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星の守り人  作者: ゆずれもん
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第5話 戦闘開始!

「ふっ!」

 回り込んできたゴブリンの内の一匹を相手にしながら、二人の戦闘を見てみると青年が棍棒を弾いてできた隙に少女が魔法で攻撃するところが見えた。どうやら二人は連携してゴブリンを倒しているようだ。

 青年の方は深紅色の髪をしており、両手剣を武器にしている剣士だ。細身だがしっかり鍛えられているのが分かる。少女の方は翡翠色の髪をしており、ローブを着て杖を持っている魔導士だ。魔法は風魔法を使っているのが見える。

その後も戦いながらチラチラと様子を見ているが息の合った連携で安心できる戦闘だった。ルイは自身と同じくらいの年齢の二人が、息の合った連携ができることに驚いた。

(僕もいずれはパーティーを組もうとは思っているけど、連携ができるようになるまでにどれだけ時間が掛かるかな?)

そんなことを考えながらルイはゴブリンにとどめを刺した。二人も同じくゴブリンを倒したらしく、声をかけてきた。

「こっちは片付いたぞ! そっちは……終わっているみたいだな」

「それなら早くここから逃げ——っ!? 風の盾(ウィンド・シールド)!」

 逃走を再開しようと前を向こうとした瞬間、少女が前方に魔法を使用した。前方に直径二メートルほどの円形状の風の盾が出現した。何が起きたのか前方を確認すると一本の矢が風の盾に弾かれカランと音を立てて地面に転がるのが見えた。

「弓矢!? いったいどこから……」

「あそ——」

「あそこだ! あそこにいるぞ!」

「——こ……よ…………むう」

 少女が言おうとしていたことを男が遮っていってしまったことで膨れっ面になるのが見えたが、状況を把握する方が重要なため見なかったことにして青年が指さした方向を見る。そこには七匹のゴブリンがいるのが見えた。その内の三匹は普通のゴブリンに比べて体が一回り、二回り大きい。

「……あの大きいゴブリンって……上位種、です……よね?」

「……そうだな、俺にもそう見えるぞ」

「……よりによって私たちが逃げようとしていた方向からくるなんて……最悪ね」

 そこにいたゴブリンは通常のゴブリンが四匹とホブゴブリンが一匹、そしてゴブリンアーチャーとゴブリンソーサラーが各一匹ずつだ。冒険者ギルドが定めるゴブリン種の推奨討伐ランクは、ゴブリンがFランクでホブゴブリンがEランク。ゴブリンアーチャーとゴブリンソーサラーはDランクだ。ちなみにゴブリンナイトはDランク、ゴブリンキングはCランクとなっている。

「……やばいな」

「このままじゃさっきのゴブリンと挟まれるわよ」

「……逃げましょう……こっちです!」

 逃げようと走り出したが、目の前を矢が通り過ぎ足を止めてしまった。そこにゴブリンソーサラーが火球(ファイアーボール)を放ってきた。

「風の盾!——きゃあ!」

「うわっ!」

「くっ……」

 少女が風の盾を張るが先程の矢のように吹き飛ばすことができず、軌道を少し変えることしかできなかった。軌道が変わったため直撃は免れたが、近くに着弾したため熱と衝撃が三人を襲った。

「駄目、火球は逸らすのが精一杯よ!」

「俺たちを逃がしてくれそうにないぞ!どうする?」

「……戦うしかなさそうですね」

「上位種と!? そんなの無理よ!」

「それでもやるしかないでしょう。じゃないと死ぬだけです」

「……ふぅ、覚悟を決めるか」

 そう言って青年は両手剣を構え直す。

「うぅ……分かったわよ……でもやるからには生きて帰るわよ!」

「当然だろ、それよりもどうやって戦う?闇雲に突っ込んでもやられるぞ」

「さっき私たちを助けてくれた魔法は使えないの?」

「すみません、魔力が足りません……」

「なら、どうするか」

「……危険ですが、思いついたことがあります」

 ルイは思いついたことを話していく。その内容を聞いた少女は顔を引きつらせていた。

「私がそれを……さ、さすがに——」

「来たぞ!」

 少し様子を見ていたゴブリンたちだったが、ゴブリンとホブゴブリンが動き出しこちらに突っ込んできた。さらにその後ろからゴブリンアーチャーが矢を、ゴブリンソーサラーが火球を放とうとしていているのが見えた。

「これ以上話している時間はない! 今聞いたやつで行くぞ!」

「えっ!? 嘘、本当に?」

「行きましょう!」

 ルイと青年は突っ込んできたゴブリンに対処するため走り出した。

 そしてゴブリンとの命がけの戦いが始まった。


——少女side——

「行きましょう!」

 そう言うと、ルイと青年はゴブリンに向かって走り出した。ルイの思いついたこと、それは少女がどれだけ踏ん張れるかで戦況が大きく変わってしまう。少女が任された内容自体は簡潔で分かりやすいが、できるかどうかが問題だ。その内容は『二人がゴブリンとホブゴブリンを討伐する間、ゴブリンアーチャーとゴブリンソーサラーの邪魔をして時間を稼ぐ』というもの。冒険者になってまだ一週間の少女はそんなことができる訳ないと言いたかったがやるしかなくなってしまった。少女は覚悟を決め、杖を構え魔法を唱える。

「【風魔法】風壁(ウィンドウォール)!」

 今の少女だと高さ三メートル、幅八メートルの風壁が作れる。二つを同時に防ごうと思えば風の盾より広範囲をカバーできるこっちの方が良いと少女は判断した。広範囲をカバーできる分、魔力の消費は高いが二人がホブゴブリンたちの討伐する邪魔はさせないと意気込む。

