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18話 大晦日(おおつごもり)

 指先を伸ばす。手を反り返らせるようにして止めたとたん、息を停止させる。

 耳に入る、拍子正しい鈴の音。

 

 しゃん、しゃん、しゃん、しゃん。

 

 凪いでいた風は、その音に身を投じた。

 一歩引くのを皮切りに、ゆるりゆるり。足を動かし、腕を薙ぐ。

 長く垂れる袖が、空気をはらんでたゆたう。

 おおらかな動きでゆっくり回転する風は、徐々に動きあるものに変化して。

 

(ふわり。ふわり。ふわり。ふわり……)


 穏やかなるそよ風となった。


(ほわり。ふわり。ぴかり。ふわり……)


 風なる者の脳裏に浮かぶのは、ふるさとの野辺。

 頬に当たる暖かい日差し。たんぽぽやすみれのどことなく懐かしい匂い。かわいらしく鳴く小鳥たち。

 そんなものを運ぶ春の使いになったつもりで、風なる者は舞う。

 

 しゃん、しゃん、しゃん、しゃん。


 鈴の音の間隔が速くなる。じゃらんと、銅拍子の雷鳴が轟く。

 ふぁーと雅に鳴っているのは(しょう)だ。神に捧げるお神楽にて、神官が使う楽器である。

 伴奏がにぎやかな夏の様相を呈してくると、風なる者は変化した。

 くるり、くるり。すばやく回転を重ねる。回るごとに速く。前よりも倍ぐらい速く。


(つむじ風)


 勢い増す風は、風の文字を手で大きく描いた。それは翼広げて飛ぶ大鳥の形。

 うねる空気がかすかに音を立てる。

 

(かまいたち)


 風よ速く。もっと速く。

 銅拍子がじゃんじゃんせわしなく鳴りひびき、鈴の音を圧倒する。

 沸き立ち起こるは、雷混じりの入道雲。激しい夏の嵐がやってくる。


(はやく、はやく。さあ、次はいよいよ――)


 春の次は晴れやかなる豊穣の秋。風はさらに喜び踊る。

 はずなのだが……


「ふええっ?!」


 くるくる回る風は、けつまずいた。無残によろろと失速してしまう。


――「あきまへんな」


 とたん神楽の音色が止まり、九十九(つくも)さまの鋭い声が刺してきた。

 

花音(かのん)の回転数には、まだまだ足りまへん」 

「すみません!」 


 クナは深く頭を下げた。花音(かのん)とは、超高速回転で舞う技のこと。花園の花びらを舞い上げるほどの、風の嵐を巻き起こす技である。


「まあ、一(ろう)では土台無理なんが当然や。できはったら、かえって恐ろしいわ」


 花音(かのん)はいわば免許皆伝の技。ひと通り舞を覚えただけでは到底、その境地には至れない。何十(ろう)と修行を重ねてようよう、会得できるか否かというものらしい。

 クナは本格的に修行を始めてまだ二週間ほどだ。技をものにするには、果てしなく遠い位置にいる。


「明日の本番では、ここはつむじで舞いはりや」

「でもそれじゃ、風がたりません」

「いいや、つむじでよろし。無理は禁物や」


 本日は大晦日(おおつごもり)

 明日のご来迎にて、巫女団は三色(みしき)の神々を拝する儀を行う。

 クナは舞い手として参加するよう、百(ろう)さまに命じられたのだった。


(うれしい! ああ、まだしんじられないわ)


 クナの故郷では、村一番の器量良しがその晴れやかなお役目を任されていた。村の娘たちにとっては憧れのお務めである。

 自分には一生お株が回ってこないもの。そう思っていたクナは、嬉しくてたまらない。だからうまく舞いたいという気持ちも強かった。


「つくもさま、あたし大丈夫です。なんとか花音を出します」

「いいや、無理せんでよろし。さて、練習はここまでや。これから鬼やらいをせなあきまへんで」


 新年を迎えるべく、黒の塔に住まう者たちはせわしく動いた。

 すめらのやんごとなき家では宮中と同じように、大晦日(おおつごもり)追儺(ついな)という行事を行う。

 そこかしこ至るところに灯籠を下げて家内を明るくし、悪霊祓いをするのだ。

 ささっと蕎麦がきの夕餉をとったあと、巫女団は塔のてっぺんに集合した。

 

「先導たる方相氏の役は、戦司(いくさのつかさ)に任せる。侲子(しんし)を引き連れて塔のてっぺんから鬼を追い立てるゆえ、巫女団は祝詞を唱えながら、そのあとについていくのじゃ」


