11話 星黒衣(せいこくい)
黒き大樹そびえる森の中。
月が死んだ暗闇の夜のもと、ごおうごうと樹の一本が唸りをあげる。
なれどそれはまことの大木にあらず。
宵の気吸い込むそれこそは、漆黒まとう天突く塔。
万年杉にまぎれ建ち、せり出す樹肉の舞台には――
「イイイイイイイダアアアアアアイイイイイイイイイ!!」
どろどろはりつく、肉の塊。
「信ジランネエエエエエ! イテエエ! イテエヨオオオ!」
「まあ、レヴテルニの金獅子の咆哮は、風をかまいたちにするというからな」
「違ウッ! ソイツ二切ラレタノハ、首ダ! 首ハ、スグニ繋ゲタサ!」
肉塊が、ごおうごう。怒り心頭で怒鳴りたてるそばに、たたずむ影がひとり。
月光のない夜に沈んで、長い黒髪流れるその姿は漆黒。顔はまったく見えぬ。ただただ、水晶を打ち鳴らしたような美声がりんと響く。
「まあ……もう一歩踏み込んでいたら、完全に切り落とされていただろう。かろうじて皮一枚残って命拾いするとは、悪運の強い奴だ」
「アアソウサ、オレハオマエト同ジ不死身ノ化ケ物サ! デモ痛イノハナァ、チャント感ジル。今痛イノハココダ!!」
ずどんと地響き鳴らし、肉塊が足のごときものを影の前に突き出す。
無残に爛れたその棒のような塊には、大穴がぼっこり。緑に苔むした肌からびちびちと、長い細虫が無数に沸き出てそこへ集まっている。傷口に吸い付いてうねるそれらは、組織再生を行う蟲であるらしい。
「なんだこの穴は」
「アンタガヤッタンダロウガァアアア!!」
ずどんずどんと、苔むした肉の塊は腹立たしげに何度も、無残な足を地に踏みつける。
しかし影は、まったく悪びれなかった。
「なんだ、吹き飛ばされただけじゃなかったのか。だが翼に穴が開いたわけではなかろう。飛ぶのは支障あるまい」
「飛ビナガラ再生ハ出来ン!」
「不器用だな」
「ウルセエ! 少シハ手加減シロ!」
「しているつもりだが……この塔はひよわすぎないか? なぜに怒鳴っただけで柱が折れる? ガタがきているにもほどがある」
「ガタツイテナンザイネエ! アンタガ、オカシスギンダヨ!」
「こんな安普請なところに置いていって大丈夫だろうか……」
「オイコラ、聞イテナイダロ! 待テ!」
肉塊の怒号を背に、漆黒の影はかつりかつり。固く端正な足音をたて、せり出した肉樹の舞台の端に控える鉄の塊に近づく。目の前に影が近づいたとたん、それはカッと目を光らせ、黒がねの両翼を広げた。
「待テ主! 出テ行ク前ニ慰謝料ヨコセ! 見舞い品! エサ!!」
それは全身金属。竜のようであるが竜ではない。足はあるが、腕は翼と一体化している。
その背に在る窪んだ各坐に影が乗り込むと。黒がねの機械竜はギシャアとひと声金属音をあげ、闇空に舞い上がった――
「エサヨコセコノヤロウ! 俺ニアノ甘イノヲヨコセ! 飯子! 俺ニ飯子ヲォオオオオッ!」
ごおうごう。肉塊の怒鳴り声に塔が揺れる。あたかも身を竦ませ、おののくように。
