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第五章 危機 5-1

「……全員集まれ!」

馬車を止め臨戦態勢をとる。一般兵科学部はワックスで煮込み硬化処理されたレザーアーマーを着込み武装として腰に吊った長剣に加えて各自ポールウェポンを携えているがアリエッタとサダリアはその代わりに小さめの弓を携行している。

騎士学部はチェインメイルを着込み盾と片手で持てる軽量の槍を持ち、そして腰に長剣を携えている。

魔法学部はいつもと変わらぬローブ姿で全員腰にワンドを挿しグレイはハルバードを、サッカはバトルハンマーを、リードはスタッフを手に持っている。スタッフは丈夫な樫の木から作られた長めの棒で軽くて扱いやすく、近づく敵に振るうことで払いのけることもできる。

「ライン、敵の規模は?」

 ジャミルが全員揃ったことを確認すると尋ねた。

「遠眼鏡で見たところだとこの先にゴブリン20、犬が10、あとハーピーが7,8匹くらい見えたぜ。ただ近くに小さな林もあったからそこにも敵がいるかも知れねえ」

「……まあまあの規模だな。ハーピーが少し厄介か」

 ジャミルの呟きが聞こえたのかトニーが質問する。

「あの、ハーピーというのはそんなに強敵なのですか?」

「……やつらは魔法に似た攻撃を仕掛けてくるからな。ハーピー自体は下級翔魔でゴブリンとブラックドッグに比べれば見かけないがそう珍しいというわけではない」

 次にハシントが手を上げて質問する。

「魔法を使うってどんな感じなんスか?」

「……正確に言えば魔法に近い技だが、奴らの羽の色は3種類ある。赤いハーピーは泣き声と共に火球を吐き青いハーピーは鋭い氷片を出す、そして緑色のハーピーは衝撃派を発する。一番厄介なのは最後だな、致死的ではないが衝撃波をまともに受けると数メートルは飛ばされることとなる、そして何より火のように見えなので避け難い」

 ジャミルはロッジとマルカを見て言う。

「……俺達騎士学部は『破魔』でハーピーからの攻撃を無効化し他の兵士を守るのが一番の役割だ。しかしながら同時に近寄る敵にも対処する必要があり素早い判断力と適切な対応が求められる。気を抜くなよ」

「わかりました!」「はーい!」

 ジャミルは双子の返事に頷くと続ける。

「ではライン、トニー、ハシントが最前線、チャベル兄弟と俺が続く、二人は俺の左右を固めろ。『破魔』は基本的に俺がやる、二人はまず自分に近づく敵を最優先で倒せ。後ろにリード、サッカ、グレイ、サダリアとアリエッタは魔法学部の護衛を行いつつ矢を放ち援護しろ。そうだな、グレイに殿を任せる。まずは矢と魔法で出会い頭に攻撃を仕掛ける。次に生き残ったハーピーから仕留めることとしよう。優先順位は緑、赤、青だ……なにか質問はあるか?」

 挙手する者がいないことを確認し力をこめてジャミルが宣言する。

「……これより戦闘を開始する!」 



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