小便小僧の存在理由 (短編小説)
人類は、天気すら、自己すらも制御できないでいるのに、果たして宇宙を制御できるのだろうか?
01
私は記憶が欠落していた。
私は記憶が一日だけ欠如していた。
私は昨日、一日だけの記憶が無い。
私は今日の自分の姿を見て、今日の自分の立場を知って驚いた。
02
・・・・・・おとといまでの私は無職、年齢は30歳で彼氏無しであった。
・・・・・・それがなんと! 昨日の日をまたいで、今日の私は何故か、世界的大手IT企業の会長兼、アメリカ合衆国の大統領となっているではないか。
私の年齢は二十歳に若返り、容姿端麗になっていて結婚までしている。
私の夫は、国民的人気な某アイドルグループの一員。イケメン。
そして私達夫婦の間には、かわいい子供までいた。
何も申し分もない人生になっていた。
・・・・・・一日。たった一日。昨日の私に一体、何があったのだろうか?
03
・・・・・・しかしすぐに私は昨日の記憶を思い出す事が出来た。
私は成功したのだ!!
そう。ついに私は昨日、世界の、宇宙の仕組みのすべてを解明したのである。
この宇宙はすべて数学で成り立っていた。
この宇宙はすべて数学式で解き明かせるのであった。
この宇宙はデジタルであった。
私の脳は直接、宇宙と繋がっていた。
私の脳は宇宙の数学式と直結していて、そこで私はすぐさま宇宙のプログラムを書き換えた。
私は昨日、私の人生にチートを行ったのである。
・・・・・・だがしかし、私は無茶なプログラミング・チートを行ったせいで、この宇宙はバグりだした・・・・・・・・・・・・。
04
世界から音が消えた。
世界から音楽の意味が無くなった。
世界から色が消えた。
世界から宝石の価値が無くなった。
世界から闇が消えた。
世界から光が無くなったからである。
世界から形が消えた。
世界からすべての存在が無くなったからである。
世界の意味が消えた。
世界の意味が無くなった。
宇宙は消えた。
世界は消えた・・・・・・・・・・・・。
05
「・・・・・・僕は、小便小僧。
僕の存在は、まだ在った。
一体、僕の存在理由はなんなのだろうか?
一体、僕の作者は何を考え、何を意図して僕をつくったのだろうか?
僕はいつまでこんなに滑稽なまでにも、放尿を続けるのだろうか? 」
存在とは、自己があり、そして他の存在に自己が認識されてはじめて自己存在となりけり。
【終】
☆あとがき☆
人類が、宇宙の真理を解き明かしてしまったら、なんだか世界が壊れてしまうような気がいたします。