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第6話【薬作り】☆

「いいわ。教えてあげる。これはね。今から作る薬の精製工程で使うのよ」


 私は弾んだ声で新しく入った使用人カインにそう答えた。

 カインは驚いた顔をしていたが、興味深そうにさらに質問を投げかけてくる。


「薬作りですか……? 薬草をご自身で育てていることはお聞きしていましたが、まさか薬までご自分でお作りになるとは……」

「ええ。ある意味趣味と言えるかしら。でもね、何か人の役に立つって素敵なことだと思わない?」


 私はつい自然に言葉が出てしまう。

 今まで他の使用人から受ける嫌な雰囲気を、カインから感じからないだろうか。

 するとカインはさらに驚く提案をしてきた。


「もしエラ様がよろしければですが、その薬作りを横で拝見していてもよろしいでしょうか?」

「え? 薬を作るところを? 構わないけれど……何も楽しいことはないわよ?」

「構いません。一度作るところを拝見させていただければ、今後何かお役に立てることもあるかもしれませんので」


 私はそんなカインの言葉に驚いてしまう。

 今まで薬を何度も作ってきたけれど、興味を持つ人なんて家族も含めて誰一人いなかった。

 それでも私が薬を作るのは、()()のためなのだが。

 まさか、誰かが手伝いをしてくれるなんて日が来るなんて思ってもみなかった。

 ああ、でも。言葉だけかもしれない。

 実際に手伝いをしてくれるなんて考えてはだめよ。

 私は心に沸いた淡い期待の火をそっと消し、カインに慎重に答えた。


「いいわ。誰にも見せたことないけれど、見せてあげる。でも、お願いがあるの。他の誰にも見たことを言わないでほしいの。お父様やお母さまにもよ。もちろんフレイアにも。もし誰かが薬作りの内容を知っていたら、あなたが約束を破ったって分かるわ。私の言っている意味、分かるわよね?」

「ええ。もし私が契りを(たが)って誰かに伝えれば、すぐに私のしたことがバレる。ということですね」

「そう。もちろん、そうしないでほしいの。それが約束できるなら見せてあげるわ」

「それはもう。家人の秘密を守るのも使用人の職務ですから」


 カインはまじめな表情で私にそう答えた。

 私はひとまずこの新しい使用人の彼を信じることにした。

 もしかしたら、彼は他のみんなとは違うのかもしれない。


「それじゃあ、今から作るから見ていて構わないわ。いちいち説明はしないけれどいいかしら?」

「ええ。邪魔にならないようにします。どうぞ、私は居ないものとしてご扱いください」


 宣言通り、私はいつも通り独り言を言いながら薬を作っていく。

 カインは音もたてずに、薬作りに集中するとそこに居ることすら忘れてしまいそうになるくらい静かに、佇んでいた。


「できたわ」

「お見事です。エラ様は薬作りをかなり習熟されているようですね」

「まぁ。お世辞を言っても無駄よ。それとも、あなたは薬作りの善し悪しが分かるというのかしら?」

「ええ。少しかじったことがありますので」


 カインの言葉に私はまた驚いてしまう。

 見る限り彼は私とそこまで年は変わらないはずだ。

 薬作りをしたことがあって、今は侯爵家の使用人をしているなんて、どういう経歴の持ち主なのだろう。


「そう。さて、私はこれを渡してくるから、出かけてくるわね」

「お出かけですか? お一人で? では馬車をご用意しましょう。ちなみにどちらへ?」

「馬車は必要ないわ。お父様には内緒なの。きっと話しても理解してもらえないから」

「それでは歩きですか? どこまで行くのか分かりませんが、お一人では何かと物騒でしょう。よろしければ私がお供いたしますよ」


 私はカインの顔をじっと見つめる。

 整った顔。何を考えているかは表情からは読み取れない。

 私は今少し混乱していた。

 今まで見てきた、接してきた使用人とカインがあまりに違うからだ。

 誰もが私を厄介者や腫物のように扱う。

 しかし彼は違う。

 彼が特別なのか、それとも他の使用人たちが実はおかしかったのか。

 いずれにしろ、カインの提案は私の心を温めた。

 自分でもぎこちないと分かる作り笑いをして、カインの同行をお願いすることを伝えた。 

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