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踊り子さんは男嫌い!

作者: 咲夜

勢い作品です。内容薄っっいです!

それでも良いよ!という大海原のような広い心を持つ方のみお進み下さい!

失敗した。

こんな事になるんなら、呑みに行かないでユリア達と一緒に宿へ帰れば良かった。

最近、私の噂が広まったのか、こういった事はめっきり減っていたから油断した。

私ことミーシャは、酒で顔を赤く染めて欲の宿るギラギラした目で腕を掴んでいるリーダーを冷たく一瞥して言った。


「ねぇ、いい加減放してくれない?貴方、パーティーのユリアと付き合っていたわよね?」




 ソロで活動している私に、クエストが同じ方向だからという事で途中までの同行を申し出てくれた四人パーティー。

リーダーの剣士ノルド、魔法使いのレティ、シーフのユリア、格闘家のアランの四人は、ギルドの中でもそこそこに知名度のあるCランクパーティーだ。

 初めは申し訳なくて断ったが、踊り子が一人では大変だから遠慮するなと言われ、御厚意に甘えて同行させて貰ってから三日。

 道中、多少戦闘になったが割と順調に進んできたと思ったら、ここにきて問題が起こった。

 立ち寄った村で、久々の宿だ~!飯食いにいくぞ~!と沸き立つメンバーに呆れつつも微笑ましく思いながらついて行って、夕食後は当然呑み会。

 ほろ酔い気分でじゃあそろそろ…という処でリーダーの剣士に腕を掴まれ、今夜どう?の一言。

 何が?とは聞いちゃいけない。

そんな事を言おうもんなら、やれ教えてやるだの、わかってんだろだの、自分に都合の良いこと並べ立てて、あれよあれよと言う間に連れ込まれてペロリと食べられてしまうのがオチだ。

かといって頷いても拒絶してもいけない。

 これから先、目的地まで後二日もあるのだ。

 メンバー仲円満に辿り着く為にも、ここは笑顔でさらっと流してサッサと退場したいところだけれど、腕を掴む手が一向に離れてくれない。

 初日の夜にしていた恋バナで「彼、本当にしつこくてねちっこいのよね」と頬を染めて困ったように笑ったユリアを思い出す。

 しつこいのはわかったけど、ねちっこいまで知りたくないんだけど私!


「ねぇ、放してくれない?腕が痛いんだけど」


「君が頷いてくれるのなら、今すぐにでも放すよ」


だ、か、ら!あんたには彼女がいんだろーが!!ショートパンツの似合う美脚美人の色っぺぇシーフのお姉さんがよぉ!


 口汚く罵りそうになるのをグッと堪えて、掴まれた腕を振り解こうと引っ張った時。


「っやめて!離して!!」


同時に足を前に出されて距離を詰められたと思ったら、腰に手を回されて引き寄せられた。

酔いで体温の上がった熱い手が気持ち悪くて暴れれば、肘が鳩尾に入ったのか、掴む腕が緩んだのでその隙に抜け出す。


振り向いて睨めば、リーダーは鳩尾を庇いながらも負けないくらい強く私を睨みつけていた。


「踊り子なんだ、どうせ遊んでいるんだろう!?そんな貧相な体でも抱いてやると言ってるんだ!黙ってついてこい!」


般若顔で唾を飛ばしながら罵倒するリーダーに、私の感情は一気に氷点下まで下がった。

 どいつもこいつも…、男は皆同じか。

 踊り子として独り立ちしてから様々なパーティーと組んだが、男はいつもそうだ。

 踊り子イコール遊んでる、巨乳でお色気ムンムンなのが当たり前、声をかければ誰にでも足を開く、そんな扱いばかり。

ふざけんな!貧乳で悪いか!胸の大きさは関係ないんだよ!娼婦じゃねぇんだよ!そんなにヤリたきゃ娼館行ってこい!

 踊り子は、特殊な踊りに魔力を乗せてパーティーの士気を上げたり、身体強化したり、敵を惑わせたりするサポートジョブだ。

 激しい踊りでも難なく動けるだけでなく、綺麗に見えるように作られている踊り子の衣装は際どいものが多く、厭らしい目で見られたり、実際にそういった被害にあったりといった件が多発して、今では踊り子の数がめっきり減ってしまった。

 本職からしたら、いい迷惑だ。

 勘違い野郎に何度はっぱかけられ、断って罵倒されたかわからない。数えるのも馬鹿馬鹿しいくらいに同じ事しか言わない男共に見切りをつけ、ソロになってやっと一息つけた。

 今回だって初めは断ったのに、踊り子が一人では大変だからと声をかけてくれたのではなかったのか。

 声をかけたメンバーが、その大変な思いをさせてどうする!

 すっと顔面から表情が抜け落ちるのが自分でもわかった。

 もう、許さない!Cランクの剣士風情が!!

 

「言いたいことは、それだけ?」


 私は静かな殺意を向け、腰に差している愛刀シャムシールに手をかけた。

 踊り子がサポートだけだと思うな!剣舞は、剣の心得のある者でなければ出来ない。

 パーティーの士気と攻撃力を大幅に上げ、尚且つ相手を斬りつける事も出来る剣舞は、私の十八番だ!