『……というわけで、主さまは屍龍どのに騎乗するのをあきらめたのデス』
白いヒノキ床の室内に機械的な声が響く。
『鉄の竜にお乗りになり、ご出塔。帝都へ向かわれたとのことデス』
びいん。
琵琶の音をひと弾き鳴らした狐眼の夫人は、傍らに置いている銀鏡をちろりと睨んだ。
すめらの巫女にとって、鏡は必須の携帯品。この塔では主さまが巫女団員に、人工精霊を宿した鏡をお下しになっている。
夫人は四角い台座に嵌まる鏡を、朝昼晩の三回、鏡の間に沈めている。鏡は|家司〈いえのつかさ〉から、もろもろの伝達事項や情報を受け取ってくるのだ。
「我が君は今朝方戻りはったばかりやのに。夜を越えずにご出塔しはったと?」
『はい、奥さま。今上陛下が、主さまに行賞をお与えになられるため、お召しになったそうにございマス』
格子窓の向こうは真っ暗闇。鏡は晩の情報を受け取って戻ってきたところである。
一日中ごうごう龍が文句をたれてうるさかったが、先ほどようやく鎮まった。今は静かな夜気が窓から流れ込んでいる。
「朝待たずなんて、なんやせわしない」
それは面妖と眉をひそめる夫人に、鏡は三人目の側室のことも伝えてきた。
『しろがねさまはご体調つつがなく、今夜は主さまの寝室でお過ごしになるとのことデス』
「我が君がいてはらへんのに、そこで寝はる?」
『はい、奥さま。主さまの思し召しなのデス』
主さまの部屋の壁は十枚はがね。窓や扉を閉めれば音ひとつ聞こえず、有事あらば鉄壁の避難所となる。この塔が崩れ落ちても、あの部屋だけは無傷で残るといわれている、頑丈な代物だ。
「なるほど。我が君はしろがねはんに、毛ほどの瑕もつけたくない、と」
今上陛下への献上物として、慎重大事に扱いたいとの思し召しであろうか。
しかし夜を越さずにご出立とは、なんとも性急。一刻も早く褒美を得たいそぶりに見える。
『家司さまいわく、主さまは「これでやっと印が消える」と、ぶつぶつ仰せだったそうデス』
「印が消える? ということは……」
狐目の夫人は細い目をすがめた。
(まさか。聖印を無効化するものを、褒美にいただくおつもりやろか?)
夫人は倒れたしろがねの方を梅の間に運び、しばし看病した。舞わせた責任を思ってそうなさったのだが、そのとき、あの白い娘の体に触れるとかっかと熱くなることに気がついた。
あれは炎の聖印。貞操を守らせるものである。すなわち今のままでは主さまは、しろがねの方を抱くことができない。
しかもあの聖印は恐ろしい呪いである。印をつけた者が死なねば消えぬゆえ、めったに施されるものではない。生涯どこにも嫁がず純潔を貫き、いにしえの神獣と交信する、巫女王にしか刻まれないものだ。
(しろがねはんに聖印をつけたんは、おそらく帝都月神殿の者ですやろなぁ。それも相当高位にある御仁。容易に手が出せへん相手やわ)
それで主さまは陛下のもとへ飛んで行ったのであろうか? 印をつけた月の者の命を求めるために? 一刻も早くと息せき切って?
