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5-6

 今あそこからから感じる感覚は今までの比ではない。ゾワリとした冷たい感覚。どう考えても行くべきでない、そう本能がグレイに警鐘を鳴らしている。だが。

「あいつらがいる、か」

 頭に浮かぶのは二人の少女。サッカと共にいつもつるんでいるフレイ、そして。

「ぬう?フレイ以外にも知り合いがいるのか?」

 サッカにグレイの呟きが聞こえたらしい。

「ああ」

「行くのか?」

「本当は行きたくないが、見捨てるのは後味が悪い」

「ふむ、我も行こうか?」

「いや、馬を使う。先に行っているからこっちが片付き次第来てくれ。キノコは使えん」

「ぬう、確かに動ける魔術師が誰もいないというのは少し危険か」

 目を向けると未だリードは震える手でカードを持ちながらぶつぶつと呟いている。戦いの流れが変わったことにも気がついていないようだ。

「その通りだ……まあ行ってくるさ」

「ふはははは!死んだら骨くらい拾ってやるぞ」

 笑って突き出される拳に自分も笑って拳を当てる。

「はっ、言ってろ」

 グレイはサッカから離れゴブリンと交戦中のジャミルに声をかける。

「あっちの救援へ行ってくる」

「……こちらが片付いてからのほうがいいのではないか?」

 ジャミルの意見ももっともではある。いくら優勢といってもまだ悪魔の数は未だ自分達以上に残っている、油断をしたり運が悪ければ死人がでる可能性もある。確実に潰していくのが一番の安全策だろう。

「いや、あっちにも知り合いがいる。それに」

「……なんだ?」

「一番安全といわれるこの道でさえこの状況だ」

「……」

 一番安全な場所でこの有様では他の場所であれば此処以上に厳しい状況になっていることは想像に難くない。まして自分達はまだ学徒兵、どんな混乱がおこっているのか。

「斥候用の馬を借りる」

「……乗馬は得意か?」

 そこを言われるとつらい。

「何とか乗れる程度だ……まあ徒歩よりは速いさ」

「……そうか。アリエッタ!」

 後ろで矢を放っているアリエッタに声をかける。

「は、はい、お兄様!何でしょうか?」

「……こいつと共に3班のところまで駆け学友を助けろ」

「ふえ!?」

「いや、一人でいい。二人も乗せたら馬が遅くなるだろう」

 わざわざ自分の勝手で他人を危険な目にあわせたくは無い。

「……身内贔屓ではないが、こいつの乗馬術は一流だ。たとえ2人乗って重くなっても慣れていないお前が一人で向かうよりは早く着く。連れて行け」

「だが彼女には危険すぎる。あそこには魔法学部の学年主席がいてその上で救援要請をしている状況だ……恐らく此処以上に良くない状況だろう」

 先程の感覚を思い出せばなおさらだ。

「あ、あの!」

 アリエッタが珍しく大きな声を出し会話に割り込む。

「わ、私は大丈夫です!きっと役に立ちます!」

 アリエッタの目を見る。その目は真っ直ぐにこちらを見ている。確かに助けにいっても間に合わなかったのでは意味が無いが。

「君を守りきれる保障は無い」

「は、はい……自分の身は自分で守ります!」

 アリエッタの目は揺ぎ無く、力に溢れている。ならば力を借りよう。

「そうか……わかった。ではよろしく頼む!」

「はい!」

 アリエッタが笑みを浮かべて元気よく答える。

「……よし、現在時刻を持ってグレイ、アリエッタ両名は緊急信号を発する3班救出へ向かえ!武運を祈る!」

「了解!」「お兄様も!」

 二人で少し離れたところに待機している馬に向けて走り出した。


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