02 新しい受付嬢
ところ変わってクーゲルの村。
冒険者ギルドに新しく受付嬢が来るってことで村中で話題になっていた。
「どんなヤツがくんだろーな。試しに土投げて様子見るか?」
「きったねぇだけだろ」
噂の受付嬢について話をするルーデとクーゲル。
「美人で巨乳のえっちなお姉さんであると良いであるな!」
「おっさんみてーな願望丸出しにしてんじゃねーよ」
そしてシリーもまた受付嬢について話をする。
律儀にツッコむクーゲル。
「新しゅう来るっちゅうその受付嬢。どないなもんかワシが見定めたろうやないか」
「え、あの……穏便に頼むぞ?」
「場合によるわ。漢として相応しゅうない輩やったら、その時は――」
「やめて!? 受付嬢なんだから!!」
さらにテスタまで、妙に気合を入れた状態で付いてきている。
そしてやっぱりツッコミは忘れないクーゲル。
「はぁ……出迎えるだけのはずなのに、不安になってきた」
といって、クーゲルは頭を抱える。
実はクーゲルは村の冒険者ギルドで一番の実力者というのもあって、新しい受付嬢の出迎えを任されたのだ。
二番目の実力者であるシリーと、三番目の実力者、というか耐久だけは一番という説もあるルーデも同様の理由で村の入り口まで来ている。
そしてテスタは、先程言ったとおり受付嬢をなぜか見定めたがってクーゲルについてきたのだ。
トラブルの匂いを感じながらも、諦めてクーゲルは受付嬢を待つ。
すると、遠くから人が近づいてくる気配を感じる。
「お、来たみたいだな」
クーゲルは言って、村の外へとつながるオンボロの街道へと視線を向ける。
すると――受付嬢って感じの服装の、暗い紫色のポニーテールにピンクの瞳の女性が、なんかでかいカエルに乗ってすごいスピードで村に近づいて来ていた。
「あぶな~~~~い!!」
「うおっ!?」
そしてカエルは速度を落とすこと無くクーゲルに衝突!
クーゲルは無敵なので無事だが、すごい衝撃でドオン! とでかい音が鳴った。
「……チッ」
「え、舌打ち?」
クーゲルは受付嬢っぽい人が舌打ちするのを聞き逃さなかった。
しかし、受付嬢っぽい人は何事も無かったかのように笑顔を浮かべ、
「すみません! 寝坊して遅れそうだったので、児雷也に乗って急ぎすぎてしまいまして……お怪我はありませんでしたか?」
「あ、はい。っていうか児雷也?」
「はい! 受付嬢専用の召喚獣です!」
「へぇ……受付嬢ってそういうのもあるんだ」
謎に忍者っぽい召喚獣が与えられてるんだなぁ。と、ギャグ漫画世界の住人っぽいヒロイン達によって鍛えられたクーゲルはスルーする。
「では改めまして。私が今回、こちらの冒険者ギルドの新しい受付嬢として派遣されてきました、ノータリンデ・バッカスです! ぜひリンダ、とお呼びください!」
「……あ、どうも。村でいちおう一番強い冒険者のクーゲルです」
クーゲルは受付嬢のリンダに名乗りながら思う。
(名前が特徴的でクソデカカエルに乗って登場した美人受付嬢……絶対ヒロインだこいつ!!)
気~づいちゃったのである。
「へえ、あんたもリンダって言うんだ。アタシもリンダってゆーんだ」
「ちげーよ。お前の名前はラリルーデ・ヤクスードだろ」
「なるほど! よろしくお願いしますリンダさん!」
「いやだから! リンダじゃなくてラリルーデ!」
「な、なるほど……覚えるのが難しい……」
勝手に他人の名前を名乗るルーデに、クーゲルはしっかりツッコミを入れる。
が、その甲斐も無くリンダは普通に覚え間違えてしまう。
(こいつ……絶対バカだ……純粋なおバカ系お笑いキャラだ……)
そしてクーゲルは、リンダが馬鹿であることを確信した。
「とりあえず、ルーデさんって呼ばせてもらいますね!」
「おう! よろしくな受付女!」
さっそく名前を覚える努力を放棄するルーデも大概アホである。
「ちなみに、アタシがこの村で一番頑丈な冒険者だ!」
「は、はぁ……そうですか?」
「ふむ。そういうことなら、次は吾輩が名乗るのである」
ルーデのよく分からんノリに、シリーも乗ってくる。
「吾輩の名前はシリー・アーナン。この村で一番スケベな冒険者である!」
「ゴミみたいな肩書だなぁあああ!!!??」
スパアンッ! とハリスカリバーでツッコミを入れるクーゲル。
「あ~~~れえええぇぇぇ~~なのであるぅ~~~――」
シリーは見事に吹っ飛んでいき、どこかへと姿を消した。
「なるほど、変態の人がシリーさんですね。メモメモ……」
「あの、手の甲にメモしてもすぐ消えちゃうんじゃ……?」
何故か自分の手の甲にメモをしだすリンダに、しっかりツッコむクーゲルであった。