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19話 炭粉(スミコ)

「いってらっしゃいませ!」

 

 雪のちらつく新年三日目。黒き牡丹の扉の両翼に、赤と青の鬼火たちがずらり並んだ。

 

「留守はおまかせください!」「どうかご無事で!」


 めらめら燃え上がる明るい炎たち。彼らが見送り口々に声をかける中、とても長い馬車が、はるか東の帝都へ向けて出立した。

 馬車は鉄の馬四頭が引く、超高速仕様。二匹の赤い鬼火が操作する。

 車輪の付いた長い箱型の車両が三両つらなっており、座席部屋に寝台部屋、食事部屋と、三種の用途に使えるしつらえになっている。


 じゃりんじゃりん

 

 とはいえ居住性は心地よいとは言い難く、車輪の回転音も揺れもすさまじい。

 本来は巫女団が戦場に向かい、そのまま駐屯するための乗り物ゆえ、その装甲壁は全面くろはがね。とても分厚く頑丈な「箱」なのであった。

 

「これに乗るのは久しぶりじゃ」

「ああ、うるさいわ。これでは車中で練習できまへんやろ」


 乗り込んだ者たちは騒音に苦笑しあい、愚痴を飛ばしあった。みな頭から暖かい裏地を打った衣をかぶり、暖をとるついでに轟音も和らげるという有様である。

 しかしその甲斐あるほど馬車は速く、何百里という道をあっというまに駆け抜けて。山越え谷越え三日とかからず、陛下のおわす宮処(みやこ)へ行き着いた。

 

「ご乗車お疲れ様でした。あと十分ほどで下車できます。その前にどうぞ、小腹をお満たしくださいませ。焼きたてのお餅でございますう」


 道中、箱車に乗り込んだ婦人たちを世話したのは、めらめら燃える蒼い鬼火。家司(いえのつかさ)たるアオビであった。長年の主である正奥様のご上洛に、彼はしっかりついてきた。忠誠心まことに厚い忠義者である。


「あら、眠っておられますねえ」


 座席車の一番うしろの席に近づいたアオビは、頭からすっぽり黒い布をかぶっている娘の膝の上に、そっと餅を置いた。

 十四、五ほどにみえる娘はうつらうつら、寝呆けている。昼下がりゆえ、体が睡眠を要求したのであろうか。轍がでこぼこしたところに入ったのだろう、がっしんと馬車が一瞬揺れると、娘はハッと目を覚ました。とたん、何を寝ぼけたかあたりをきょろきょろ。ひどく慌てだす。

 

「出番? 出番ですか?」

「まだじゃスミコ。馬車は都に入ったところぞ」

 

 正奥様がくつくつ苦笑して、餅を食べよと促す。すると娘は喜びいっぱい、とても幸せそうな貌で餅を頬張りだした。のびる餅を持つ手のなんと黒いこと。栗皮色で、随分日焼けしているように見える。

 

「黒の塔に定時伝信を送ります」


 餅を配り終えたアオビは、小さな水晶玉を出してまばゆく明滅させた。


「留守番しておるしろがねに伝えてたも。毎朝毎夕の修行を忘れるな、とな」

「御意、正奥様。そのように通信文言を送ります」


 塔に送った伝信は、すぐに文書となって残される。鬼火よりも小ぶりな書記鬼たちが書室でしたため、正式な記録として倉庫に収めるのだ。

  

「記録は『事実』となるからの」


 黒い衣をかぶった娘をみやり、正奥様は喉の奥から出そうなため息を殺した。

 

(ああ……連れてきてしまった……) 


 餅を食べる娘の瞳は血のように赤く、ひと目で巫女だとわかる。そして胸元に垂れている長い髪は――


炭粉(スミコ)のようじゃ。これぞ、すめらのよき臣民じゃな」


 正奥様は、ぶっすり膨らませた頬を片手で抑えた。

 涙にほだされ、おそろしいことをしてしまった。娘のにこにこ顔を見るのは大変心地よいが、胸中にはえもいわれぬ不安が溜まっている。

 

「はぁ……早く帰りたい」 

「まだついてまへんで?」


 九十九(つくも)の方が呆れ声で突っ込んでくる。


「しかしなぁ、宮中に泊まるなぞ、まったく嫌な務めじゃ」

「それには同意しますけどな。まあ、馳走は出されますやろ」

「アオビの毒見で事足りるとよいのじゃがー」


 ぼやけば、食料はたっぷり積んでありますよと鬼火が胸を張ってきた。


「みなさまがお泊りになられるところは西手、後宮のど真ん中でございます。いやあ、陛下のお妃様方に四方を囲まれる、という大変な事態になるわけでございますよ。もしかして陛下がお神楽をごらんになったあと、めぼしい御方にお声をかけるんじゃないですか? ってことで、毒の一種や二種混入されるおそれは、おそろしく高いと言えましょう!」


