第二楽章
~不思議な力~
その年のコンクールの全国大会は、異例の金賞二校。
その二校共、演奏力の高さが話題になり、音楽雑誌でも大きく取り上げられた。
それから数日後、パパがお昼休みにいつもの様に音楽室でお昼ご飯を食べて、ピアノを弾こうと思ったその時、音楽準備室のドアが開いて先生が、
「お~い篠山、ちょっと…」
と手招きをしている。
「ハイ?失礼しま~す。」
と準備室に入ると、
「聖ミハエル学園さんからラブレターが届いてるぞ~」
と、綺麗なステンドグラスの絵が印刷されている封筒を手渡された。
「学園長さんからご丁寧にオレ宛にも手紙をいただいてな、教会の収穫祭にお前に出演して欲しいらしい。
コンクールの時の指揮者のシスター御園さんが熱望してるのだとか…
どうす…」
「ハイ‼️喜んで‼️」
パパは先生の話を遮る勢いで返事をした。
「お、おぅ。行ってこい。珍しいな、いつも冷静なお前がそんなに興奮して…」
と言われ、パパは目をキラキラさせながら、
「ハイ‼️ ある人と約束をしたので…」
と、答えると、
先生がニヤッっとしながら、
「コンクールでソロやってたあの子か~?」
と言うので、パパは急に恥ずかしくなり、
「エッ⁉️…あ、ハイ…そ、そうです…」
と、顔を赤らめた。
「そうか。(笑)さっき渡した封筒に招待状が入ってるらしいから、行ってこい。
でも、くれぐれも失礼のないようにな。
まぁ、お前なら大丈夫だと思うが…」
先生の話に被さる位の勢いで、
「ハイ‼️」
と、返事をして、スキップしたい気持ちを抑え、冷静を装って、音楽準備室から音楽室に戻った。
「失礼しました~」
(ヤッタ~潮田さんに会える~)
それから数回、学校を通じて譜面が送られてきた。
その譜面には付箋がたくさん貼ってあり、メモ書きがしてある。
そのメモを見ると、
【この前奏は水鳥が羽ばたくイメージ】とか
【この間奏は夏の夕暮れ、風に揺れる向日葵のイメージ】とか…
あとは歌詞に込められた想いのママなりの解釈など…
音楽的な指示は一切なく抽象的なイメージや心情などが書き込まれていた。
(ボクと同じ方法なんだ…なんか嬉しい…)
そして、譜面と一緒に1枚の便箋が入っていた。そこには…
篠山優 様
演奏御一緒出来る事を心待ちにしております。
つきましては、もしご迷惑でなければ、本番に向けて練習にお付き合いいただけませんでしょうか?
折角の機会ですので、出来る限り息の合った演奏をしたいのでございます…
打ち合わせをいたしたいと思っておりますので、もし、よろしければ下記の寄宿舎にお電話をいただけませんでしょうか?
もし、お電話をいただける際はシスター御園を呼び出していただけますでしょうか…?