 柄を握り、剣を鞘から一気に引き抜こうとした、まさにその時。


「はい、ストップ」


 後ろから白く大きな手に、抑え込まれた。

 いくら怒っていたとはいえ、私が背後に立たれても気づかなかった!?

 信じられない思いで振り返ると、目の前には白銀の胸当てが。

 次いで上を見上げると、物凄い美人が悪戯っ子のような笑みを浮かべて私を見下ろしていた。


「店内で抜刀はダメよ。やるなら外でやって頂戴。せっかくの美味しいお酒が台無しになっちゃうわ」


 突然の事に目を丸くして固まっていた私に、美人は続ける。


「それに、Bランクで既に‘’紫桃しとう剣姫けんき”の二つ名を持つ貴女が、そこら辺にゴロゴロいるペーペー剣士に抜刀したなんて、恥以外の何物でもないわよ」


「っ!」


「し、紫桃の剣姫っ!?なんで剣士じゃなくて踊り子なんだよ!」


まさか一発で見破られるとは思わなかった!


紫桃の剣姫の二つ名は、実はギルドマスターのシャレから来てる。

昔、剣舞で魔物をなぎ倒し、その死骸を踏みつけて舞った事と、私の桃色がかった紫の瞳を掛けて、紫桃(死踏)の剣姫になったのだ。

ほとんどの人が剣姫で剣士だと思うため、良いカモフラージュになってたんだけどね。


抑えられた手を外して少し距離を取り、改めて乱入者を見る。

180はあるだろう高身長に切れ長のサファイアの瞳。

腰まである真っ直ぐな白銀の髪を後頭部で一つに結い、身に付けているのは白銀の軽装。

小剣レイピア使いかと思えば腰にはいているのは長剣。

ここまで目立つ容姿で、私の背後が取れる人物なんて一人しかいない。


「まさかこんな所でAランク‘’蒼銀そうぎん閃剣せんけん”たるイーニアス殿に会えるとは思わなかったわ」


「嫌だわ、私の事はアイリスと呼んでちょうだい!」


「そしてまさかオカマだとも思わなかったわ!!」


いや、似合ってるけどね!めっちゃ美人にしか見えないけどね!

見上げた時、喉仏が目に入って私の思考は完全にフリーズしたからね!

そもそも、女よりも綺麗な男なんて敵でしかないから!


「失礼ね!でも、まさか紫桃の剣姫ミーシャがこんな所でパーティーといるなんて思わなかったわ。貴女、パーティーはもう組まないと噂で聞いていたのだけれど違うの?」


「いえ、本当よ。彼らとはクエストが同じ方向だったから偶々一緒になっただけ。私は男のいるパーティーと組むなんて絶対にしないわ」


散々な目にあったしね、と吐き捨てるとイーニア……じゃなかった、アイリスは苦笑いを浮かべた。


「踊り子への目は中々変わらないからね。けれど、ソロでやるのも大変じゃない?」


「剣の心得はあるし、踊りだけじゃなく魔法も下位から中位くらいは使えるのもあるから大丈夫よ」


「けれど、女一人で歩いてたら絡まれるでしょう?酒場とかで情報収集するだけでも苦労しそうね」


うっ、そう言われればそうなんだけどね。

酒場で絡まれ、宿で絡まれ、ギルドで絡まれ……。

その度、無視したり逃げたり張っ倒したり、割とめんどくさいのよね。


「確かに男がいないパーティーは少ないわ。でも、う~ん……」


アイリスは手を口元に当てて何やら考え始めた。

それを小首傾げて見ていたら、彼女は徐に口を開いた。


「ねぇ、貴女が今受けているクエストって手助け可?」


「なんて事はない採取クエストだから可だけど……」


「じゃあ、私も手伝うから一緒に組まない?私もソロで丁度サポート欲しいなって思ってたところなの。貴女なら心強いわ!」


パッと顔を輝かせて私の両手を自身のそれで柔らかく包み込んではしゃぐアイリスに、圧されて少し引いた。

いや、まだ引き受けるとは言ってないし、しかも男だし……、でもオカマは無害なのか?

包まれた手から伝わる温もりに、嫌悪感はない。

むしろ、どこかホッと出来るような、そんな安心感。


(この人となら、やっていけるかもしれない……)


もう長いことソロでやって来たけど、やっぱり一人だと限界がある。

踊り子のようなサポートジョブは特にそうだ。

(男だけど、そこらの女より美人だし、オカマだし、強いし、それに……)

彼は、私を異性とは見ていない。

ただ純粋に、私の身を案じているのが、わかるから。

だから……。


「仕方ないわね、付き合ってあげるわよ。でも、変な真似したらただじゃ置かないから!」


「いやね、そんな事するわけないじゃない!貴女のソレじゃあそんな気にもなれないわよ!」


ソレで胸を指すあたり、彼は命が惜しくないとみえる。


「上等だコラ!その喧嘩、倍値で買ってやる、面貸せ!」


「はいはい、女の子がそんな汚い言葉使っちゃダメよ!さっ、行きましょう!ギルドにも報告にいかなくちゃ!」


そう言ってルンルンで手を引っぱるアイリスに、私は文句を言いながらも小さな笑みをこぼした。



思い付いたら続くかも。

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