ケンタウロス(♀)の恩返し
私はケンタウロス。
角としっぽは隠せなかったが、何とか人型のメスに変身して街に下りてきた。
目的は『恩返し』
「だから今日までに100万ゴールド払えって言ってんだるぉ!?」
「ひいいっ!」
道具屋の前で太ったチョビヒゲの店主に背中を蹴られる細身の青年。
彼こそが私の恩人。
・
(私が怖くないのか?)
(君は確かに巨大で。僕を殺そうと思えば一踏みだろう。それでも君は女の子だ)
・
モンスターとの縄張り争いで傷ついた私の脚を手当てしてくれた。
ケンタウロスとして生まれ初めて女として扱われたのも嬉しかった。
「金かーえせ♪ほらっ金かーえせ♪」
彼は親の借金を抱えている。
100万ゴールド。
大金だ。
私は店の看板を見た。
『なんでも買い取ります!
・うまのふん1ゴールド・やくそう3ゴールド・スライムの粘液18ゴールド……』
下の方はやはり買取価格が安い。
……上の方は。
『・上位ドラゴンの鱗18000ゴールド・サラマンダーの脱け殻12万ゴールド・メガオクトパスの墨袋51万ゴールド・【ケンタウロスの心臓88万ゴールド】・ペガサスの蹄150万ゴールド・ユニコーンの角500万ゴールド・フェニックスの羽1000万ゴールド……』
私は自分の胸に手を当てた。
100万ゴールドには届かないが。きっと彼の為になる。
何日も何日も悩んで決めたんだろ?覚悟を決めるんだ私。
「やめろっ!」
「あんっ?なんだいねーちゃん。あんたが代わりに払ってくれんのかい!?」
「お嬢さん逃げなさい!これは僕の問題だから!」
「そうだ!売りたいものがある。だから彼に暴力を振るうのはやめろっ!」
「売りたいものぉ?」
彼と道具屋が私を見つめる。
「こいつの借金は100万ゴールドだぜ?お嬢ちゃん。身体でも売るつもりかい?イッヒッヒッ!」
「ある意味……そうだ」
私は服を脱いだ。
『『!!!!!???』』
そして
何をとは言えないが……
…
…
…
ぶっぱなした!
「うりゃああああ!!」
『『おぼっ!おぼれるぅぅ!』』
どぅりりりゅゅゅゅゅゅ!
恥ずかしい!何をとは言えないがこんなところでメスの私が『ぶっぱなす』なんて!
でも彼の為にユニコーンとペガサスとフェニックスをぶち殺してその肉を食べまくったのだから!
ぶっ!
ちっ!
ぱっ!
……ふぅ。予想より出たな。これだけあればギリギリ100万ゴールドになるだろう。
1ゴールドも積もれば山となる!
「どうだ!これで文句はないだろう!?」
『『……』』
へんじがない。ただのしかばねのようだ。
ハッピー・エンド。
何をとは言ってないもん。