 巫女団長の百臘さまがりりんと鈴鉢を鳴らし、儀式の始まりを告げると。


「鬼は外ー! 鬼は外ー!」


 めらめら燃える戦司(いくさのつかさ)が、声出しながら動きだした。

 ひゅんひゅん、ひゅひゅん。手にもつ弓を楽器のように鳴らすその後ろに、振り鼓を打つ鬼火たちが続く。

 振り鼓は、赤子に持たせるでんでん太鼓のようなもの。ぱらぱらぱら、という乾いた音こそは、悪魔や鬼が嫌う聖なる音であるという。

 本来、悪霊を払う侲子(しんし)は、童が務める。いとけき子どもの声は、邪気を払うといわれているからだ。しかしこの塔には子どもがいないので、巫女団長は鬼火の燃焼音をその代用としたのだった。


「鬼は外ー」「鬼は外―!」 


 めらめらぱちぱち燃えたちながら、鬼火たちが口々に叫びたてる。

 鬼やらいの行列は、十五階ある塔の各階をゆるり練り歩き。螺旋階段を降りていき。ついに一階の塔の入り口にくると。 


『今年今月今日今時 大塔内に神祇官宮主の祝ひまつり 敬ひまつる ……』 


 百(ろう)さまが、長々と祭詞をお唱えになられた。

 巫女たちは追い出された悪霊が戻ってこぬよう、その祈りの言葉を何度も反復した。来たる年がどうか、平安であるようにと。





 鬼やらいの儀を終えると、巫女団は上階の舞台に昇った。これより夜通し神楽を奏で、新年に初めて昇る天照らしさまをお迎えするのである。

 塔についている巨大な時計が、新しい年を告げるや。いよいよ始まると、クナは自分の頬を両手で叩いて活を入れた。

 さららと冬の風になびく巫女たちの衣は、いつもの衣の音より軽い。おそらく衣一枚と袴しかまとっていないだろう。しかし舞役を任されたクナだけは、いつもよりしごく立派な出で立ちをさせられた。


「天照らしさまが昇られるまで、がんばるがよろしい。数度休憩を入れるが、ばてぬようにの」

「はいっ!」


 団長の激励に息ごんで首肯を返せば、重い頭冠の飾りがじゃらと鳴る。

 顎で紐を結んで固定する形の冠には、珠のすだれが幾本も垂れている。

 白き綿蟲の衣の上には、さららとした手触りの薄裳(うすも)羽衣(はごろも)と呼ばれる長帯のような布を被せられた。

 ふわり軽いその布は、舞ったらきっと美しく、宙にたなびくことだろう。


(すごいわ。すごい。あたし、ほんものの舞巫女さまだ)


「天にかしこみ、天照らす日輪の……」


 百(ろう)さまが、三色の神々を讃える歌を歌いだす。

 笛の音が静かに、その淀みない声に寄り添う。

 銅拍子が打ち鳴らされると同時に加わるは、(しょう)の音色。九十九(つくも)様は本日は琵琶でなく、真神楽にて使われる笙を担当なさっている。なんとも雅な音色だ。


 しゃんしゃん。しゃんしゃん。


 聖なる神楽が舞台に満ちる。

 クナは練習した通りに、凪からそよ風となり。しばらくゆたりと舞ったあと、徐々につむじ風となった。

 くるりくるり。回転が楽の音をかきまぜ、聖なる気配を押し広げていく――


(もっと回りたい。これじゃおそいよ)


 九十九(つくも)さまは、無理するなと仰ったけれど。

 

(大丈夫よ。もっとはやくでも。大丈夫よ)


 クナは背伸びをしてしまった。

 

(大丈夫。あたし、できる……)


 激しい回転に裳が体に絡みつく。真綿でしめつけてくるような感覚。

 なれどクナは構わず回った。渾身の力を込めて――


(大丈夫。大丈……)





――「しろがねはん!」

「ふあっ?!」

 

 鋭い呼び声にクナは我に返った。

 遠のいていた意識が一気に戻る。背が冷たい。

 地に倒れているのだと気づいて、クナはみるみる青ざめた。


「う、うそ! 気をうしなった? いつのまに?!」

「身の程をわきまえや! 技量なしなしの一(ろう)のくせに!」


 九十九(つくも)さまの怒声が降りかかる。

 神楽が止んでいる。クナが倒れたので中断を余儀なくされたのだ。

 聖結界は波動を持続させることで力を増幅させ、広範囲に広げていく。ゆえに一度波動が途切れてしまうと、できかけた結界の力が萎んで消えてしまう……。


「も、申しわけありません!」


 神楽を止めるなど。なんと不吉なことであろうか。


「裳がそなたの体をきつう締めたのじゃ。ふわふわしているからといって、侮ってはならん」

「まったく。これが宮中やったら、首が飛んでますわ!」

 