 最悪の場合、食事は三食、こちらから持ち込んだもので賄える――

 鬼火は自信満々。燃える手でどつんと、頼もしげに胸を打ち叩いた。


「お任せください! 御所はワタクシの古巣。奥様方はこのアオビが完全無欠にお守りいたします。とりあえずみなさまには、呪いよけの御札をお配りしておきますね! さあ、みなさまがんばって、後宮でのご滞在を乗り切りましょう!」

「なんじゃこの、はりきりようは……」


 呆れ返って引きつる正奥さまの隣で、九十九(つくも)さまは肩をすくめ、ささっと胸元の隠しに色鮮やかな御札をねじ込んだ。


「水を得た魚やわ」


 それからほどなく車輪の音は、しゃんしゃん滑らかになり。黄金色の瓦輝く御所へと入った。車庫は、美々壮麗なる建物をはるかにのぞむ御池のそば。車が止まると同時に、黒髪の娘はようやく目を覚ました。

 正奥様はあくびをして目をこする娘に、固い言葉を振りかけた。


「スミコよ、重々、申し合わせた通りにするのじゃぞ。アオビに呼ばれるまで、ここから出てはならぬ。外に出てよいのは、本番のときのみ。そなたはここで寝泊まりするのじゃ」

「はいっ。練習しながら待ってます!」


 ぞろぞろ馬車から降りていく巫女団の者たちを、黒髪の娘は深く頭を下げて送りだした。流れる髪を床に垂らしながら、目を細くしてにっこりと。

 赤い眼膜を入れたその瞳は、何も映していなかった。

 まったく、何も。 


 

 

 

 雪で白く染まった庭園に、上機嫌な公達の笑いがからから響く。


「さてはて。新年七日目でございますか。宮処(みやこ)の宴にも、飽いてきましたなぁ」

「それゆえの若菜摘み。とっぷり胃を休めようぞ」

 

 ここは御所の東手。数多在る寝殿のひとつにて、艶やかな廊下をしずしず進む公達が二人。黒烏帽子に絹の白衣の出で立ちで、なんとも軽やかな歩調で進んでいる。

 

「しかし歯固めの儀では、唖然としましたな」

「いかにも。陛下へのご献上物、はなはだ豪壮。餅鏡の大きさには、度肝をぬかれたわ。さすがは太陽神殿よ」

「太陽の者どもは焦っております。龍蝶に夢中な陛下の気を引きたくて、あの手この手と試してきやる」

 

  庭園に潜むアオビは、ほんのり山型の廊下を往く公達(きんだち)をじいっと見つめ上げた。くくくと、扇の下から悦な笑いを漏らされた方は、たしか月の大神官のトウイさまではなかろうか。 

 古巣に戻った鬼火はさっそく自ら志願して、偵察に出たのであった。もともと宮中に仕える鬼火とまったく同じものゆえ、だれも彼を見咎めるものはない。さりげなく敷地内の同類に聞けば、いとも簡単に情報が手に入る。


「ここが若菜摘みの待合場所……」


 本日宮中では、無病息災を願って七草を摘み、それを入れた薬粥を食す儀が行われる。

 ここはそのための、殿方専用の集合所。ご婦人たちは、はるか西手の寝殿に集まり、敷地内の薬草園にて落ち合うことになっている。

 御所は東西対照の美しい都城を成し、真っ二つに別れている。

 中央に位置する内裏を挟んで、官がつめる政庁は東手、後宮は西手に配されているのだ。これは東の方角は天照らしさま、西の方角は月女さまの加護を受けているとされているからだ。


「おめでとうございまする!」


 月のトウイが、月の公達がたまる室に入ったようだ。にぎにぎしい歓迎の声が聞こえてくる。


「明日はいよいよ、女官叙位。トウイ様、ご養女さまの宮中入りが宣じられますぞ」

「いや実のところ、輿入れが決まるとは思わなんだ。龍蝶さまさまじゃ」

「しかしマカリ姫さまに、腹違いの妹君がおられたとは」

「姫亡きあと認知したのだが、娘にそっくりじゃと、わが妻は喜んでくれた」

「それはなによりですなぁ」

 

 月神殿の権勢は今や絶頂。龍蝶を献上して以来、陛下は月の者を重用することはなはだしい。その寵に乗じて、大神官は養女を後宮へ入れることに成功したようだ――


「なんじゃと? 月のトウイが、庶子の娘を宮中にあげる?」


 西手に建ち並ぶ、とある小寝殿。そこに身を落ち着けた百臘さまは、鬼火がさっそく報告してきたことに渋いお顔をされた。

 御所は広大にして、乗り物がなくば移動に時間を要する。東西に分かる中参道の幅は、ゆうに家屋三軒分はある。寝殿がならぶ後宮は小さな街がすっぽり入るほど広い。雪がちらつく中を走ってきた鬼火はまだ、めらめら肩で息をしていた。