そうしましたらシスターが私を呼び出します。
ご面倒だとは存じますが、色々と学園の規則がございますので何卒、御理解いただけます様、お願い申し上げます。
聖ミハエル学園寄宿舎
03-○○○○-○○○○
篠山さんに神の御加護がありますように。
聖ミハエル学園1年D組 潮田華
追伸、このお手紙は学園の規則に触れるものなので御内聞に願います…シスター御園の特別な配慮で同封いたしました…
と、書いてあった。
(面倒だなんて思わないよ、潮田さん。
早くキミに会いたい…
声が聞きたい…
アレ⁉️…何だ?この気持ち…)
パパはその夜、何度も深呼吸して電話をかけた。
「ハイ、聖ミハエル学園、寄宿舎でございます。」
「あ、あの、夜分恐れ入ります、私は世田東高校の篠山と申しますが、シスター御園様はいらっしゃいますでしょうか?」
「ハイ。篠山さん、私ですよ。御園でございます。そろそろ電話がかかってくるのではと、電話の前で待っておりました。」
「エッ⁉️…そ、そうなのですか⁉️ わかるのですか⁉️ それは神がかっていますね…」
「ハイ。私共は神にお仕えする者でございますので…
フフフ…冗談でございます。たまたま電話のそばに居たのでございますよ。(笑)」
「ハハハ…シスター様も冗談をおっしゃるのですね…
あ、あの、この度は特別なご配慮をいただきまして…」
「篠山さん、それはナイショですよ。」
「あ、ハイ。そうでした…スミマセン…」
「フフフ…華ね、お待ちくださいませ…」
(電話越しに放送の声)
「1年D組の潮田さん、御親戚の方から電話が入っておりますので、管理人室まで来て下さい。」
(エッ⁉️親戚⁉️……あ、そうか、規則か…)
(電話越しに微かにシスターとママの声が聞こえる…)
「ハイ。想い人からよ~(笑)」
「もう‼️シスター‼️ やめてください~」
「ハイハイ。(笑)
では、消灯時間までごゆっくり~ウフフ…」
「もう‼️ からかわないでください‼️ 」
(受話器を持ち上げる音)
「もしもし、お待たせいたしました。潮田でございます。」
「あ、篠山です。お久しぶりです…
いただいたお手紙の件ですが…」
「ハイ…この度は、色々とワガママを申しまして、ご迷惑を…申し訳ございません…」
「いえいえ、迷惑だなんて、これっぽっちも思ってませんよ。」
「そうですかぁ…良かったぁ…」
「あ‼️ スミマセン、つい心の声が…」
「ハハハ、本当に気にしないでください。
ボクも音合わせ、したかったので…」
「ちなみに、そちらの学園は男子禁制だと聞いてますので、もし潮田さんが良ければ、うちにいらっしゃいませんか?ピアノもありますし…」
「エッ⁉️…イイんですか⁉️ 私の様な面識もほとんどないような者がお邪魔しても…」
「ハイ。勿論。
実はうちの両親に潮田さんの話をしたら、凄く会いたい、歌を聴かせて欲しいって言ってまして…
あ、うちの両親、声楽家なんですけどね…」
「エッ⁉️…声楽家⁉️ も、もしかして、篠山さんのご両親って、あの声楽家の篠山ご夫妻です…か?」
「エッ⁉️ もう知っているのかと思いました。先日発売された雑誌にも書かれてましたし…」
「雑誌でございますか…?」
「あ‼️ そう言えばコンクールの後、学園に音楽雑誌の取材はいらっしゃいましたし、その取材記事は出版前に見せていただいたのですが、こちらの寄宿舎には規則で雑誌はございませんので、篠山さんの記事は拝見してないんです…」
「そうか、そうですよね… 色々と規則が厳しいんですよね…?」
「いえ、私は幼少の頃から学園におりますのでこれが普通だと思っておりますが、たまにシスター御園が学園外の普通についてお話をしてくださいます。
そのお話を聞くと普通がよくわからなくなります…」
「う~ん…普通の尺度って、人それぞれ違うから、実は普通を定義することって凄く難しいんですよね…」
「そうですね。おっしゃる通りだと思います…」
「あ、それはさておき、音合わせ、どうしましょうか? 」
