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星の守り人  作者: ゆずれもん
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第3話 初依頼

 準備を終えたころには、一八時を超えていた。

「もうこんな時間か。まだお腹は空いてないから先にお風呂に入ろうかな。今なら空いているだろうしのんびりと浸かることができそう」

 ルイの実家にはお風呂はなかった。魔石があれば作れるけど、家ではお湯や水で濡らした布で体を拭いたり川で水浴びをするくらいしかできなかった。

 そのため一度お風呂に入ってみたかったルイは、さっそく着替えなどを持って向かう。

部屋を出て一階まで下りたところで宿屋のおばちゃんと目が合った。

「おや、これから食事かい?」

「いえ、先にお風呂に入ろうかなと思いまして」

「そうかい。ああ、言い忘れていたけどお風呂に入るときは湯船に入る前に体を洗うようにしておくれ。汚れたまま入ると湯船が汚れてしまって他のお客の迷惑になるからね」

「分かりました」

 おばちゃんと少し話した後、大浴場に向かう。ルイは脱衣所に入り、服を脱ぐ前に浴場を覗いてみる。奥に十人くらいが一緒に入れるくらいの大きさの湯船があり、手前の左右に洗い場があった。

「これがお風呂か……ゴクッ……よし、早く入ろう!」

 すぐさま服を脱いでお風呂に入る準備をする。準備ができたらさっそく大浴場に続く扉をくぐる。

「おばちゃんは最初に体を洗えと言っていたね。早く体を洗おう。洗い場は……」

 洗い場で体を洗い、汚れが落ちたことを確認したルイは待ちに待ったお風呂に向かう。

「よし! 入ろう。……おっ、おお……あぁ~」

 お風呂に入ると想像以上の心地よさに思わず声が出てしまった。

「これは良い……病みつきになりそう……」

 将来、家や部屋を借りるときはお風呂が付いている物件にしよう、そんなことを考えながらゆっくりとしていると他のお客がぽつぽつと浴場に入り始めた。

 これ以上、長湯をするのは迷惑になると考えたルイはお風呂から上がる。

 着替えた後は、部屋には戻らずに食堂に向かい食事をとった。食事は、量はあったが味は普通だった。安くて量が多いのが売りと聞いていたため、お腹いっぱいまで食べて部屋に戻った。

 部屋に戻った後は、もう一度明日の持ち物を確認して今日の試験を振り返る。

(やっぱり自分の攻撃が全く通用しなかったことが悔しいな。技術はもちろん、フェイントや攻撃のパターンをもっと増やしていかないと……魔法の制御も特訓しないと、あんなミスをするようじゃ駄目だ。依頼が終わった後、時間がある限りギルドの訓練所を借りて特訓をしよう。そうと決まったら今日はもう寝よう)


 次の日の朝、女性の怒鳴り声で目が覚めた。

「こら!さっさと起きなさーい!」

「はい!ごめんなさい!……あれ?」

 勢いよく起き上がったが部屋には自分以外いない。一人部屋なので当然なのだが、さっきの声は何なのだろうか?そう思っていると再び声が聞こえてきた。

「そろそろ起きて朝食を食べて行かないと良い依頼がなくなっちゃうじゃない!」

 その声は壁の方から聞こえてきた。どうやら今の声は隣の部屋からみたいだ。良い依頼がなくなると聞こえたので隣の人も冒険者なのだろうか?

(それにしても助かった。隣の人のおかげで起きれたよ。誰かは知らないけど感謝しよう)

 すぐに着替えて依頼を受けるための準備ができたら朝食を食べ、冒険者ギルドに向かう。ギルドの中に入ると既にたくさんの冒険者がおり、受付は混んでいた。

「やばい、もう混んでる。依頼が残っていると良いんだけど……」

 急いで依頼板のところまで行き、目的の依頼があるか見ていく。

 しかし討伐依頼で残っているのはゴブリンの討伐だけで他は採取依頼や街中での依頼のみとなっていた。ホーンラビットやウルフの依頼は他の冒険者に先を越されたらしい。ゴブリンは魔石ぐらいしか売れる素材がないため人気がなく残っている。

「ゴブリンの討伐か。これにしようかな」

 依頼書を剥がしたところで後ろから「あっ!」と声が聞こえてきた。振り向くとそこには翡翠色の髪をした魔導士らしき少女がルイの持つ依頼書を見ていた。しかし依頼は早い者勝ちなので気にせずに受付に持っていく。結構並んでいたが、回転は速いみたいで五分程で順番が回ってきた。受付には、昨日対応してくれたサラさんがいた。