「ふん、その娘とやら、きっと庶子ではなかろうぞ。おそらくは、本物のマカリ姫であろう」

「そうなのでしょうか?」

「まあ他言無用じゃ。して、我が君は見つけられたか?」

「はい、東殿の、太陽神官さまたちがお集まりになる室におられました」


 湧きかえっている月ノ室にくらべ、太陽ノ室は通夜でもしているような静けさ。漂う空気はすこぶる悪そうであるが、主人はつつがないようだと、アオビは答えた。

 この小寝殿は陛下より黒髪の柱国さまの巫女団に貸し出されたもの。しかし西手にあるゆえ、陛下以外の男子は入禁。柱国さま自身は立ち入れぬという制限がついている。ゆえに張り切るアオビは、主人の様子もしっかり確認してきたのだった。


「まあ、あの御方は煮ても焼いても死なぬわ」


 正奥様の反応はしごくあっさり。それよりなにより気になるのは、明日より数日かけて行われる御斎会(ごさいえ)なる儀式のこと、これ一点であった。 


「さて本題じゃ。他の巫女団の陣容はいかほどか?」

「はい……」


 アオビが神妙にざっと見てきたことを話すと。

 百臘さまは、怒りが入り混じったような悲鳴をあげられた。


「はあ?! 不知火(しらぬい)どのの巫女団は三十人もおるじゃと? 不知火さまの奥方は、月の姫を入れて三人ときいておる。まさかひとりに九人も、侍女がついておるのか?」


 儀式は三色の神官族たちに国家安泰を祈祷させるというものだ。 普段は神官たちだけで行われるが、今年は陛下の思し召しにより、柱国将軍の巫女団がすべからく呼ばれている。


「おそれながら、八つの巫女団はすべて西手に集結しておりますが、人数がひと桁なのはうちだけのようで……」

「どこの巫女団も、大増員しよったのか?」


 百(ろう)さまは舌打ちなさって、扇を無造作に仰いだ。

 

不知火(しらぬい)将軍も大概じゃが、金烏(きんう)将軍のところは ……六十人?! なんじゃその、きちがいじみた数は」

「さすがは、ご筆頭の柱国将軍さまですよねえ」

――「数を打てば当たる。下心がみえみえや」


 背後からやんわり、くすくす笑いが刺してくる。


「どうせみな、日雇いの使い女。鈴鳴らしで割増しする気ですやろ。そのごろごろ芋の子の誰かにお手がついたら儲けもの、という魂胆ですやろな」

「ふん、九十九(つくも)は相変わらず口が悪いのう」


 几帳の向こうをちらりと見れば、黒の塔の巫女団員が輪になって座している。輪の中には、伏せられた大きな貝がずらり。正奥様が持ってきた貝桶で遊んでいるのだ。

 よかったら若菜摘みに参加をという招待状がきたのだが、参加が任意であるのをよいことに、百(ろう)さまはご祈祷の準備をしたいと丁重に断った。今上陛下の視界に入ることは、極力したくないらしい。


「わが巫女団は、極力目立たぬようにせねばならぬというに。少なすぎてはかえって悪目立ちするやもしれん」

「印象に残らぬよう、衣装も曲も振り付けも凡庸にしたらよろし」


 すうっと背筋美しい九十九(つくも)さまは、これやと見定めた貝を拾いあげ、裏の面を眺めた。描かれているのは、金箔まとう鶴の絵。中央におかれた貝と絵が揃いなので目を細める。合わせてみればぴったりだ。

 二枚貝は絆かたい(つが)いのようなもの。他の貝とは決して合わさらない。


「それで滞りなく済めばよいが。アオビ、夕膳の毒見が済んだら、スミコの世話を頼むえ」

「はいっ、お任せを!」


 生き生きと返事した鬼火が退出すると、百(ろう)さまは輪の中に戻られて、貝桶からひとつ貝を取り出した。

 伏せられた貝の中央に置かれたその絵柄は、いかづちまとう龍。金雲の中に、半ば隠れている。


「おや。神獣はんがお出ましやわ」

「ミカヅチのタケリ……龍どもの父君じゃな」


 先の戦いで龍は二頭、失われた。御子を殺された神獣は、もしお目覚めであったなら、地を揺るがすほどお怒りになったであろうが……。

 