「ハイ。まずは、篠山さんのお宅で音合わせをする旨をシスターにお伝えして、学園から外出の許可をいただかないといけませんので、今度はこちらからご連絡させていただいてもよろしいですか?」
「ハイ。勿論‼️ 電話番号は03‐△△△△‐△△△△です。」
「ありがとうございます。シスターに相談してまた連絡させていただきますね。それでは、篠山さん、また……」
(電話越しに大きく息を吸う音がする)
「あ、あの…声が聞けて嬉しかったです…」
(い…言っちゃった…)
「…ボ、ボクもです。」
(エッ…⁉️ それって、どういう意味に受け止めればいいんだろう…ボクと同じ気持ちだったら嬉しいなぁ…)
「あ、それから、シスター御園様によろしくお伝えください。」
「ハイ‼️ お伝えいたします。それでは…」
「ハイ。ま、またね…は、華さん…」
(うわっ‼️…ついに下の名前で呼んじゃった…)
「エッ⁉️…アッ、ままま…またね…ゆゆゆ、優さん…」
(わわわ‼️…男の子に下の名前で呼ばれるの初めて… しかも、勢いで優さんって言っちゃった~
は…恥ずかしい……でも、嬉しい…)
そんなぎこちない通話を終え、電話の前で顔を赤らめ、余韻に浸る二人…
そして、約束の日、待ち合わせの駅前。
「潮田さ~ん‼️」
と、改札から出てきた制服姿のママに手を振るパパ。
「こ、こんにちは。篠山さん。」
と恥ずかしそうなママ。
「じゃ、じゃぁ、行こうか…」
と目を合わせられないパパ。
二人はぎこちない空気のまま街路樹に沿って歩く…
「あの…お休みの日も制服なんですか?」
「エッ⁉️ ア、ハイ。基本的には…これが私共の正装でございますので…
日曜の朝は教会のミサがございますし、授業はお休みでも近隣での奉仕活動などをいたしますので…」
「そうなんですね…」
(私服姿も見てみたかったな…ナンテ…言えない…)
「 あ、外出、許可が出て良かったです‼️」
「ハイ。奉仕活動の準備として必要不可欠な外出だとシスター御園が学園長に説明してくださいまして…」
「そうなんですね。
ところで、シスター御園様ってどうしてそんなに僕達によくしてくださるのだろう…」
「シスター御園はいつも前向きで、優しくて、寛大で、いつも私や生徒一人一人の事を考え、母の様に導いてくださいます。」
「う~ん…例えるのなら、まるでお日さまのような方でして、人のお世話をする事が大好きなのでございます。」
「お日さまの様な…うん、わかる気がします。」
「それに、学園の外の世界の事をよくご存じで、私は声楽の道に進むべきだとよくおっしゃってくださいます…」
「それはボクも同感です。」
「私も歌う事は大好きでございますが、現実的にはそれは色々と難しいかと…」
「色々と…ですか?」
「ハイ…色々と…」
「ですが、シスターに、先日のお電話の後に篠山さんが声楽家の篠山ご夫妻のご子息だということをお伝えいたしましたら、とても驚いて、
これは神のお導きだ‼️
と手を合わせてお喜びになっておりました…
こういった流れになりましたのは全て神のお導きだと、私も思います。」
「そうですね。ボクもそう思います。あの時、潮田さんが財布を落とさなければ、きっと話をする機会もなかったと思うし…」
「フフフ…そうですね。本当に…」
と、あの時を思いだし、恥ずかしそうなママ。
「あ、ボクん家、ココです。」
と、パパが指差した先には立派な門構えと木々に囲まれた大きな西洋建築が…
「うわぁ~ステキなお屋敷‼️」
「明治時代に建てられたんです。
大空襲の時、周りは焼けてしまっても、この家は焼けなかったそうです。
こんな事言ったら変な奴って思うかもしれませんが、この家には何か不思議な力が宿っているような…そんな気がするんです…」
「変だなんて‼️ そんな‼️
私も目には見えない、言葉では説明出来ない不思議な力を感じる事が時々ございます…」
パパは急に真顔になり、ボソッっと…
「ボク達が出逢ったみたいに…?」
と、言った途端ハッとして、
「アッ‼️ イヤ…その…とりあえず、中に入ろう…ハハハ…」