 発動させた風壁は矢を弾き、火球の勢いを無くすことができた。勢いのなくなった火球はすぐに地面に落ちていき特に被害もなく防ぐことができた。

 防げたこと嬉しく思うも、このペースでは魔力が持たない。どれだけ時間が掛かるかわからないから魔力は節約しなければならない。そのために

「【風魔法】風弾(ウィンドショット)!」

 少女は自分が使える魔法の中で一番魔力消費の少ない風弾を二匹に向けて放った。風弾は二匹に命中し、二匹は怒ったように叫ぶ。その様子を見て少女は恐怖を抱く。でもこれで良い、二人がこっちに来るまで時間を稼いでみせると心で思いながら声を出す。

「さあ、あんたたち二匹の相手は私よ! かかってきなさい!」

 少女は自分を鼓舞するために大きい声を出した。二匹は攻撃しようと構えるがそうはさせまいと魔法を使う。

「【風魔法】風弾! 撃たせないわよ!」

 風弾を顔めがけて放つ。できる限り相手の攻撃を邪魔していく。それでも全部を防ぐことはできない。その時は風の盾を使うか回避する。特にゴブリンソーサラーを優先的に邪魔していく。魔法は撃たせない。

 少女がそう考えるには訳があった。先程、風の盾で防いだときは矢を吹き飛ばすことはできたが火球は逸らすのが精一杯だったこともあるが、一番の理由は魔法の相性だった。

 攻撃の際に火魔法に風魔法を組み合わせれば火魔法の威力を上げることができるため相性が良い。しかし風魔法で火魔法を防ごうとするには威力を上げてしまわないように魔法を制御しなければならない。それができなければ火魔法の威力を上げずに防ぐことはできないからだ。事実、先程の火球を防いだときは逸らすことはできたが少し威力が上がってしまっていた。これが高ランクの魔導士であれば息をするように防ぐことができただろう。しかし少女にはまだできない。自分の魔法が甘く威力が上がってしまっていたことに唯一、気が付いていた少女は、火魔法を可能な限り撃たせないようにするのであった。

「【風魔法】風弾! 【風魔法】風の盾! 【風魔法】風弾! ……【風魔法】風弾! ……はあ……はあ」

 そして戦い始めてどれくらいの時間が経っただろうか?少女の魔力が段々と厳しくなってきて、肩で息をするようになってきた。

「——っ! 【風魔法】風の盾!」

 少女は飛んできた矢を魔法で吹き飛ばす。

「……さすがに……きつくなってきたわね……でも、二人が来るまで耐えるわよ」

 そして二匹と戦っていると後ろからガサッという音が聞こえてきた。少女が振り向くとそこには棍棒を振りかぶったゴブリンがいた。

「【風魔法】風の——きゃあ!」

 魔法を発動させる前に少女は棍棒を受け、地面に転がっていく。何とか杖で受けることはできたが体勢が整っていなかったため押し負けてしまった。

「けほっ……けほっ……何でこっちにゴブリンがいるのよ!? 二人は!?」

 二人がどうなったのか確認しようとする少女だが、ゴブリンが追撃しようと棍棒を振りかぶって襲い掛かってきたためすぐさま魔法を放つ。

「【風魔法】風弾! 【風魔法】風の監獄(ウィンドプリズン)!」

 少女はまずゴブリンの足を風弾で止めてから風の監獄を使う。するとゴブリンの周りに直径五メートル程の半球状の監獄ができ閉じ込めることに成功した。

 この魔法は名前の通り対象を閉じ込めることができ、持続時間や強度は込める魔力量に依存する。今回はゴブリンなら一分間程閉じ込めることができる程度の魔力を込めていた。

 少女はゴブリンを閉じ込めると周りを確認する。

 するとすぐ近くまで火球が迫ってきていることに気付いた。魔法を発動する時間はないと判断しすぐさま回避に移る。しかし回避したところを狙われ矢が飛んできた。少女はそれに気付くのが遅れて回避することができなかった。

「きゃっ! 痛っ~~!!」

 右肩に矢を受けてしまった少女は痛みでその場に蹲り、右肩を押さえる。ここで足を止めるのは悪手だが蹲ってしまうのも仕方がないだろう。なぜなら少女はこのような怪我をするのは初めてだったからだ。切り傷や軽い打撲などの怪我は何度もしたことがあるが大きな怪我をするのは初めてだった。少女もルイと同じく新米冒険者であり冒険者となってから一週間しか経っていない。新米冒険者が相手する魔物には中・遠距離攻撃をするようなのはおらず、そのうえ少女は後衛であり魔物から少し距離を取り攻撃や前衛をサポートすることが普通だった。そのため冒険者として怪我をしたのは今回が初めてだった。

「……はっ……はっ……——! 【風魔法】風の監獄:反転(リバース)!」

 蹲りながらも矢と火球が飛んでくるのが見えた少女は涙目になりながらも、ありったけの魔力を込めて魔法を使用した。

 その魔法は先程ゴブリンに使用した魔法を反転させたものだ。先程の魔法は風の監獄の文字通り中のものを閉じ込めておくためのもので、中から外に出ようと檻に触れると中心に向かって突風が吹き荒れる魔法だ。しかし今使用したものは効果を逆にしたもので外から中に侵入することを防ぐことができる。いわば風の盾が全方位に張られているようなものだ。

 そして少女の持つ残りの魔力を込めたその魔法は約十分間もつ半径四メートルの半球状の檻となり、少女を覆った。

 しかしその魔法で魔力を使い切った少女は段々と意識が朦朧としていき遂には気を失ってしまった。


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