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謝罪した辺りで他の生徒は練習を再開した、自分は怒られるようなことをした覚えはないのだが……。
「にゃは♪そーいえばグレイさんや」
「何かな?」
「さっきはありがとね♪」
「……何のことかな?」
「にゃはは♪そーいうとこ、嫌いじゃないよ♪」
「……」
「「「「うわぁ!」」」」
突如として上がる歓声。
その中心には杖の先から直径1メートル以上の大火球を造作なく放っているリリアの姿があった。燃え盛る火球は耐火機能を持つ筈の的を包み焼き尽くした。
「すげええ!」「し、信じられん」「さすが天才だな」「ありえなーい!」「……」
周囲から上がる歓声にも不機嫌そうに一瞥するだけで無言でリリアはカードと杖を収めた。
「ぬお!相変わらず凄いな!」
サッカが感情を昂ぶらせ大声を上げる。
「くっ、いつもあいつがボクが一番になる邪魔をする……」
リードは憎らしげに呟く。
「にゃは♪凄い凄い!……ま、どーせあたしたちみたいなのには永遠に関係ない人だねー、いっつも難しい顔して何考えているんだかにゃー」
フレイはけらけら笑いながら声をかけてくる。
「……まあね」
まあ、実際自分もそう思っていたが運命とは奇なるものだ。
その後も実習は続き水や風、土の基礎魔法の復習が終わったところでチャイムが鳴った。
魔法を唱えるたびに周囲に多大な迷惑を振舞うサッカやアートだとか言って幾何学的な模様を魔法で作り出すフレイ、それに巻き込まれるグレイの3人はその後も3回程怒られる羽目となった。
チャイムが鳴り無言で実習室を出ようと立つリリアに生徒たちは道を譲る。そして横を通った時、小さな声が耳を打った。
「……いつもの時間、いつもの所で」