02 お掃除クエスト
まあなんやかんやありつつも、普通に食堂でご飯を食べた翌日。
クーゲルは冒険者ギルドに奇妙な依頼が出ているのを見つける。
「……お掃除のクエストなのに、難易度がSランク?」
そう。お掃除をするだけのクエストなのに、その難易度指定がSランクになっているのだ。
「しかも依頼主がアルア・ルネータ……めし処の店長じゃねーか」
もう厄介事の匂いがぷんぷん漂っていた。
そして、嫌そうな顔をしているクーゲルを見たリンダが背後から忍び寄る。
「ふふふ……なるほどこの依頼を受けたく無さそうですねクーゲルさん!」
「あー、まあ確かに」
「じゃあ受領しちゃいまーす! もう受けちゃったんでこの依頼ちゃんとこなしてくださーい!! ついでに失敗して命とか落としてくださーい!」
「ふつー掃除で死なないよな? いや、それを言ったらSランクな時点でふつーじゃないんだけどさぁ……」
とまあ、リンダの魔の手によって、強制的にお掃除依頼を受けることになるクーゲルであった。
で、そのままの足でめし処『†煉獄†』へと向かう。
店の表側は鍵がかかっていた為、裏口の方へと回る。
そしてドアをノックしようとしたところで――ドカァン! と大きな音を立ててドアがぶち壊れ、中から寝巻き姿のアルアが吹っ飛んできた!
「うぎゃあああなのじゃああ!!」
「……この、クソ店長がぁ……!!」
そして、怒り心頭といった様子のバイトがアルアを追いかけて裏口から出てくる。指ポキしながら。
「あん? アンタ……もしかして、ウチの依頼を受けよった冒険者か?」
「あ、はい。クーゲルといいます」
クーゲルに気づいたバイトは、アルアをシメるのを途中で止めてクーゲルに話しかける。
「すまんな。依頼はアホの店長がなんも考えんと勝手に出したんや」
「そうだったんですか。それでSランクとか、適当な難易度が設定されていたんですね」
「……いや、難易度はそんなもんやと思うわ」
苦々しい顔で言うバイト。
そこで、急に元気を取り戻すアルア。
「バイトよ! もはや暴走した地下研究所は妾達だけでは収集がつかぬ! こうなれば背に腹は代えられぬのじゃ! こやつに事情を話し、協力してもらう方が良いじゃろう?」
「……まあ、ウチでも今の地下はどうにもならんのは事実やけど」
言ってから、諦めたように息を吐くバイト。
「はぁ、しゃあない。ちゃんと店長が説明して、説得するんやで?」
「任せるのじゃ!」
勢いよく胸を叩いてから、クーゲルに向き直るアルア。
「さて、冒険者よ。妾の名はアルア・ルネータ。普段は田舎の食事処の美人店長を装っておるが、その実体は!!」
言うと、指をパチン! と鳴らすアルア。
途端、アルアの身体の周りで何かの魔法が発動する!
そして魔法が終わると――なんと、アルアの姿が変わっていた!
「魔界から地上を征服するためにやって来た、悪魔族の科学者なのじゃ!」
そう、アルアの頭には角が二本。そして背中には悪魔っぽい翼が生えていたのだ!
「そっすか」
「はうあ!? 反応が薄いのじゃ!?」
「いや、今更そんぐらいじゃあ驚かないというか何というか」
あるあるネタを匂わされた時点で、ありがちな設定の一つや二つはぶち込んで来るだろうな、と覚悟の出来ていたクーゲルに動揺は無かった。
それにヤクザ風聖女やら隠しきれてない暗殺者やら変態ゴーストやら頭のおかしい幼馴染に囲まれているクーゲルには、そういう設定が盛られてる系の人に対する耐性があった。




