1-7
「組み合わせはどうする?」
「ジャミル、お前は誰と組みたい?」
ややあってジャミルが答える。
「……ではグレイ、お相手願おうか」
早速の指名、是非も無い。
「ああ、こちらこそよろしく頼む」
「ふはははは!では勝負だライン!」
「おいおい、勝負じゃなくて訓練だぜ……」
四人は器具庫へ向かうと訓練用の武具を漁り始めた。
「獲物はどうする?」
「……では剣と盾で」
「じゃあ俺らは長物にするか」
「ふふん、何でも来い!」
騎士学部と一般兵科学部では武器の扱いが当然ながら必須となるが、一口に武器といっても膨大な種類が存在する。剣の種類でさえかなりのものが有り、それぞれ取り扱いも変わってくる。無論そのような多種の武器の扱いを全て教えることは不可能であり、そこで学校では2つの必修の武具を定めた。
一つ目は一般的に用いられる刃渡り1メートル程の両刃の片手剣と量産されたアイロン形の盾を用いたでありこれは魔術師の盾となり詠唱の時間を稼ぐ為の戦いである。
もう一つはポールウェポンとも呼ばれる長い棒の先端に刃や槌がついた武器であり、こちらは体格にあわせていくつか種類を選択できるが、長いレンジの武器を用い積極的に敵を倒す戦いである。
器具庫の武器は訓練用の為に刃を潰してあり、さらにクッション材が巻かれており衝撃を抑える工夫が施してある。しかしながら重量をもった物質自体がある意味武器であり一瞬の油断により怪我を負ったり骨折したりすることも少なくは無い。
「ふーん!では始めるぞ!ライン!」
訓練用のレザーアーマーを着たサッカは2・5メートル程の鉄棒に大型の槌が付いたバトルハンマーを振り回すとラインに殴りかかった。素材が軽い木材で槌の部分はクッション材で作られているとはいえ直撃すればかなりの衝撃であろう。
「へっ!当らないぜ!」
対するラインは3メートル程の細身の槍をもっており、軽快なフットワークでサッカの射程から距離をとりつつ隙を見て槍を繰り出す。
「うおっ!」
腕を振るった直後の硬直を狙って突かれた槍を体を逸らして何とかかわす。
「ちっ、外したか。」
「なんの、まだまだ!」
不利を悟ってかサッカは標的をライン本人から槍自体に切り替える。まともに受ければハンマーの一撃により柄が折れてしまうであろう。
「でえい!」
「はっ!」
ラインもサッカの狙いに気づくと不規則に槍を動かし幻惑させるがサッカは疲れる様子も無くひたすらに持ち前の豪腕でハンマーを振り続ける。
いつしか二人の戦いは持久戦にもつれ込もうとしていた。
そんな二人の戦いをしばらく眺めていたがジャミルから声をかけられる。
「……ではそろそろこちらも始めようか」
「ああ、お手柔らかに頼む」
「……却下だ、戦場では誰も手加減はせん」
「ははっ、その通りだ」
あまりに真面目なジャミルの返答に笑ってしまう。それを不思議そうに見るジャミルであったがこちらが剣を構えるのを見ると体勢を整えた。
「じゃあ、始めよう」
「……魔法学部の者がどれほど出来るか、見物だな」
「試してみるといい、目の前にいる」
一瞬の攻防であった。声にならない気迫と共にグレイが剣を突き出す、しかしジャミルは慌てず盾で受け流すと共に袈裟に切りかかる。グレイが迫る剣を力任せに盾で跳ね上げると次いで剣を横薙ぎに振るうがジャミルは大きく後ろに跳び回避する。
「……やるな」
「おいおい本業がその程度か?」
互いににやりと笑みを交わしつつも相手の挙動を警戒する。
「……では本気で行かせてもらおう!」