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裏切り先で忠誠を

作者: 木林森

5分で読めるバトルものもどきです。

 敵は20。味方も20。しかし、数は同じでも全員が同じタイミングで1対1になれる訳ではない。どちらかの陣営が先に手を出さねば。更に言うと、どんなに仲が良くても動きには個体差がある。結局は最初の"1人"になる者は必ず生まれてしまう。


「まあ、分かってはいたけど。」


 見渡す限りにいるのは見たこともない顔ばかりだ。しかも全員こっちを向いてるんだよ。当たり前か。みんな俺をやっつけに来るんだから。ていうか俺も同じことをやろうとしてるんだけど。


先陣を切ってしまった。特に考えずに踏み出した足が、みんなより少し早く飛び出した。相手方も、たぶん俺みたいな立場なんだろう奴が俺との直線距離を少しだけ縮めてきた。


「開戦だ!」


どっかから声が上がる。やるからにはやってやる、とは思うよ。でも"なんで俺はこういう役目なの?" "安全なところとは言わないけど、せめて2列目とか3列目のグループに入れてくれないかな?"とは感じるよね。かっこつけてる場合じゃないもん。命懸かってるし。


 根本的な話をすると、実力社会だからね。優秀な人はみーんな王様のすぐ近くか、少し離れた1列目じゃないところで分隊長みたいなことやってる。じゃあ1列目にはどんな人がいるの?当然だけど、そういうとこに行けなかった奴。余った奴。要するに力がない奴。


「進め!一歩一歩、確実にだ!」


 うわ、また敵に近付かされた。敵軍も同じような考えで配置してるんだろうから、俺と向かい合ってるのは自分によく似た背格好の、少なくともエースではないだろうなあって人だ。怪我したら言葉くらいはかけてもらえるけど、結局誰もお見舞いに来てもらったり長い時間をとって励ましてもらえたりはしないタイプ。


「いざ尋常に勝負!」


 遂に戦う時だ。腰に差した刀を、生まれて初めて抜いた。大丈夫、勝率は50%はある。強い人からしたらそんなもんかよって思うかもしれないけど、大した力もない人間が勝つ可能性を5割も与えてもらえるってのはポジティブに考えれば破格の待遇だよ。


何度も言うけど、大した才能も力もないよ。努力だってしたけど、誰よりもぶっちぎりで修練を積んだかと聞かれれば、それは違いますねって答えちゃう。こんな俺でも1勝くらいしていいじゃねえか。そう―



負けた。戦場から、鏡やガラスに反射させることで見ていた姿が消えた。



「・・・さあ!我が軍の力となってくれ!」



生きてた。あれっ?


 今度は知ってる顔ばかりが目の前だ。あいつら、同僚だよ。・・・そうだ、生き返らせてもらったんだ。君はウチにいてこそ輝く人材だって声もかけてくれた。嬉しかった。


だから、ごめん。自分をただの捨て石としてじゃなくて、生かす戦力として必要としてくれる王様に凄い魅力を感じたんだ。初めてだったんだよ、平凡な人生でそんな言葉。今、これも初めて感じる力が一歩踏み出すと同時に湧いてきた。


「うおおおおお!!!」


―倒した。


 嘘だろ?だって、前の軍にいた時はまるで勝負にならなかったんだぜ?役職で表現したら、2ランクも3ランクも上の兵士だぜ?


「よくやってくれた。その力が目覚める時を、私達は待っていたんだ。」


気づいた。強くなっていたんだ。蘇生手術?のおかげなのか、潜在能力が覚醒したのかはどっちでもいい。俺は戦える。勝てる。本当に感謝してる。


「このお力、王の為に捧げます!」


勢いよく切り込む。今までにないスピードで、今までにない色の鎧を纏って、今までとは違う所属で。輝ける場所をくれた王様のために、敵陣のど真ん中へ俺は歩を進めた。




「・・・っていうのが将棋の"歩"っていう駒なんだけど、分かった?」


「分かったけど余計なストーリーが多すぎて入ってこねえよ。」

ありがとうございました。分かる方には、ギミックがばればれだったかも・・・

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