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「……成程」
……そういうことか。ハシントにはまだ何のことが解らずこっちとあっちを交互に見ている。それを見たアリエッタは悲しげに微笑む。
「ハシントさん、私は何学部でしょうか?」
あっ、という声を上げハシントはようやく気づいたようだ。
「ええ、騎士の名門であるコンポール家において私は騎士の資格である『破魔』が使えなかったんです」
「でもいいとこのお譲様だったら別に騎士なんかじゃなくてもいいんじゃねえのか?」
アリエッタは首を振る。
「貴族はより良い子供を残すために騎士や魔術師の素質が無い者はいらないんです。仮にコンポール家と関りを持ちたい貴族が迎えようとしても家の恥としてお父様が許さないでしょう……私はいらない子だったんです」
力なく笑うアリエッタ。ハシントは拳を握りやり場の無い怒りを床に叩きつけている。
「私も騎士にはなれなくとも悪魔と戦おうとここに入学したんですが……ダメですね、昨日は私のせいでみんなに迷惑かけてしまいましたし、もう私なんてなんの価値も無いんです。自由なグレイさんが羨ましい……」
目から涙を流してそう締め括る。嗚咽を零して泣くアリエッタ。確かに身の上話は聞かせてもらったし嘘をついてるとも思われなかった。
「ふん、それで?」
「え?」
「いや、確かに君の生い立ちは聞いた。まあ俺にとってはどうでもいい、知ったことではないつまらん内容だったな」
動くことも無く求めるだけで不幸を嘆く、どうしようもない不運の連続ならば悲劇として観賞し甲斐があるがこれは違う、ただの木偶にすぎない。グレイはそう思う。
「な、な!」
アリエッタの表情に怒りが浮かぶ。
「君は何を言いたかったのか?俺は同情します!かわいそうですねとでも言えばいいのか?そうだとしたら残念だ、期待には応えられんしそれは甘えだ。そんな君の言葉は俺の琴線に触れることは無い」
ここで同情したらその後はただの茶番劇となっていただろう。
「ひ、ひどい!何も私の苦しさなんて分からないくせに!」
「当たり前だ!」
声のトーンを上げ自分の気持ちを言葉に込めアリエッタへと叩きつける。
「便所のゴミ箱に捨てられていた俺と冷遇されていたとはいえ裕福に暮らしてきたお前のどちらが幸福か?不幸か?そんなもの分かるわけも無いし知ったことではない。誰でも生まれは選べない、そしてそれは当たり前のことであり重要なことではない!」
当たり前のことだ、自分の人生を決めるのは自分自身でありすべては主観の違いに過ぎない、どんな生まれであれ暮らしであれ、それに満足するか、抗するか、諦めるかは本人次第でしかない。
「重要なのはどう生きるかだ。確かに生まれは選べない、だが生き方は自分で決めることが出来る!お前は何故ここにいる?命を懸けてまで悪魔と戦いたかったのか?本当に兵士となり戦いの中で生きたいのか?」
それは自分自身にも言い聞かせるような言葉であったかもしれない。どう生きるのか、というこの命題は。
「そんなの分からないっ!分からないよ!」
俯いて両手で耳を塞ぎ泣き叫ぶアリエッタの手首を強引に掴み顔を近付け覗き込む。
「分からないか。結構なことじゃないか!」
ようやく本心を聞けた、今までの話は不幸に酔った戯言に過ぎない。そうか、分からなかっただけなのか!グレイの顔は満面の笑みを浮かべていた。
改めて読むと一人称や三人称が混じっていてぐだってますね・・・