「タケリさまはいまだ眠っておられる……」


 帝都たるこの地は、龍たちを産んだ神獣ミカヅチのタケリを封じている聖処であり、かつてはそれにふさわしい名で呼ばれていた。

 しかし五世紀前に御所がここに遷されてからは、単に「帝都」、もしくは「宮処みやこ」と呼ばれている。

 帝がおわす――それ以外の意味を御所に込めてはならないとするのが、すめらの伝統だ。


九十九(つくも)。そなたは凡庸にと言うが、わらわは全霊をかけるぞ」


 百(ろう)さまは渋い顔でつぶやいた。

 戦の勝利を願うは当然のこと。おのれの真の願いはさらにあると。


「わらわは歌うぞ。これ以上、兵や龍が殺されるような戦が起こらぬよう。恐ろしいタケリ様を、目覚めさせる事態にならぬように」

「ならばせいぜい、声を張り上げなさったらよろし」


 九十九(つくも)さまはいとも簡単にひょいと、龍の絵の貝とつがいのものを見つけてぴったり合わせた。


「そんではうちも、全力で奏でさしてもらいますわ」


 

 

 

 ぐつぐつ粥が煮えている。

 クナは火鉢の前にしゃがんで、鬼火が粥を作るのをにこにこ顔で待った。腹に優しい薬草が投じられた鍋は、なんともおいしそうな匂いを醸している。嗅ぐだけで体が温まりそうだ。


「今日は七草。みなさま今宵は、お粥をお召し上がりですので」


 元旦から餅ばかり腹に入れていたので、正直この献立はうれしい。

 クナはなんとも幸せそうに粥をすすった。

 

「嬉しそうですねえ」

「はい。連れてきてもらえるとか、信じられない……すごく幸せです。夢みたい」

 

 みなと同じところに寝泊まりできぬのは、正直心細い。なれどこうして望みがかなうとは、娘は背中から羽が生えたような心地だった。

 百(ろう)さまも九十九(つくも)さまも、クナは連れてはいけぬときつく仰った。

 だが涙をこぼしてどうかと願ったら、お二人とも、クナではない「別人」ならばと折れてくださった。

 そうして百臘さまは染め粉でクナの髪をそめ、まっかにみえるという目膜をはめてくださったのだった。どちらも大変高価な化粧品である。


「百の上臘(じょうろう)様も、おぐしを染めてらっしゃるっていってました」

「ですです、正奥様はお美しい金髪をお持ちなのですよ。なのになぜか、黒く染めておられるのですよねえ。目膜はどうですか? 痛くないですか?」

「大丈夫です」


 黒髪のクナはにっこりうなずいた。

 お二人の優しい気持ちに、黒い娘は感謝してもしきれない。彼女たちのために命を投げ出してもよいと、今や真剣に思っている。

 

(最高の舞を)

 

 そして娘は心に誓うのだった。


(連れてきてよかったって、思ってもらえるような舞を、舞わなくちゃ)


「あ、そうそう、陛下のお飼いになっておられる龍蝶。そのお名前を耳にしましたよ」

「ほんとですか!」


 このアオビもとても優しい。娘が龍蝶を気にしている事を知ると、快く情報収集を請け負ってくれた。


「今はなんと、陛下と一緒にお住まいです。それで内裏の太常殿から名をとりまして、みなさまは太常の君と呼んでおります。ですが陛下は、シガとお呼びです」 

「そ、それ……!」


 妹でまちがいないと、クナが顔色を失ったとき。突然、ガタタと鉄の箱車が揺れた。

 クナは両手で口を押さえ、こみあげた言葉を飲み込んで息をひそめた。鬼火も炎をきゅうと最小限に縮める。

 箱車は他の巫女団が乗ってきた車と同様、車庫に入れられている。ほぼ無人のはずだが、ガシンガシンと車の壁を叩いてくるものは、なんとひとりではなさそうだった。


「なんだこの車。随分くたびれてるなぁ」 

「それで? この車庫全体に広がるのか? この鉄車もふっとぶ?」

「ああ、余裕で焼ける。巫女団の車は全部おじゃんさ」


 クナはそろろと壁に寄り、耳を当てた。おそろしい言葉を発した者たちの足音が、車庫の外へと足早に遠のいていく。


(え?! 今の聞き間違い? いいえ、たしかに、焼けるって……)


 青ざめるクナのそばでバチバチと、アオビが緊張の炎を放った。


「どうかしましたか?」

「あの、もしかしたらこの車庫が……燃やされる……? かも? そんな話し声が……」

「なんと不審者ですか?! え、衛兵を呼んできます!」


 鬼火が慌てて箱車の扉から飛び出していく。と同時に――


 ぼん、と、凄まじい爆音が車庫の奥の方で轟いた。


「こ、これは!! スミコ様、た、退避を――!!」

 

 鬼火が叫ぶ。娘はとっさに衣をひっかぶり、壁伝いに出口へ急いだ。

 しかし熱と轟音の勢いはすさまじかった。炎は、箱車に向かってみるみる迫ってきた。

 まるで何もかも飲み込む津波のように。

 一瞬にして。



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