04 居候になるためには
「まあともかく。これでシリーもここから出られるようになったんだろ?」
クーゲルが呼びかけると、快感に悶えていたシリーは起き上がって頷いた。
「うむ! クーゲル殿がご主人さまとなったお陰で、吾輩の活動範囲はかなり広くなったのである!」
「良かったな。じゃあ、あとは好きに生きてくれ」
「なっ!? そんな無体な! 吾輩を捨てるというのか!?」
「いや、自由になったんだから当然だろ」
「嫌である嫌である! 吾輩はクーゲル殿にもっといぢめてもらいたいのである~~~!!!」
「黙れ変態が!!」
「あふんっ♥」
クーゲルはハリスカリバー、改めハリセンでシリーを思いっきり引っ叩く。
クーゲルよりも攻撃力が低いハリセンを使ったお陰で、かなり力を入れたツッコミでも程よい威力にまで落ちていた。
結果、シリーにもちょうどよくなり、喘ぎ声を上げるだけとなってしまった。
「……ツッコミには便利だな、これ」
「であろう? 聖剣は素晴らしいのである!」
「それより、シリーは俺と一緒に来るつもりなのか?」
「もちろんである!」
元気に頷くシリーに、クーゲルは現実を伝える。
「でもなぁ。俺んちは父さんと母さんも一緒に住んでるんだぞ? 急にお前みたいな女がやってきても困るだろ」
「ならば、吾輩を使用人として雇ってくれればよいのである! クーゲル殿が雇ってくれるなら、給料はいぢめてくれるだけでかまわぬ!!」
「嫌だからちゃんと給料払うわ。ってかお前ゴーストだろ。実体も無しに使用人なんてどうやるんだよ。家事だって何一つできねーじゃねえか」
「ふっふっふ、甘いのであるクーゲル殿! スペルマのように甘いのである!」
「最初からそれは甘くねーよ」
クーゲルのツッコミに構わず、シリーは魔力を高めて気合を入れた。
「ふんぬッ!!!!」
すると一瞬光った後、なんと半透明だった身体が完全に不透明へと変化したのだ。
「やはりである! クーゲル殿から貰った魔力のお陰で、吾輩は高位のゴースト系の魔物に進化したのだ! 故に魔力を使って受肉することも可能になったのである!!」
「……あぁ、それなら使用人の仕事もできちゃうなぁ」
雇いたくない。が、雇える条件が整っていってしまう。
これも自分のスキル『限定魅了(笑)』の力なのか、と考えると、クーゲルにはもう流れに逆らう気力が沸かなかった。
「もういいよ。好きにしてくれ」
「やったのである♥ さすがクーゲル殿♥」
「でも父さんと母さんが駄目って言ったら駄目だからな?」
「わかったのである!」
とまあ、なんやかんやでシリーがシュライバー家の居候となることがほぼ決まりとなった。
「よし、帰るか。行くぞルーデ」
「お、おう! 任せとけや!!!」
「今までビビって隠れてたヤツのセリフじゃねえな?」
「ぐっ……あ、アタシがお化けなんかにビビるわけねーんだよ!」
「そうなのであるか?」
「んっ! っす……」
「早速ビビってんじゃん」
情けないルーデに、クーゲルはアドバイスを送る。
「いいかルーデ。このシリーは俺の持ち物、ハリセンに取り付いているおばけだ。いわば聖剣の所有物とも言える」
「うん?」
「つまりシリーは俺の持ち物の持ち物。めっちゃ立場が低い!」
「おおッ!! 雑魚だな!」
「そういうこと」
「そんじゃーこれからも宜しくな、メス豚!」
「急に態度がデカくなったのである!?!!??」
というように、三人は打ち解けつつ洞窟を後にした。
「……ていうわけなんだけど」
自宅に帰ったクーゲルは、さっそくシリーの居候の件を両親に話した。
ただ、変態である件については黙っておく。というか、両親に話したくないレベルの変態なので口が重かったのだ。
「あらまあ、ずっと一人だったなんて可哀そうに。シリーちゃん。うちの子になったつもりで、一緒に住んでもらってもいいのよ?」
「ほ、本当であるか?」
「もちろんよ。使用人だなんて言わずに、妹のつもりでいてくれていいわよ♪」
と言って、ゲシクテはシリーを抱きしめる。
ゲシクテの優しさに絆されるシリー。
「ううぅ……っ! ゲシクテ殿は優しくて美人で素敵なお母さんなのであるっ!」
「あらあら。そんなに泣いちゃって。本当に大変だったのねぇ。よしよし」
と、シリーの頭をなでて慰めるゲシクテ。
五百年も生きているシリーの方が圧倒的に年長であるはずなのだが……そこは誰もがスルーした。
「ずずっ! ……しかしゲシクテ殿! お世話になるけじめとして、使用人の仕事はさせて欲しいのである!」
「あらそう? なら、ちょうどいいものがあるわ」
ゲシクテはクローゼットからとある服を持ち出してくる。
「昔あるお屋敷で働いていた時に着ていたメイド服よ。シリーちゃんにも似合うと思うわ♪」
「ゲシクテ殿ぉ……!!」
感激するシリー。もうすっかりシュライバー家に馴染んでおり、ゲシクテと仲良しであった。
そうしてシリーはメイド服を受け取り、着替えてくる。
「ど、どうであるか?」
「似合ってるわよ~」
ゲシクテに褒められ、嬉しくなるシリー。
「ご主人さま……じゃなくてクーゲル殿はどう思うであるか!?」
「あー、うん。まあ、可愛いと思う……」
シリーが変態なせいで素直になれないクーゲルだが、実際メイドとなったシリーはクーゲルにとってもめちゃくちゃ可愛かった。
さすがスキルが太鼓判を押したヒロイン、といったところだろう。
「ぬふふっ♪ クーゲル殿にも褒められたのである~♥」
「な、何だよ。俺だって褒めるべき時はちゃんと褒めるよ」
「うむ! えっちする時もそうやって雰囲気を高めていくものであるからな! 当然の心構えである!」
「なんでも下世話な話に持っていこうとすんな。ぶち犯すぞテメー」
クーゲルはシリーに向かって、同じレベルの下品なツッコミで反撃する。
すると、シリーの様子がおかしい。
「えっ!? あう、その……や、やさしくしてほしいのである……♥」
「自分が下ネタ振られるのにはよえーのかよッ!!!」
照れて顔を真赤にしながらクネクネするシリーに、クーゲルは呆れながらツッコんだ。
当然ハリセンでバシンッ! とひっぱたきながら。
「くぅ……このままじゃーメス豚にクーゲルが取られちまう。いっそ殺すか?」
「殺すな殺すな」
クーゲルとじゃれるシリーの様子を見て、嫉妬したルーデが物騒なことを言い出す。
「安心しろルーデ。俺の幼馴染は……お前だけなんだからよ」
「む、クーゲル……♥」
ルーデを宥めるため、頭をなでてやるクーゲル。これに喜び、幸せそうに満面の笑みを浮かべる。
「ぬっ! ずるいのである! 吾輩もご褒美が欲しいのである! 主にケツに! 性的な意味で!」
「うっせー! このド変態ケツフェチ女が!!!!」
「あひんっ♥」
で、結局ルーデに張り合うシリーのケツをハリセンで引っ叩くクーゲルであった。
第二章終了!
こんな感じでいろんなタイプのギャグ漫画にいそうなヒロインが出てくるんでよろしく!!!!
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