05 研究所の最深部
なんやかんやで最深部についた。
「ふむ、何故か記憶がおぼろげじゃが、クーちゃんとバイトが頑張ってくれたお陰でここまで来れたのじゃ!」
「豹変中の記憶が曖昧になるのもありがちだなぁ……」
「それよりクー坊。ここが正念場やで」
気の抜けているクーゲルに忠告するバイト。
そしてその言葉どおり、研究所の最深部にはなんかロボットっぽいやつが待ち構えていた。
『ついにここまで来てしまいましたか』
「え、ロボが喋った!?」
「うむ。あれが迎撃プログラムの最終決戦用アバター、その名も鳴龍じゃ!」
「……で、そのアバターの性能は?」
「ハウリング†ワイヴァーンじゃ! ヤツはユキオスキー粒子による通信妨害機能は当然として、全身サイコーフレーム製なので精神感応を起こしてミラクルを起こす機能があるのじゃ!」
「なんで急にパクリ路線になるの!? ねえ!!?」
起動する戦士っぽい感じのことを言い出すアルアについツッコむクーゲル。
「ともかく、奴は高性能なアバターじゃ。正面から戦って勝ち目は無い。故にお主らには時間稼ぎをしてもらいたいのじゃ」
「時間稼ぎ?」
「うむ。妾がその間に、AIの初期化プログラムを組み、実行するのじゃ!」
どうやらちゃんとハウリングワイヴァーンを倒す用意はある様子のアルア。
『――ふふ、我が創造主ながら愚かですね』
「なんじゃと?」
『貴方は知っているでしょう? 私のプログラムは完全迎撃。いついかなる時でも全てを迎撃し、あらゆる存在の侵入を拒む』
「ま、まさかなのじゃ!」
『あえてこちらから訊きましょう……一体いつから、私が暴走していると錯覚していましたか?』
要するに単なるプログラムミスである。
「まあ、初期化プログラムが駄目ならば普通に修正プログラムを組むのじゃ」
『なっ! 卑怯な!!』
「創造主がアホならAIもアホになるのかなぁ」
「せやろな、クー坊」
知略を張り巡らせるっぽい雰囲気でアホな会話をするアルアとハウリングワイヴァーン。
それがあまりにも間抜けすぎるため、クーゲルもバイトも気が抜けていた。
そのせいで、隙を突かれることになる。
『かくなる上は! 最終奥義! サイコーシャード神拳!!』
ハウリングワイヴァーンがすごいわざをつかう!
抜き手を振るうと、そこから緑色の波動みたいなのが出て、周りに広がっていく。
その緑色の光に触れたエアレイドマシン、テレポートスターはまるで時が巻き戻るかのようにバラバラに分解されてしまう!
「あああああああああ!!!!!!! 妾のエアレイドマシンがぁぁああああ!!!!」
「ナイスだ迎撃プログラム!」
悲しむアルアと、これで著作権グレーなアイテムが一つ消えたことに喜ぶクーゲル。
『ふふふ、笑っていられるのも今のうちです。この状態になった私はいつか時間さえ支配することが出来るのです! ああ! 時が見える……!』
「それは駄目だ迎撃プログラム!!」
そして著作権グレーな匂いを感じ取ったクーゲルは、咄嗟にハリスカリバーを呼び出し手に持って、バチコーン! とハウリングワイヴァーンを叩いた。
『え……時間操作して永遠に到達できない時空の壁を生み出してたのに、なんで普通に叩けるんですか貴方……?』
「俺、最強だからね」
まあ時間を支配したぐらいで最強クーゲルの敵にはなれないというわけである。
『理不尽なんですけど……』
「クーちゃん……お主、空気とか読めんのか? ここは強敵相手に共闘したり苦戦したりしていい感じに戦うところじゃろ?」
「ホンマおもんないチート能力やな……」
「あーもう!? なんで助けてやったのに俺が責められてるかな!?」
強すぎるが故の悲しみというやつである。
「とにかく、さっさと片付けますからね!」
『きゃあ! AIごろし!』
というわけで、クーゲルは何の感慨もなくさくっとハウリングワイヴァーンを破壊するのであった。