九十九(つくも)さまがとうとうと説教なさる。

 功を得ようと焦るのは良くない。

 巫女団はクナの力量に合わせて演奏している。それを重々、忘れてはならぬ――。


「技量より、みなと合わせる呼吸が、何より大事なんやで」

「合わせる……」

「そうや。あんさんはひとりで舞ってるんやない。休憩したら仕切り直しや」

「は、は、はい!」


 がちがちになりながら、クナがはじめの凪の型をとると。周囲からくすくす笑いが起こった。


「休憩といわれたじゃろうに。肩に力が入っておるぞ」

「あ?! ひ、ひえっ! ごめんなさいっ」

「顔も緊張しておるえ」

「は、はいっ」

「力を抜きやれ。すごい顔じゃ」


 百(ろう)さまがトンと肩に手を置いてくる。

 

「まあなんじゃ、神事のお務めは緊張するものじゃが、顔は笑っていた方がよろしいわ」

「はいっ、がんばります! うひゃっ?」

 

 言われたとたんみぞおちをくすぐられ、クナはびっくりして身を捩った。いきなりさわってきたその手の感触は、百(ろう)さまのではない。


「あひゃひゃ?!」

「――これでだいぶほぐれたと思いますが」


 弄ってくる手の主から冷静な声が発せられた。塔に残った正奥様の侍女だ。神楽では笛を担当している。


「上出来じゃアカシ。しろがねの顔がほろけたわ」

「裳をお忘れですわ」

「あ、はい……うひゃひゃ?!」


 九十九(つくも)さまのもとに残った侍女もクナをくすぐってきた。

 アヤメという名の娘だ。

 

「そないに落ち込まんといてください、しろがねさま。私なぞも、ひと桁(ろう)のころはまあ、ひどいありさまで」

「みな通る道じゃわな」

「さようでございます」

「ありがとうございま……きゃははは! いえもう! かんべんしてくださいっ。かんべ……あははは!」


 侍女たちは容赦なし。クナは目尻から涙が出るほど存分に体をくすぐられ、笑わされた。


「黒の塔の巫女団五人。仲ようするのが、呼吸を合わせるのに一番じゃろうな」

「ですね。一致団結です、ご主人様」

「へえ。しろがねはん、これからもよろしゅう」

「は、はい!」

「おや。また顔が鉄板に」

「ひっ……ひえええ!」

 

 アカシなる侍女がクナのほっぺたを掴んでびろんと引っ張ってくる。


 合わせる。


 言われたその言葉を、クナはふがふが慌てつつも噛みしめた。


(合わせる――)


 再び神楽が鳴り出す。

 クナは今度は卒なく無難に舞えた。まだまだ緊張で体は理想の半分もいかぬ動きではあったけれど、止まらずに波動を広げ続けることができた。速度を上げたいという誘惑をぐっとこらえ、楽の音に身をゆだねると。


「それでええんや」


 九十九(つくも)さまから合格のお言葉をいただけた。


(よかった……できたわ!)

 

 達成感が胸に満ちる。なんと気分良いものであろうか。うきうきと、体が軽くなる気がする。


(うれしい……できた。あたしできた。うれしい……!)





 巫女団はしばしば休みながら、明け方まで神楽を続けた。

 そうして夜の匂いが薄れてきたころ、ひたりと神楽が止められて。ご来迎じゃと、百(ろう)さまが夜明けを告げた。


「これより四方拝を行う。まずは東に向かって拝むぞ」

「四方……?」


 すっと舞の締めの型をとったクナは首をかしげた。


(神様は三色……拝むのは、三方のはずじゃ?)


 東に向かって天照(あめて)らしさまへ。西に向かって月女(つきめ)さまへ。南に向かってまたたき様へ。

 故郷の小さな神殿では元旦の朝、三方拝なるものを行っていた。

 北天は空座。神はおられぬとされているのだが。

 

「北の白星さまにこの祝詞を捧げまつらん」


 巫女団は東、西、南へ深々と礼拝したのち、北天にも頭を下げた。

 

(しろぼしさま?)


 夜通し楽を奏でた巫女団は、それから松の間に全員集合。お務めを終えたねぎらいの言葉を団長からいただき、餅を配られて、和やかな宴が開かれた。

 熱い焼き餅に熱いお茶。たちまち体はほくほくほっこり。クナは嬉々として餅にかぶりついたものの、北に配された神様のことを思ってまた首をかしげた。

 

「おやしろがね。不思議そうな顔じゃな」

「うちの村では、しろぼしさまっていうのはおられなかったので」

「ふむ。庶民の間では昔ながらの三色の神しか崇めぬのじゃな。しかし宮中や神官族の間では数十年前より、北天に白星さまが加わった。ゆえにご来迎では、四方拝を行うようにと定められておる」


