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64.癖がある


 確かにフェリクスと魔石の話をした際におかしな反応をされた。まるで本当にその魔石を見た事があるのか?と訝しがるような態度だったのを覚えている。

 アンネマリーは眉根を顰めて、不貞腐れた顔をした。


「おもしれぇ顔してんな」


 不満、そしてとても不服である。何故ならアンネマリーはこの男におちょくられていたのだ。魔石は少し加工を施されたもの、それでは確かにいくら研究しても解らない訳だ。


 暴言を吐きそうになったが、王族に下品な言葉を投げる事は出来ない。アンネマリーは不服だが言葉を飲み込み、額を抑えた。


「…………」

「何か言いてぇ事があんだろ?」


 確かに言いたい事は沢山ある。だが、思った以上に腹が立っている為アンネマリーは中々言葉にする事が出来なかった。

 俯き、額に手を当てたまま暫し胸の内を整える。近くに感じるカーティスのニヤニヤしている気配に口が暴言を吐きたそうにモニョと動くが、必死に耐えアンネマリーは大きく息を吐いた。


「あの」

「んー?」


 カーティスの語尾がわざとらしく上がる。

 アンネマリーはピクリと口端が痙攣した為、一瞬顔を歪ませたが直ぐに咳払いを顔を整えた。


「何も加工をしていないそのままの石を頂けませんか」


 もうカーティスが何故そんな事をしたのかは聞かない。恐らく聞いても意味が無い事だろう。彼の事だ、きっと気紛れか冗談で話をしたに違いない。何故そうしたのか聞くよりも今度こそ何も加工されていない魔石を貰う事の方が精神衛生上とても良い。


 出来るだけ隙を見せない様にアンネマリーは微笑み、石を強請った。だがカーティスはくつくつと笑いながらそれを拒否した。


「やるわけねぇよな」


 正直断られるとは思っていなかった為、アンネマリーは驚きで目を見開く。


「え、くれないんですか?」

「何でやんなきゃいけねぇんだよ。俺に得があんのか?」


 面白そうに笑うカーティス。だが反対にアンネマリーの顔から表情が消えた。


「そもそも何故変に加工したのを下さったのですか?」


 最初から何もしてないものをくれていたら遠回りしなくてもすんだものを。アンネマリーは責める声を出し、冷めた目をカーティスに注ぐ。

 カーティスはアンネマリーの質問に『あ?』と粗雑に返事をすると理由を思い出そうとしているのか目線を上げた。暫し口を半開きにし上を向いていたが、何も思い出せないのだろう。その間抜けな顔のまま返事をした。


「そん時の気まぐれじゃねぇか?」


 絶対にそうだろう。


「本当に小さいものでも構わないです。原石を頂けませんか?本当に関連があるのか調べたいのです」

「それで実際関連があったらどーすんだ?」


 そう言われ、アンネマリーはキョトンとした。確かに調べた後の事はあまり考えていなかった。今は興味があるから調べているとしか言いようが無い。誰かに調べろと指示された訳では全く無いのだ。


 それに気付いたアンネマリーは気まずそうに顔を背ける。


「まあ、確かにこいつは不思議なやつだからなぁ。調べてぇって気持ちはよく分かる」


 カーティスはアンネマリーの姿を満足そうに見ながら頷いた。


 本当にそうなのだ。不思議なものに程心惹かれる。物凄く欲しいし、研究をしたい。呪いの石であれ、精神に問題を起こさせる石であれ、見た事が無いものは調べてみたい。それがたとえ危険なものであっても。

 リリーの石と関連あるのは間違いない。現品がないのでそれを証明するのは難しいが、調べれば絶対納得できる何かが出て来る筈なのだ。

 

 まあ、出てきたとしてもその先は確かに何も考えていなかったのだが。


 欲しい。でも、そう言われると何も言えない、と黙っているとカーティスがアンネマリーに向け、何かを投げてきた。


「わっ!」


 反射で両手で挟む。手の中に硬いものを感じ、開くと先程カーティスが見せてきた原石があった。

 驚きで固まった顔のまま、カーティスを見る。


「欲しいんだろ?やるよ」


 相変わらず顔は意地が悪い笑みを浮かべているが、やっている事は惚れてしまう程かっこいい。


「で、殿下!」


 アンネマリーは興奮で紅潮した顔のまま、感激の声を出した。対してカーティスは人が感謝すると興味をなくす質らしい。スン、と冷めた顔でアンネマリーを見ていた。




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