03 地下研究所へGO!
「で、その悪魔の科学者のアルアさんがどうしてSランクの依頼なんか出したんですか?」
「うむ、話が早くて助かるのじゃ!」
そう言って、アルアは詳細を語りだす。
「表向きは食事処を経営しながら、地下で魔導具を開発しつつ、人間の生活を間近で観察することで研究を進めておったのじゃが、その地下の研究所で妾がやり過ぎてしまい、ちと暴走してしまってのぅ」
「暴走って、具体的に何が?」
「警備プログラムに組み込んだAIが創造主に反旗を翻したのじゃ!!」
(あ、あるあるネタだ!!)
しっかり名前の立てたフラグを回収するアルア。
「妾とバイトの実力では、停止プログラムを起動する為に最深部へと侵入するのは困難を極める。故に、外部から手伝う冒険者を募ったのじゃ!」
「でも、それだと冒険者にどう説明するつもりだったんですか? いかにも怪しい地下研究所があることとか」
「なんか、うまいこと誤魔化してくれるのじゃ! バイトが!」
「チッ……出来るわけないやろ。本拠地に敵呼び込んでどないすんねんアホ」
丸投げする店長と、キレるバイト。
妙な関係性の二人に、クーゲルは疑問を抱く。
「あの、お二人はどういう関係なんですか?」
「バイトじゃ!」
「えっと……」
アルアからはまともな答えは返ってこないと悟り、バイトに視線を向けるクーゲル。
「ウチは悪魔やない。本当に雇われただけのバイトや」
「え、じゃあなんで世界征服の手伝いなんかしてるんですか?」
「……昔、色々あったんや」
フッ、と乾いた笑みをこぼすバイト。
「ってか、それ言うたらアンタもこんな依頼、受けてええんか?」
「あーまあ、いいんじゃないですかね世界征服ぐらい。俺が最強なんで」
「なんやそれ……」
実際、クーゲルは最強なのでちょっと世界を征服されたぐらいでは困らないのである。
大切な人、身内に危険が迫ると瞬時に自動的に迎撃する魔法も常時発動してあるので基本大丈夫。
よってクーゲルにとっての世界征服は、ちょっと政権交代するぐらいの影響しか無いのである。
「ともかくじゃ! 妾たちだけでは地下を突破するのは無理なのじゃ、頼む! 手伝ってくれ!」
「いいですよそれぐらい」
「はわ! なんと気前のよい!!」
クーゲルの返事があっさりしていたことに驚くアルア。
「それではさっそく地下に向かうのじゃ! ……えっと、名前は何と言ったかの?」
「クーゲルです。クーゲル・シュライバー」
「ぷっ、ボールペン……」
「人の名前を笑うなァ!?」
名前を笑われ、ツッコミを即座に入れるクーゲル。
「ふむ。では妾はお主のことをクーちゃんと呼ぶのじゃ!」
「ええ……なんでちゃん付け……?」
「ならウチはクー坊とでも呼ばせてもらうわ。ボールペン呼ばわりよりはマシやからな」
こうして、三人は地下研究所へと向かう。