03 ターゲット
「――それでは、最後にわたくしの番ですね」
どこからとも無く、聞き覚えのある声で、聞き慣れない口調のセリフが響く。
びっくりしたクーゲルが視線を向けると、そこにはなんかおしとやかな感じが増した雰囲気をかもしだすテスタが居た。
「わたくしはこの村の教会の代表を務めております、清光会の会長、テスタロッサ・サクライでございます」
「えぇ……誰ぇ……?」
丁寧にお辞儀をする、なんかおしとやかなテスタに、違和感がありすぎて恐怖すら覚えるクーゲル。
「これはご丁寧に、どうもありがとうございます。ええっと……テスタロッサ様ですね? たしか教会では聖女も務めていらっしゃって、この村のトップクラスの実力者かつ高い権力の持ち主で、任務遂行の障害になりうる要注意人物の……」
「なに!? 要注意人物ってどういうこと!?」
口を滑らせたリンダに、クーゲルは声を上げて驚く。
「あっ! いえ、受付嬢としての話です。受付嬢として任務遂行の障害になりうる要注意人物として警戒してるだけです!」
「聖女様が障害になりうる受付嬢ってありえるかなぁ!??」
さすがに違和感がありすぎて、ツッコミを入れるクーゲル。
「まあまあ、そんなに気にしないでくださいよ。えっと……村で一番の冒険者さん」
「名前覚えてくれてない!?」
「あの、失礼ですがお名前は……?」
「もう名乗ったよ! クーゲル・シュライバー!!」
再度名乗ってもらうリンダだったが、それでも難しい表情は変わらない。
「ふむ、なるほどぉ……クーゲ……えっと……難しいんで、ターゲットって呼ばせてもらってもいいですか?」
「なんで!?? クーゲルより長くなってるし複雑じゃん!!! っていうか俺のこと何だと思ってんだ!??!?」
「あ、いえ。単に受付嬢としてです。あくまでも受付嬢として貴方のことをターゲットだと認識しているだけですので」
「どういう認識か想像つかねぇ……」
クーゲルは頭を抱えて唸りだす。
「ではターゲットさん。さっそくですがお願いがあるんですが」
「……はぁ、何ですか?」
「受付嬢として、ターゲットさんのステータスとかを確認したいと思いまして。教えていただけませんか?」
「なんで俺だけ……? まあいいけどさ」
と言ってクーゲルは、鑑定系スキルとかを掛けられた時用に偽装スキルで用意している『程々に強いヤツっぽいステータス』をリンダに伝えた。
「なるほど……これぐらいのステータスなら私でも頑張れば殺せそうですね!」
「殺す!? なんで!?!??!?」
「あ、いえ。受付嬢としてです。受付嬢としてもしもターゲットさんを殺す機会があった場合を想定しただけですので」
「受付嬢がギルドの冒険者殺したりしないよね!??!?」
リンダの発言から、クーゲルはおおよそのリンダの素性を察した。
(こいつ……暗殺者のクセにバカだから正体隠せてない系のキャラだ!!!!)
というわけで、隣国から送られてきた暗殺者、ノータリンデ・バッカスの正体は一瞬で判明してしまったのである。