と言い、気まずそうにママの方を見ると
ママは顔を真っ赤にして下を向いてた。
「………」
パパはステンドグラスが施された大きなドアを開けた。
「ただいま~」
「こんにちは‼️」
おじいちゃんとおばあちゃんは笑顔で
「お帰り~」
「いらっしゃい。華さん。
優から聞いていた通りの美人さんね‼️」
パパが、慌てて
「ちょっ、母さん‼️ 」
と言うと、ママは恥ずかしそうに
「はじめまして。潮田華と申します。」
と言うと深くお辞儀をした。
「さぁ、どうぞ中に入って~」
「ハイ。お邪魔いたします…」
それから少しみんなで談笑し、おばあちゃんは、
「それでは、私達は、あちらで事務仕事などをしておりますので、どうぞお気兼ねなくお稽古してくださいね。」
と言い、まだママに色々聞きたそうなおじいちゃんの腕を掴んで、リビング隅の事務机の方へ…
「じゃぁ…始めましょうか。」
「ハイ。」
パパは深呼吸をして前奏を弾き始める。
「ん⁉️」
と、おじいちゃんとおばあちゃんの事務仕事の手が止まる…
そして、前奏からママの歌に引き継がれる。
おじいちゃんとおばあちゃんは驚いた表情で机の所で立ち上がり固まっている。
1曲終わったところで、ようやくおじいちゃんとおばあちゃんは穏やかな表情を取り戻し、拍手をしながらピアノの方へ歩み寄ってきた。
おじいちゃんは、
「優、出逢ってしまったな、運命の人に…」
と、また直球どストレート‼️
パパがアワアワしながら、
「父さん‼️ やめてください‼️ 華さんが困ってるじゃないですか‼️」
と言うと、ママは顔を赤らめうつむいていた。
見かねたおばあちゃんが、
「華さん、ごめんなさいね。うちの人、こういう人なの。」
と苦笑いをして、こう続けた…
「でもね、初めての音合わせでこんなに息が合う事って奇跡的な事なのよ。
それに、あなたの歌が…
いえ、もしかしたら、あなたの存在が優のピアノに足りなかったものを引き出してくれた…
今の演奏を聴いて私達はそう感じたの。」
顔を赤らめ、すっかり慌てた様子のパパが、
「もう‼️母さんまで‼️ 華さんを困らせ…て…」
と言うと、ママは更に顔を真っ赤にして両手で顔を隠した…
おじいちゃんが、今度は落ち着いた口調で
「ところで、華さん…」
と言うと、
ママは真っ赤になった顔を両手でパタパタと扇いでからおじいちゃんの方を見た。
「ハイ。」
「キミはまだ1年生だったよね?まだこんな事を聞くのは早いかもしれないのだが…
卒業後の進路について考えてる事はあるのかい?」
と聞かれ、ママは、
「ハイ。卒業後は学園の寄宿舎で管理栄養士兼、調理師として働かせていただくつもりですが、シスター御園は、私は声楽の道へ進むべく、音楽大学に進学すべきだとおっしゃっていまして、実は私も悩んでおります…
ですが、現実的な事を申しますと、音楽大学は学費もお高いですし…」
と答え、下を向いた…
「親御さんは何とおっしゃってるんだい?」
「両親は私が幼い時分に災害で亡くなったと聞いています…」
おじいちゃんは唇を噛みしめ、暫くの間天井を見上げてから、
「そうだったのか………」
と、悲しそうな表情でママを見つめた…
ママは穏やかな表情のまま、
「ハイ…当時、頼れる親戚もなく、私は聖ミハエル教会が運営する孤児院に引き取られたそうです。
ですので、幼稚園からずっとミハエル学園で学び、私はシスター達にここまで育てていただきました…」
「そうだったんだね……知らなかったはいえ、辛い事を聞いてしまったね…
すまない…」
ママは変わらず穏やかな表情で、
「いえ、本当に幼かったですし、写真も何も残っていませんので、私には両親の記憶はございませんし、シスター達は私を実の子の様に愛してくださいますので辛いと思った事はありません。」
それを聞いたおじいちゃんは、しばらく押し黙ってから静かに、
「華さん、あなたの歌は美しい‼️ 美しいのだが、どこか哀しい… その理由がわかった気がする…」
と言い、また押し黙ってしまった…