(せやけど。あの我が君が、おなごに懸想するとは思われへん)
主さまは女性に興味を持たれぬ方――狐目の夫人はそう認識している。
ときどき龍のいけにえに足らぬと判断した巫女を連れ帰るが、手はつけない。偽の戸籍を作るとすぐに、領地の御殿へ送ってしまう。
正奥様を筆頭とする巫女団のことは、たんなる雇いの女兵団とみなしてらっしゃるようだ。
「ふむ。となるとこれは冗談抜きで、竜蝶の甘露に毒されはったんやろか……」
竜蝶の種族の涙は甘い。そのひと粒で、人を骨抜きにすると言われている。不死身の主さまに耐性がないとは思えないが、耐え切れなかったのであろうか。
厳しい正奥様があの甘やかな匂い放つ白い娘に、なぜに目をかけたのか。それはいわずもがなというものだ。竜蝶の甘露は、性別関係なく効果を及ぼすと言われている。甘い媚薬から逃れられるのは、同族だけとの噂だ。
「ああ、うちもうっかり、舞を教えてもた。甘露にあてられたんかも……。でもまあ、我が君がしろがねはんに溺れても、いっこうに構いまへんけどな」
うちは、再婚やからねえ。
澄ました顔をくずして苦笑いすると、鏡が固い返事を返してきた。
『そう思われるのは、甘露のせいでございマスカ?』
「ふふ、そうかもしれへん」
『さようでございマスカ。ですが松の間の正奥さまは……』
「正奥さまは嫉妬に狂われ呪詛ざんまい、やろ?」
くつくつ。夫人が薄かさねの袖を口にあてて笑いを殺す。鏡は不思議そうに問い返した。
『その通りなのデス。奥さま、なぜに分かったのデスカ?』
「人工鬼火は頭が固い」
狐目の夫人は抱える琵琶を置き、そそと薄かさねの袖を脇に伸ばした。懐紙に包んだ練り香を一粒取り出し、香炉へほとりと落として香りを足す。ヒノキ床の室内にくゆらくゆら、わびさびた香りが漂う。
「アオビの一代目は、先帝さまの後宮にいてはった。魑魅魍魎が巫蠱ざんまいしよる伏魔殿にな。そのせいでアオビは、思考回路が後宮仕様のままなんや。あやついま、えらく慌てふためいてはるやろ」
『奥さまの仰る通りデス。家司さまは、正奥様のご嫉妬がーと、びくびくオロオロしておりマス』
「勝手に困りはるがよろしいわ」
香炉のそばの菓子台から、夫人は優雅な手つきで真っ白い醍醐をつまみあげた。
ついさきほど、出戻りの短冊と一緒に、鏡に載せられ床からせり上がってきたものである。
「アオビの空騒ぎを見聞きするは、よいひまつぶし。おかげでここの奥様ごっこは、そこそこおもろい。せやけど、口惜しいこと」
狐目の夫人はすうと目を細め、甘い醍醐にそうっと唇をつけた。
「正奥様の『嫉妬顔』とやら、見にいけまへんなぁ。ほんま残念やわ」
ひまで死にそうやとくつくつ笑い、ぱくり。夫人は甘い菓子をほおばった。
ほんのり寂しげに目を細めて。
「ああ、見たくてしゃあない」
黒き大樹そびえる森の中。
月が死んだ暗闇の夜のもと、ごおうごうと樹の一本が唸りをあげる。
なれどそれはまことの大木にあらず。
宵の気吸い込むそれこそは、漆黒まとう天突く塔。
万年杉にまぎれ建ち、せり出す樹肉の舞台には――
「イイイイイイイダアアアアアアイイイイイイイイイ!!」
どろどろはりつく、肉の塊。
「信ジランネエエエエエ! イテエエ! イテエヨオオオ!」
「まあ、レヴテルニの金獅子の咆哮は、風をかまいたちにするというからな」
「違ウッ! ソイツ二切ラレタノハ、首ダ! 首ハ、スグニ繋ゲタサ!」
肉塊が、ごおうごう。怒り心頭で怒鳴りたてるそばに、たたずむ影がひとり。
月光のない夜に沈んで、長い黒髪流れるその姿は漆黒。顔はまったく見えぬ。ただただ、水晶を打ち鳴らしたような美声がりんと響く。
「まあ……もう一歩踏み込んでいたら、完全に切り落とされていただろう。かろうじて皮一枚残って命拾いするとは、悪運の強い奴だ」