 百(ろう)さまはもっと食いやれと、クナに餅を押し付けた。


「白星さまは半世紀前、大陸を襲った災厄を食い止めた救い主。大陸同盟が公式に『聖女神』と定めし御方じゃ」

「さいやくをとめた……?」

「無数の星が地に落ちたとき。地はごうごうと焼き尽くされた。幸いすめらの国はさほどの被害を受けなんだが、西国の方はひどくてな。一夜にして滅んだ国がいくつもあった。このままでは生きとし生けるもの皆滅びると案じた白星さまは天へ昇り、さらなる星が落ちるのを防いだそうじゃ。白星さまがおらねば、大陸の生き物は死に絶えたであろうと言われておる」


 すめらにおいてかの女神の(やしろ)は一つもない。崇められるのは元旦のみ。(まつりごと)には一切関係しない神であるからだ。

 

「しかし他国では信者が大勢おるし、神殿もあまた在るようじゃ。女神はそなたのようなしろがねの髪の持ち主。ゆえに龍蝶であったやもしれぬと伝えられておる」


(しろぼしさまは……龍ちょう?)


 クナはどきりとした。百(ろう)さまはその女神の名を言わなかったが、クナはその名を言えるような気がした。


『昔……天から災厄が振ってきて、海が焼け干上がったとき……

 あの子は災厄を止めようとした……』


 天の浮島で柱国さまが語った「あの子」こそ。まさしく、白星さまではなかろうか? 


(そんな……「あの子」って、ほんものの女神さまなの?!)


 柱国さまの心の中だけでなく、多くの人民に崇められる大いなる存在?

 凄すぎて息を呑むしかない。そんな女神に愛されたという柱国さまも、おそろしく大層な御仁に思える。はるか遠く、雲の上の人ではないか。

 

(届かないわ。あたしがちょっと手を伸ばしたぐらいじゃ、とうてい……) 


 クナは哀しげに鼻をすすりあげた。舞の務めを果たせた喜びが、たちまちしゅんと萎んでいく。

 柱国さまに、偉大な女神のことを忘れさせようなど、なんと恐れ多いことか。考えるだけで不遜ではないか?

 心にどっと諦観が満ちたそのとき。

 百(ろう)さまのそばにある大鏡から、家司(いえのつかさ)の声が聞こえてきた。

 

『申し訳ございません、新年早々のご無礼お許しくださいませ。急報でございます!』


 聞き覚えのある声は、なにやらとても焦っている。

 さもあらん。その内容に巫女団は度肝を抜かれた。

 

『黒の塔の巫女団が、今上陛下に招聘されましてございます』

「なんじゃと? どういうことじゃ?」

『勅令により、八人の柱国将軍さまらの巫女団がすべて招集されます。年始の節会(せちえ)にて、神楽を奉納せよとのこと。陛下の御前にて、戦勝祈願の祈祷を行えとの思し召しにございます。

 急ぎ上洛のご準備を、お願い致します!』


 柱国将軍八人全員の巫女団を集める?

 百(ろう)さまは、なんと大掛かりかと呆然となさった。


「これはいかなる意味合いのものじゃ? なにかの陰謀か?」

「陰謀でなくば新年早々、総力戦をやりはる気なのですやろ」


 焼ける餅を突っつきつつ。九十九(つくも)さまが怒りを押し殺した声をお出しになった。

 大規模な祈願を行うとはそういうことだ。新しき年、すめらは自ら血濡れた戦を求める――そう宣言するも同然である。


『ご宿泊なさる御殿は、主さまがご用意されるとのことですが。しろがねさまは塔にとどまりますよう。決して外にはお出になりませぬよう。かく、我が主さまは思し召しです』

「そんな……!」


 舞手のいない巫女団など、みすぼらしいことこの上ない。陛下や太陽神殿の心象を悪くしている今、四人だけの神楽団は、主さまの面目を潰してしまうのではないか。

 深く懸念するクナだったが、これは当然じゃと、奥様方は得心の反応を見せた。


「では留守を頼むぞ、しろがねの」

「ま、待ってください。あたしも――」

「龍蝶のあんさんは、陛下の前には出られませんやろ」

「でも! 舞手は必要だと思いますっ」


 クナは慌てて床に手をつき、額を当てて願った。

 

「お願いします。どうかお願いします。あたしも、連れてってください!」


 ひとり置いていかれるのは嫌だった。燦然と輝く女神とたった独りで相対するなど。


(無理。あたしきっと変になっちゃう。ひとりでここにいるなんて、無理)


「一所けんめい舞いますから。龍ちょうだって、分からないようにしますから。どうか!」 


(こわい。こわい。ひとりはこわい……!)


「どうか――!」


 冷たい床に、甘露がひと粒落ちた。

 クナの目から落ちたそれは、たちまち松の間に芳香を醸した。

 とても哀しく甘い香りを。

 

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