そこへ、おばあちゃんが、何かを思い付いた様な表情で、
「ねぇ、華さん、私が教えている関東芸大へ進学してはどうかしら?」
「エッ⁉️」
ママは普通にしてても大きな目を更に見開いた。
おばあちゃんはこう続けた…
「毎年全ての科を通して1人だけなのですが、特待生の枠があってね、受験は普通に受けていただく事になりますが、学科試験と実技試験をトップで合格した上で会議で決定するの。
もし、特待生に選ばれれば、心配している学費は全部免除になるのよ。
私もシスター様と同意見、華さんは栄養士さんじゃなくて、声楽家になるべきだと思うの。
頑張ってみない?」
と言われ、ママは少し戸惑ったような表情で、
「ありがとうございます…
迷いがひとつ晴れた様な気がします…
ですが、私をここまで育ててくださったシスター達の愛に背を向けて学園を去る事は私には…」
そこへおじいちゃんが遮るように、
「華さん、それは違うと思うよ‼️
親というものは、いつだって子供の幸福を願っているものなんだよ。
それはキミを育ててくれたシスター様も同じだ。
だから、キミは学園に背を向けて去るのではなく、シスター様の元で育んだ翼を広げ、大空へと旅立つんだ。
それをシスター様が悲しむと思うかい?」
ママは黙ったまま下を向いている…
おじいちゃんは更に続けた…
「もし必要とあらば、私達がキミの身元を引き請けるし、キミさえ良ければうちに来ればいい。
部屋はたくさん空いているから…
キミがどうしたいのか、本心を聞かせて欲しいんだ…」
パパがママの方を見ると、ママは下を向いたまま、大粒の涙を滴らせていた…
その様子を見ていたパパが
「華…さん…?」
と声をかけると、
「嬉しい…嬉しいんです…
私は…私は歌を…私は歌を歌いたいです…」
と声を震わせた…
すると、おばあちゃんはママの元に歩み寄り、ギュッとハグをした。
そして、我が子に言い聞かせるように、
「あなたは、もう一生分の試練を受けたと思うの。
だからこれからは幸せに生きなさい。
もう強がらなくていいの。
泣きたい時は思いきり泣けばいいの
。
私の胸で思いきり泣きなさい…」
と言うと、ママは今までせき止めていた何かが決壊したかのように、おばあちゃんにしがみつき、幼い子供の様に泣いた…
おじいちゃんは「ウンウン…」と涙を流しながら笑顔で頷いて、パパに、
「優、ひとまず、ティータイムにしよう。」
と言い、パパを連れてキッチンへ行った。
それから夕方まで、パパとママは教会の収穫祭で演奏する曲の音合わせを、おじいちゃんとおばあちゃんは、二人に気兼ねをさせまいと、事務仕事をしながら二人の心地よい演奏に耳を傾けた。
ママの歌声から哀しみの色は消えていた…
一通り練習を終え、パパは時計に目をやり、
「華さん、そろそろ帰らなきゃですよね…」
と呟くと、ママも寂しそうな表情で、
「ハイ…そうですね…」
と、パパを見つめた…
「じゃぁ、駅まで送りますよ。本当は学園の前まで送って行きたいんですけど、規則が…ね…」
「ありがとうございます…向こうの駅まで着きましたらシスター御園が迎えに来てくださるから大丈夫です…」
「そうか…なら安心だ。」
と、言うと、ママはパパを見つめたままコクリと頷いた。
帰り際玄関でママが、
「お父様、お母様、今日は本当にありがとうございました。」
と、また目に涙を浮かべると、おじいちゃんはニッコリ微笑みつつ
「またいつでもいらっしゃい。
それから華さん、さっき話した進学の事、考えてみてくれるかな?
あと、この封書をシスター様に渡してもらえるかな?
キミの進学の事や諸々、私達の気持ちを書いたんだ。」
と、封筒を手渡した。
「ハイ‼️」
と、ママは目に涙を一杯溜めながら、大きく頷き、それから深くお辞儀をした。
パパは、
「じゃあ、父さん母さん、ボクは華さんを駅まで送ってきます。」
と言い、ママの目を見て頷いた。
ママは、
「それでは…ごきげんよう…」
と、お辞儀をし、パパと一緒に玄関を後にした。
(第三楽章へ続く)