「アアソウサ、オレハオマエト同ジ不死身ノ化ケ物サ! デモ痛イノハナァ、チャント感ジル。今痛イノハココダ!!」
ずどんと地響き鳴らし、肉塊が足のごときものを影の前に突き出す。
無残に爛れたその棒のような塊には、大穴がぼっこり。緑に苔むした肌からびちびちと、長い細虫が無数に沸き出てそこへ集まっている。傷口に吸い付いてうねるそれらは、組織再生を行う蟲であるらしい。
「なんだこの穴は」
「オマエガヤッタンダロウガァアアア!!」
ずどんずどんと、苔むした肉の塊は腹立たしげに何度も、無残な足を地に踏みつける。しかし影は、まったく悪びれなかった。
「なんだ、吹き飛ばされただけじゃなかったのか。だが翼に穴が開いたわけではなかろう。飛ぶのは支障あるまい」
「飛ビナガラ再生ハ出来ン!」
「不器用だな」
「ウルセエ! 少シハ手加減シロ!」
「しているつもりだが……この塔はひよわすぎないか? なぜに怒鳴っただけで柱が折れる? ガタがきているにもほどがある」
「ガタツイテナンザイネエ! アンタガ、オカシスギンダヨ!」
「こんな安普請なところに置いていって大丈夫だろうか……」
「オイコラ、聞イテナイダロ! 待テ!」
肉塊の怒号を背に、漆黒の影はかつりかつり。固く端正な足音をたて、せり出した肉樹の舞台の端に控える鉄の塊に近づく。目の前に影が近づいたとたん、それはカッと目を光らせ、黒がねの両翼を広げた。
「待テ主! 出テ行ク前ニ慰謝料ヨコセ! 見舞い品! エサ!!」
それは全身金属。竜のようであるが竜ではない。足はあるが、腕は翼と一体化している。
その背に在る窪んだ各坐に影が乗り込むと。黒がねの機械竜はギシャアとひと声金属音をあげ、闇空に舞い上がった――
「エサヨコセコノヤロウ! 俺ニアノ甘イノヲヨコセ! 飯子! 俺ニ飯子ヲォオオオオッ!」
ごおうごう。肉塊の怒鳴り声に塔が揺れる。あたかも身を竦ませ、おののくように。
『……というわけで、柱国さまはシーロンさまではなく、鉄の竜に乗って宮処へ向かわれました』
寝台のそばの卓から、聞き慣れた仙人鏡の声がする。さきほどゆっくり、この部屋にせり上がってきたのだ。台座に嵌まった鏡の上には、湯気立つもの。皿が置いてあり、とてもおいしそうな匂いがする。
『三日間臓腑が動いておりませんでしたので、本日は林檎と粥だけを。主さまがそう思し召しておられます』
「ごはんが、かがみにのせられてくるなんて……」
クナは皿のそばにある匙をとれなかった。当惑の極みで、まったく食欲がわいてこない。
クナは、この寝室から出られなくされてしまった。
分厚い扉は閉じられて、鬼火たちは出入り禁止。部屋には押し戸がふたつあり、片方はご不浄部屋が、もう一方にはこぢんまりとした湯殿らしきものが続きにある。
寝台は異国のものらしく、腰ぐらいまでの高さ。そばにクナの衣が入っている長持ちがあると鏡に言われたので、手で探ってみれば。
『ああ、申しわけありません。そちらの箱には、主さまの衣が入っております』
ふたつ並ぶ長持ちは驚くことに、全く同じ作りのそろいのもの。左の箱には柱国さまの衣が入っていた。
それはとても不思議な衣で、手に持つとしゃらんと音がもれた。
楽器の音色のようなものではなく、耳元をくすぐるようなかすかな囁き。撫でるとぱちぱち、何かがはじけていた。
(かあさん……かあさん……きれいなおとよ)
思わず引っ張り出すと、鏡が、それは星黒衣だとうんちくを垂れた。
『その漆黒の衣は、夜空色に織られました、夜星の錦。綿蟲の糸から織られしものでございましょう』
「わたむし?」
『大陸の北西の国々におります、糸をだす虫でございます』
おそろいの長持ちだということにたじろぎながら、右の箱を探ると。
