38-2=37
僕のクラスは全員で37人って言われてる。
けど、違うんだ。本当は38人なんだ。それなのにみんな、無視する。
生徒も先生も、みんなみんな彼のことを無視する。
名前も呼ばないし、彼がみんなに声をかけても聞こえないフリをして通りすぎるし。しかも、彼の座る席もない。
そんなの…いじめだよね。
確かに彼は他の子達と違って、体が大きいしまっくろいし、へんなコウモリみたいな羽も生えてるし。授業中も教室の後ろに立ってるし。
僕は引っ込み思案だから、声をかけられずにいるけど…今日こそ、彼に声をかける。僕は彼の友達になる。
放課後。
僕は、彼に声をかけた。すると彼は─…
ぐしゃっ。
「あーあ…平沢くんとうとう食べられちゃったか」
「ずっと気にしてたからね~。まあ、誰か1人生け贄が必要だったからね。これで良かったかもね…可哀想だけど」
「はあ~…新一年生が入る度に、誰か生け贄が必要だなんて…ほんと、どうかしてますね、ここのクラスは」
「まあでも、その生け贄を1人捧げることができたら、このクラスの子達と担任は一生幸せでいられるんだから。1人の犠牲くらい軽いもんじゃない?」
「あんたそれ、他のみんなの前で言うんじゃないよ」
「分かってるわよ~。さ、早く帰って酒でも飲も!あんたが奢ってよ~?一生幸せ確定なんだからさぁ!」
「分かったわよ~」
私はため息をつきながら、教室の扉を閉めた。