「この依頼お願いします」

「はい、分かりました。ギルドカードを預かりますね」

 サラはギルドカードを預かると何やら魔道具の上に置いて操作をしている。

「初めての依頼ですね。無理して怪我をしないように気を付けて下さいね」

「分かりました」

「はい、登録できましたよ。初めての依頼、頑張ってくださいね」

「はい、行ってきます」

 依頼の受注が完了した僕はとりあえず町の外に向かった。

まずはゴブリンを見つけないといけない。ゴブリンは洞窟や森の中に住み着くことが多いとギルドで聞いていたルイは森に向かっていた。洞窟はどこにあるかどうかも分からず、あったとしても一人で入るのは危険と判断したためだ。

(ついでに薬草なんかも見つけたら採取しておこう。そしたら戻ってすぐに依頼達成できるかもしれない)

 森をしばらく探索していると回復薬の作成に使われるハイレン草を四房、見つけ採取していた。採取がもうすぐ終わろうとしたとき物音が聞こえてきた。それを聞いてすぐさま採取を終え、木陰に隠れ様子を見る。しばらく様子を窺っているとゴブリンが三匹歩いているのを見つけた。

(見つけたけど三匹か。複数を同時に相手にするのは経験がないから不安だ。不意打ちで一匹倒すことができたら何とかなるかな。初めての実戦だから緊張する。まずは魔法を使わずに戦ってみよう)

「スー……ハ―……スー……ハ―……よし、行くぞ」

 短剣を抜いてからから呼吸を整えると、一匹のゴブリンに狙いをつけて背後から一気に距離を詰めて斬りかかった。

「グギャ!?」

 ゴブリンが接近に気付くが、既に短剣を振るう態勢に入っていた。

「まずは一匹! はぁ!」

 ゴブリンの首を斬り付けたが、緊張から半歩踏み込みが浅くなってしまい斬り込みが浅くなってしまった。

「しまっ…もう一回!…っ!」

 もう一度攻撃をしようと思ったが、別のゴブリンが棍棒を振りかざしていたため回避に移る。

(大丈夫、レイモンドさん程じゃない。見ていれば躱せる。ゴブリンの攻撃を受けないように気を付けていけば時間は多少かかるだろうけど倒せる)

 ゴブリンの攻撃を回避しつつ、何度も斬り付けていく。少し危ないところもあったが順調に傷を負わしていく。そして戦うこと十分、ようやく三匹の内一匹の動きが遅くなっていき遂に倒れた。

「よし、あと二匹!」

 あとの二匹も既に何度も斬り付けていたため、動きが鈍くなっていた。そのため、あまり時間がかからずに残りも殺すことができた。

「はぁ……多少時間はかかったけど、怪我をすることなく倒せた……」

 魔法を使えばもっと短時間で倒すことが出来ただろう。しかし魔法がなくても少しは戦えることが分かりルイは少し安心した。

(思ってたより疲れる。初めての依頼で緊張してたこともあるけど。まぁ、複数を相手にするのは初めてだったから多少時間がかかるのは仕方ないかな。慣れてきたら、もう少し早く倒せるだろうけど……。とりあえず解体して少し休もうかな)

 討伐証明の魔石を取り出し、死体の処理をする。取り出した魔石を手に持ち眺めていると、ゴブリンを討伐した実感が湧いてきて討伐できた嬉しさでにやけてしまう。

「ゴブリンが相手とはいえ、怪我なく討伐できたのは上出来かな。この調子でどんどん討伐していこう」

 しかし討伐ができたからといって調子に乗らないようにもう一度気を引き締める。先程の戦闘も危ないところは何度かあり、最初の攻撃で致命傷を与えることが出来なかった。最初に一匹倒せていたらもっと楽に戦えただろうし。一つ間違えればゴブリンの攻撃を避け切れずに怪我を負っていた。そのことを理解しているルイは、一戦一戦しっかり集中していこうと気を引き締める。

 ここで少し早めの昼食を取り一休みした後、再びゴブリンを探しに森を探索していく。そしてさらに二匹討伐し、そのすぐ後に三匹見つけて討伐した。

「ふう」

 これで八匹のゴブリンを討伐した。一度も魔法は使っていないため魔力は残っている。しかし、初めての依頼で緊張していたことから疲労もある。そのため十匹を超えたところで街に帰ることに決めた。

 そして探索していると何か音が聞こえてきたため、隠れて声のする方を探っていると六匹のゴブリンが歩きながら会話をしているのが見えた。

(六匹はさすがに数が多いかな? いや魔法を使えばいけるか)

「……ふう……【星魔法】流星(ミーティア)

 魔法を唱えた後、短剣を構えゴブリンに向かって一直線に走り出した。




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