おなじようにしゃらんと歌う衣が、一番下に入っていた。鏡に見せればそれも、綿蟲の衣。きなりでまっしろだが、仕立ては主さまのものとそっくりだと言われた。
(はこだけでなく、きものまでおそろい?! ほんとに、ふうふのつもりでいるんだわ。どうして……)
うろたえるクナは、その衣を着るのは遠慮して、襦袢のようなものを一枚羽織った。当惑の極みで、食欲はまったくなし。
柱国さまの妻にされるなんて、思いもよらなかった。正直わけがわからない。生け贄としては役に立たぬから、腹いせに側女にしようと思ったのだろうか。
クナはちょこんと寝台に座り、見えぬ目をじんわり湿らせた。
好きだなんていわれなかったから、妻にしたのも部屋に連れこんだのも、きっと気まぐれ。柱国さまは月神殿の女性の命をとることで、役に立たぬものをもらった鬱憤をはらすおつもりなのだろう。さらには、ちがう娘をもらったことを、今上陛下に暴露するかもしれない。
月神殿が立場を悪くすれば、クナの家族は……。
ああ、それよりなにより。龍のいけにえにされなかったら、死んでかあさんに会うことは叶わなくなる。
「どうかちゅうこくさまが、つきのひとのいのちをとりませんように」
クナは床に膝つき、寝台に両肘を置き。手を合わせて必死に祈った。
神霊玉を飲んだ巫女の祈りは神霊力を伴うもの。ゆえにその祈念は天の神々に必ず届くと信じられている。
わずかばかりの間だが、クナは巫女の修行をした。となればほんの少しは、神霊の力が腹の中の神霊玉にたまっているはず。そのなけなしの力が祈願の力として発現するよう、一所懸命祈った。
(どうか……!)
心配でおののくクナは真剣そのもの。けれどその神霊力は、いくらもたたぬうちに力尽きた。
「ああ……ちからがでない」
腹が減っては戦は出来ぬということか。クナはやむなく気を奮いたたせて、鏡の上に載っている粥をすすった。
できるかぎり、胆力を貯めねばと、くんくん匂いを嗅ぎながら、柱国さまからいただいた果物にも、おそるおそる口を近づけた。
(ええと。りんご? っていったっけ?)
生まれて初めて手にしたものだ。甘酸っぱい芳香に惹かれ、おそるおそる、歯を立ててみる。手ざわりから想像した通りの固さだ。ひと口しゃくっと噛み千切って、しゃくりしゃくり。
「うわ……うわ? ふわぁ?!」
口の中に、えもいわれぬ芳香と甘みが広がる。
なんとおいしいのだろう。夢中になってもうひと口。もうひと口とかじるうちに、クナはあっという間にりんごを平らげてしまった。もっと……と思えば、部屋にはまだ、ほのかな芳香が漂っている。
クナは手探りで匂いのするところを探り、望みのものが円卓に置かれた籠にどっさり盛られているのを発見した、そのとき――。
どおんと、塔が揺れた。
長持ちの前に両膝をついているクナの身が、瞬間浮いた。
なにごとかと驚くと、またどおん。どおん。塔が震える。クナはまた浮いたり沈んだり。
なんと分厚い扉から、その衝撃音が出ている。何かがすさまじい勢いで、扉に突進しているようだ。
「な、なに、これ……なんかが、つっこんできてる……?」
衝撃が来るたび体が跳ねる。おののくクナは窓辺へ逃げた。
『奥さま、ご注意ください。何かが侵入しようといているようです。いますぐ非常口からご退避を。小湯殿の奥に隠し扉が――』
淡々と注意する鏡の声が、爆音のごとき轟音に遮られる。
刹那、分厚い扉が無理やりに外から押し破られた。
「飯子ォオオオオオオオッ!!」
押し入ってきた者はずどんずどんと床を響かせ、奥に進み。ふるえあがるクナのまん前ですさまじい咆哮を放った。
床が揺れる。壁が揺れる。
どこもかしこも、慄き震えている――
「会イタカッタァアアアアア! 飯子オオオオオオッ!!!!」