04 まあでも、なんとかなるか
(しかしまあ……ここまで露骨に暗殺者っぽくて無礼な発言をしてるヤツを、テスタが許すわけないよなぁ)
クーゲルはそう思って、テスタの方に視線を向ける。
「……なるほど」
深く頷いてから、テスタは語りだす。
「受付嬢として、ギルドで一番強い冒険者を殺せるほどの実力を求めている、ということはつまり。リンダさまは冒険者に守られる側ではなく、時には守る側にも立ち、対等でありたい。それこそ相手を殺すことさえ出来るほどに拮抗した実力でもって。――違いますか?」
「えっと……? はい、たぶんそういうことだと思います……?」
「なるほど、感銘致しました!」
ズコ~ッ、とズッコケるクーゲル。
「待てテスタ! こいつ絶対よくわかんねーから生返事してるだけだぞ!」
起き上がって、慌ててテスタにツッコミを入れるクーゲル。
だが、テスタは聞く耳を持たない。
「いくら兄弟の言うことでも、ワシが自ら認めた漢のことは悪う言わせへんで!」
「あ、人前でも俺に対してはネコ被らないんだ」
どうでもいいとこが気になり、ツッコミを入れてしまうクーゲル。
そしてちょっと嬉しくなっちゃったのは秘密である。
「……まあでも、なんとかなるか」
村の受付嬢がヒロインで、自分を暗殺対象として狙っている暗殺者だったとしても、クーゲルは最強すぎるので大した問題では無いのだ。
「何はともあれ、リンダさん。ようこそ俺たちの村へ。これからよろしくな!」
クーゲルは握手のために右手を差し出す。
「はい! よろしくお願いしますクーゲルさん!」
「あ、俺の名前覚えてくれたんだ」
「はい、なんとか思い出せました」
こうして無事、クーゲルの名前もどうにか覚えることが出来たリンダは、村の一員として迎え入れられることとなるのであった。
ちなみに、握手ついでにしっかり毒針とか刺されたが、無敵なので当然無事だった。
一方その頃のルーデ。
(クーゲル殺そうとするとか、絶対ヤバいやつじゃん……)
めちゃくちゃビビって物陰に隠れていた。
「あれ、ルーデ。なんでそんなとこに隠れてんだよ」
リンダとの挨拶を終えたクーゲルが目ざとく見つけてくる。
「いや、なんか殺すとか言っててやべーじゃんってなってさ……」
「人のこと言えねーよな!? お前も昨日死ね! とか言って真っ赤に焼けた石投げつけてきたよなぁッ!???!?」
「いや、だってクーゲルそんなんじゃ死なんじゃん……」
「まあ、そりゃそうだけど」
「どうせ無傷だし良いかなって」
「お前、だいぶ俺のこと信頼しつつ舐め腐ってるな?」
というか、焼けた石投げつける方も無傷とはいえ大して気にせず普段どおりにしてる方も大概である。
「っていうか、なんでお前がビビるんだよ? 殺されんの俺なんだけど?」
「いや、とりあえずなんかやべーヤツってこえーじゃん?」
「じゃあまず自分にビビれよ」
「??????????」
「マジでわかってねー顔してんなぁ」
びっくりするぐらい分かってなさそうな顔をするルーデ。
「そもそも、俺って無敵だろ?」
「うんまあそうだな」
「じゃあ死なないじゃん」
「だろーな」
「で、俺しか狙われてないわけじゃん?」
「うん」
「じゃあ何の問題も起こらんよな?」
「……たしかに!!」
納得するルーデも、納得させようとするクーゲルも大概である。
「じゃああいつタダの受付ってことか! 雑魚じゃん!! アロエとか食わせてやろーぜ!」
「アロエの件はよく分からんがそういうこと。いちいちビビんなくていいから」
と、いうわけで。唯一リンダにビビっていたルーデも、無事リンダを舐め腐ることとなった。




