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5-12

 ズン、という轟音と共に地面が陥没し草や砂埃が舞い上がる。フレイは唇をかみ締め凄惨なことになっているであろう震源地を睨みつける。

 しかし砂埃が風で流されてもそこに倒れるリリアの姿は見えなかった。

 これは一体どういうことかと呆然としつつも目を動かすと悪魔の後方に1つの影が見えた。

「ふ~、危機一髪ってとこだなぁ」

 リリアを抱えて額の汗を拭うポーズをする。実際には汗一つかいていないが。

「遅い」

 口調こそ厳しいが頬は完全に緩んでいる。

「悪いな、だが間に合ったし許してくれないかな?」

「……ん」

 小さく頷くとリリアは抱えられたままの姿勢でグレイの胸に頬を擦り付ける。しかし急に無表情になるとグレイの顔を見上げる。

「……むう、他の女の匂いがする」

 顔は無表情であるが声からは不満げな感情が読み取れる。

「ん?ああ、あっちに見えるだろ。ここまで馬で乗せてきてもらったんだ。後で礼を言っておいたほうがいい」

 それに答えずさらに鼻を鳴らして臭いを嗅ぐ。

「……それに裾からなんか臭う」

「ん?ああ、まあ色々あってね……そんなに臭うかな?」

 むー、と唸るとリリアは無言で体全体をグレイに擦り付け始めた。まあ、怖かったのだろうと考えるとグレイは為すがままにされる事を選ぶ。

「危ない!」

 フレイの叫びと共に目標を身失っていた悪魔が突進してきているのが見えた。

「やれやれ、これが中級竜魔『グリーンドラゴン』か。全長は……5mはあるな。この上火も噴くなんてどれだけ生物の範疇から逸脱しているのか」

「大丈夫?」

「う~む、まだ何とも言えん。まずは相手を知らなければね、っと摑まってろよ!」

 突進してくる竜を横っ飛びに辛くもかわし、竜はその質量のまま走り抜ける。

「ふぅ、あんなのに当たれば一撃でお陀仏だな」

「その割には楽しそう」

 グレイの顔をのぞきこむ言うリリアの言葉にグレイは少し驚く。

「ぬ?そう見えるのか?」

「ん、笑ってる」

 頬に手を伸ばし触るリリアにグレイは自分の頬が知らないうちに釣り上がっていることに気づく。

「おお、本当だ!驚いたなあ。厄介ごとは御免だと普段から思っているのに」

「ん、楽しければそれでいいと思う」

「ははっ、そうだな」

 本来ならば生命の危機が迫る緊迫した空気の筈だが、そこで場にそぐわず楽しそうに話す二人はどこか異様であった。

「だ、大丈夫ですか!?」

 到着したアリエッタが馬を止めてが横たわるフレイに駆け寄る。

「うん、でも足がやられてちょっと動けそうないんだよね」

「ちょっと見せてください……これは!?早く冷やした方がよさそうですね」

「それよりもまずはここから逃げないと」

「そ、そうですね!でもグレイさん達が……ああっ!?」

 直接的な攻撃をかわされ業を煮やしたのか竜がグレイとリリアに向け大口を開ける。その喉奥には小さな炎が見える。

「おお!これが噂のドラゴンブレスか!文献や御伽噺ではよく聞くが初めて見る!」

 何故か楽しそうなグレイではあるが竜の喉は膨らみ今にも火を吐かんばかりだ。

「フレイ!アリエッタ!今からの事は内密にしておいてくれよ!」

 後ろを振り向き二人の姿を確認するとグレイが叫ぶ。

「は?」「ええ!?」

「わかったな!」

 有無を言わせぬグレイの大声に思わず頷く2人。グレイはそれを見ると満足そうに笑う。

「来る」

 リリアの言葉に前を向いたグレイはその場から動かずに目を瞑る。

 竜の炎は容赦なく二人を焼かんと口から吹き出した。


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