05 五分の兄弟
「これでワシとお前は五分の兄弟や」
「へ? いや、急に言われても……」
「よそよそしいやないか、兄弟」
「あの、テスタロッサさん?」
「テスタって呼んでくれや」
「……テスタ?」
「おう、兄弟!!」
嬉しそうにニッコリ笑うテスタ。その笑顔がしっかりヒロインらしく可愛かった為、つい目をそらしてしまうクーゲル。
「えっと、兄弟ってのは何が変わるんだ?」
「大したことやない。ワシとクーゲルが五分の兄弟やからな。清光会でワシと同じだけの力があるっちゅうことや」
「なんかとんでもねー権力を押し付けられてる!?」
クーゲルのツッコミも虚しく、テスタは五分の兄弟の契を撤回する様子は無かった。
「ちゅうわけや兄弟。今日は忙しいから退散するが、また会おうや!」
そうして、テスタは壊滅したヤクザの事務所から立ち去って征くのであった。
……なお、ルーデは終始ビビり散らかしていたので、常に物陰に隠れて「あわわわぁ……」とか言ってばかりであった。
そんなこんながあり、無事借金が無かったことになって村に帰ってきたクーゲルとルーデ。
特に問題もなく、いつもどおりの日々を過ごしていたが……数日後。
「クーゲル殿! 村に見知らぬ聖職者が大挙して押し寄せてきたのである!」
「あぁ……ついに来ちまったか……」
シリーの報告により、平穏の崩れる音を聞き取ったクーゲル。
押し寄せてきた聖職者達を確認しに向かうと――案の定、テスタとその配下たち、つまり『清光会』の面々であった。
「久しぶりやな、兄弟!!」
「あー、テスタ? これはどういうことなんだ?」
「組の頭だけ遠くに住んどるなんて不便やろ。せやから、清光会の本拠地を兄弟の村に移動しに来たんや」
「やっぱりそういう展開になったかぁ……」
テスタがヒロインだとわかった時点で、予測できた展開であった。
「清光会、というのはどういう組織であるか?」
シンプルな疑問を尋ねるシリー。これにテスタが答える。
「大層なもんやない。世間様に迷惑かけるようなヤンチャ者を集めて躾けるための、教会から派生した組織の一つや」
「まんまヤクザじゃないですかやだ~~~~~!!!」
思わずツッコむクーゲル。
「安心せえ兄弟。ウチはヤクはやらん。カタギ相手には殺しも暴力も禁止や。全うな昔ながらのシノギだけで回っとる組や。ショバ代は貰うが、他所のヤンチャな輩から守ったるで」
「典型的なヤクザ漫画の主人公が所属してる組のやつじゃん!!!」
つまり清光会とは、神さまを信仰している組織公認のヤクザというわけだった。
「ふーん、つまり傭兵団のようなものであるか?」
「そう思うてくれてええで」
「……ん? そう考えると意外とアリなのか……? いやいや、でも……」
ズレた解釈をするシリーと、それを肯定するテスタ。これによって、クーゲルも混乱しだす。
「ちゅうわけや兄弟。これからよろしく頼むで」
「「「よろしくお願いしやす!!!」」」
テスタに続き、配下の強面のオッサン達が一斉に頭を下げる。
これはもう、追い返せるような段階に無いとクーゲルも悟る。
「……わかったよ。これから宜しくな、テスタ」
クーゲルは右手を差し出し、テスタを握手を交わす。
こうしてなんやかんやありつつも、クーゲルの村に新しく清光会の会員という住人が増えたのであった。
テスタロッサ……なにものなんだ……?
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