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46.怒りの感情


 遥か上空、落ちたらひとたまりもなさそうな高さでアンネマリーは腕を組み、仁王立ちをしていた。まるで足元には地面がある様に体幹を全くぶれさせない姿は実に勇ましい。

 腰程まであるホワイトゴールドの髪は上空ならではの強風に煽られ、四方八方へ靡いていた。真上から降り注ぐ太陽光がその髪を照らし、美しく七色に輝かせていたが、そんな事アンネマリーには存ぜぬ事。

 黒竜を真正面に見据え、アンネマリーはこれをどうするべきか考えていた。


(果たして本当にこれは竜なのかしら)


 アンネマリーは対峙する竜を舐める様に見る。堅そうな鱗に、鋭い爪、爬虫類特有の細長い瞳孔。そして悪魔の様な翼。口は開かれていない為、分からないがきっと牙も凄い事だろう。


(……うん、きっと竜ね)


 観察したところで結果は変わらず、心の中でガックリと頭を垂れる。


(竜の倒し方も封印の仕方も知らないわ)


 どんなに頭を探っても攻略法は出てこなかった。それはそうだ。世界の成り立ちの中で出て来るだけの存在に攻略法もあったもんじゃない。それにその話の中でも最後は神話ファンタジーで山になるのだから分かる訳もない。

 アンネマリーは腕を組んだまま、タンタンと人差し指を動かす。


 さてどうするか。エドウィンにあんな事を言ったからにはどうにかしたい。


 う〜んと首を捻り、どれが効率が良いか考える。もう森の中には人は居ない。散らばっていた生徒や教師は一斉に拠点へ転送した。人生初の大技に失敗するかもとドキドキしたが、上手くいった様で一安心。魔力探知からの遠隔転移は中々の魔力消費だったが、それでも体調に変化は無いので自分の魔力量にドン引きである。


 人を拠点に集めた事を前提に事を起こすのであれば、ドカンとでっかい魔術を打ち込みKOにしたいところだが、この竜にどの属性が効くのか全く検討がつかない。


 アンネマリーは竜から発せられる魔力を身に浴びながら、属性を考える。少し陰鬱な気分になるので闇だろうか?色も黒いのでその線はあるかもしれない。だがそう考えたところで、この陰鬱な気分はこの竜の存在と今までにあったリリーやアーベルとのゴタゴタ、そしてエドウィンとのやり取りのせいだろうと溜息をついた。


 アンネマリーの頭の中に先程のエドウィンの言葉が響く。


『君が行かなければならない理由はない』


 確かにそうだ。自分が行く理由なんて無い。騎士団も魔術師団も来るのなら尚更だ。だが、そう分かっていても体が動いてしまった。

 そっか、来るんだ、じゃあ良いや…とはならなかった。それは何故なのかと問われたら、まず家族の顔が浮かんだ。そして友人サラ、アンネマリーの初めての友人。アンネマリーはこの人達の為にこれをどうにかしたい!そう思ってしまった。


 その中に当然エドウィンも居た。だが今はとても複雑だ。彼が心配する気持ちも分かる。アンネマリーだって自分以外の人間ってがこんな行動をすれば止めるだろう。


(でも正論ばかり言われるとムカつくのよね)


 典型的な女の思考で、アンネマリーはムスリと口を突き出した。言う事は分かる。だが自分はそんな事分かっていて、それを前提で動いているのだ。

 言い訳に近い思考を頭の中に並べて、いかに自分を正当化するかアンネマリーは頑張った。だが、そんな事をしても虚しくなるだけで、頭の中に必死なエドウィンの声がこだまする。


 エドウィンはただアンネマリーに危険な目に遭ってほしくなかっただけだ。なのに、心配さえも拒否をして冷たく突き放してしまった。


(……流石に邪気にしすぎたかも)


 助けに来てくれて安堵した筈だったのに、腕を掴まれ自分の行動を阻まれだけで腹が立った。逃げるなら一人で逃げろ!と喉の此処まで出掛かった。もしかしたら無意識に言っていたかもしれない。そのくらい何故か腹が立った。


 拠点で再会した時もその苛々は持続していて、彼が心配をしていると頭では分かっていたのに素っ気なく対応してしまった。今考えると何をそんなに怒っていたのか不思議な程だ。確かに苛立つ行為ではあった。でもだからといって酷い態度をとる程腹立つ出来事でもない。


(………いや、これは精神干渉してますね。あの闇が出てきてからもしかして怒りっぽかった?)


 そこまで考えて、アンネマリーは『やっぱり闇かぁ……』と一人ごちる。


 そして最後に見た酷く悲しい顔をしたエドウィンを思い出し、早々に謝りたい気持ちになった。




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