04 最深部への直通通路
地下に降りると、クーゲルも驚く。
「地下にこんな広い空間があったのか……」
「うむ! 妾の技術で空間を拡張してあるのじゃ! 最深部までは徒歩じゃと一時間はかかるのじゃ!」
(空間を拡張してあるのもあるあるネタか……?)
ツッコんでいいか微妙なラインで、クーゲルはつい考え込んでしまう。
そんなクーゲルをよそに、アルアは勝手に突入準備を進めていく。
「安心せい。最深部までは直通通路があるのじゃ。当然、徒歩ではなく移動手段も用意してあるぞ」
言って、アルアは胸の谷間からカプセルを一つ取り出し、それを前に投げ捨てる。
すると、床に落ちると同時にカプセルの中から星型の大きな乗り物が出現した!
「これが妾の開発したアクションレーシングマシン、その名もエアレイドじゃ!」
「ん?」
「そしてこのエアレイドマシンは、妾が開発した中でも特にスタンダードな性能を持つエアレイドマシン。まるでテレポートでもするかのように素早く移動出来る為、テレポートスターと名付けたのじゃ!」
「アウトだよなぁ!? それ絶対著作権アウトだよなぁ!!?」
さすがにどう見ても某企業の名作レースゲームに酷似したマシンには突っ込まざるをえないクーゲル。
「さてクーちゃん。このテレポートスターは妾が操縦する。お主とバイトは二人で直通通路の迎撃プログラムからテレポートスターを守ってほしいのじゃ!」
「なるほど。迎撃に失敗すると?」
「エアレイドマシンはコウゲキを受けてタイリョクが無くなると爆発四散して消滅するように作ってあるのじゃ!」
「やっぱパクリだよなぁそのマシン!?」
まあパクリかどうかはともかく、乗らないと話が進まないので乗ることにするクーゲル。
テレポートスターに三人が搭乗すると、バイトがクーゲルに告げる。
「クー坊、気ぃ付けや」
「はい?」
「ウチの店長はな……ハンドル握ると性格変わるタチやねん」
「ありがちなやつ~~~~~ぅ!!」
どうやらちゃんとあるあるネタを欠かさないアルア。
「それではゆくのじゃ!」
言って、アルアはハンドルを握る。
「――ブッ飛ばして行くぜェェェエエェェッ!!」
そしてテレポートスターは、エアレイドマシンなのでハンドルを握るだけで自動でアクセルが掛かる!
キュルルルル! と独特な音を立てながら、床から少し浮いた状態で発進するテレポートスター。
そして直後、迎撃プログラムが作動する。
『警告。警告。これより先は進入禁止エリアです。退去しない場合、速やかに排除します』
「望むところだぜぇぇえええッ!!」
AIっぽい音声で警告されるが、アルアは気にする様子も無く突っ走る。
「来るで、クー坊!!」
「はい!」
『退去の意思は無いと見做します。これより迎撃モード、星型魔力弾による迎撃を開始します』
そしてとうとう、迎撃プログラムが発動する!
すると通路の至る所に銃口っぽいやつがシュインッと出てきて、そこから星型の魔力で出来た弾丸が発射される。
「――後ろはウチに任せとき!」
テレポートスターを追うように飛んでくる追尾型の星型魔力弾には、バイトが対応する。
「『給水!』そして『洗浄』!」
バイトが魔法を発動する!
「って給水と洗浄!?」
「気にするなクーちゃん! バイトは生活魔法が得意なんだぜェェェッ!!」
アルアの言う通り、バイトが発動したのは飲水を少しだけ生み出す給水の魔法と、水をかき混ぜて洗濯を楽にする洗浄の魔法。
普通なら、攻撃に使うような魔法ではない。
しかし! バイトは普通じゃなかった。
給水で生まれた水はまるで津波のように星型魔力弾へと押し寄せ、洗浄によって暴風のように掻き混ぜられる!
荒れ狂う巨大な渦潮が横倒しになって星型魔力弾を飲み込み、破壊していく!
その軌道上に生じる真空状態の圧倒的破壊空間は、まさに歯車的渦潮の小宇宙!
「これがウチのスキル、『生活魔法レベルEx』や!!」
「す、すげ~~~かっけぇ~~~~~~~~~~!!!!」
なんかちゃんとしたチートスキルっぽいチートを持っているバイトに感動してお目々がキラキラしちゃうクーゲル。
「……ってクー坊、前方の迎撃せんでええんか!?」
「あ、大丈夫です。自分最強なんで」
クーゲルが最強過ぎて、前方から飛んでくる星型魔力弾はテレポートスターに近づく前に勝手に自壊して消滅していた。
「ほら、なんか攻撃っぽいやつって自分に近づくこと出来ないんですよ。俺が最強すぎて」
「えぇ……お前のチートおもんな……」
「くっ……! 自分のスキルがなろう系主人公みたいだからってマウント取りやがって!!」
ふつーに悔しがるクーゲルであった。




