題転換はえーな」
が、いつものことなので軽くツッコんだだけにしておくクーゲル。
「ってかお前朝ごはん食ったっけ?」
「クーゲルにドラゴンのうんこ見せたくて、つい♪ てへっ♪」
「うんこ見せたかったせいで全然かわいく見えねぇ……」
ジト目でルーデを見るクーゲル。
「ま、そんなことより腹だよ腹! なんか食おーぜ!」
言って、ルーデはうんこのあった草むらをガサガサする。
「これこれ! ちょうどいいのがあったんだよな!」
ルーデが取り出したのは卵であった。
「ほらクーゲル。ゆで卵とかにしてくれよ」
「いいけどさ。どっから拝借してきたんだよその卵。見たこと無い模様してるけど?」
クーゲルの指摘どおり。ルーデが持っている卵は妙に大きく、かつ色も鮮やかな紫や赤が模様として入っており、とても食用の卵とは思えない。
「ん? いやー運が良くてさぁ。ドラゴンのうんこ探してて、見つけたところにちょうど落ちてたんだよ。うんこだけにな!」
「ふーん……って、ちょっとまてよ」
クーゲルは大変なことに気づいてしまう。
「ドラゴンのうんこをさがしてたんだよな?」
「ああ!」
「で、見つけたところにちょうど落ちてた、と」
「そうだよ」
「じゃあ、ドラゴンのうんこのすぐ近くに見たことないような卵があったってことだよな?」
「だから、そう言ってんだろ?」
「てめ~~~~~!!!! 馬鹿だろッ!!!?!?!?」
「ブヘッ!!」
クーゲルはつい気合の入ったツッコミを入れてしまい、ルーデの頭を引っ叩く。
「そんなもんセットで落ちてるなんて、ほぼ確実に卵の方もドラゴンじゃねーか!!!!」
「あ? じゃあ美味いのか?」
「ちげーよ! いや、美味いのかもしれないけどさ! そうじゃなくて、卵を奪われたドラゴンが――」
そこまでクーゲルが言ったところで、上空に暗い影がさす。
「――怒って、卵泥棒を追いかけてくるかもしれないって言いたかったんだけどなぁ」
遅かったかぁ。とボヤキながら。
クーゲルが見上げた先には。
「――貴様らか。我が子を攫った人間共は!!!!」
それはもう立派な鱗を持ったブラックドラゴンが飛んでいたのである。