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翌朝となり休憩所近辺を探索したが結局昨夜の襲撃が全てだったのか悪魔と遭遇することは無く一行は再び馬車に乗り目的地へと向かうことになった。
「ぬわにいいい!俺が寝てる間にそんなことがあったとは!」
「って朝も説明しましたよね先輩!」
「ふはははは!朝はどうにも弱くてかなわんな!」
「あはは、やっぱサッカさんって変な人だねー」「確かにおかしいですね」
馬車Aでは今日はロッジに替わりサダリアが御者席に座っている。馬車内では昨日と同じように会話が行き交うが話の焦点は専ら昨晩の襲撃についてであった。
「でも昨日のグレイ先輩は凄かったですよね」
トニーが興奮したように話す。
「うん!白兵戦も判断力も魔法学部にはとても見えないよね。」「カッコよかったねー。」
双子も昨晩のことを思い出し絶賛する。
「でも最後のアレはどうかと思いましたが」
「あ、うん。アレはね」「変態っぽかったねー」
「なに?何のことだ?」
三人は昨日グレイが寝る前にアリエッタとしたやりとりについて話した。
「ふははははははは!さすがグレイだな!」
サッカは腹を抱えて笑う。
「グレイさんっていつもあんな感じなんですか?」「かー?」
「ふはははは!まあな、あいつは我みたいな常識人と比べて頭がズレているのだよ!」
「な!」「はい?」「えー!」
サッカが自分の事を常識人と称したことに2年生3人は驚愕する。
「ぬう?どうしたそんな驚いて?」
「いやいやあの騒ぎの中でずっと寝ていた人が常識人とか言われましても!」
双子もコクコクと頷き同意する。
「なん…だと?むう、意見の相違というものはいつの世にもあるのだな……残念だ。」
「いや!悲しそうな顔されましても!意味わかりませんし!」
トニーが突っ込むがサッカには聞こえていないようだ。
「……はあ、中はいいわねえ」
昨日のロッジも同じ気持ちであったのだろう。後ろで楽しそうに話されているとどうにも寂しくなってしまう。
「あら?」
道の先に小さな影が見え、それは徐々に大きくなっていき姿をはっきりとさせていく。そこに見えた者は。
「ラインさん?」
馬車Aでは昨日と同じくジャミルが御者席に座っていた。グレイやアリエッタが交代することを提案したが。
「……有事の際に素早く対応が出来る」と譲らなかった。ジャミルなりの昨晩の反省なのだろうと思いグレイはアリエッタを促し馬車へと入った。
馬車の中では相変わらずグレイが『ライブラリ』を読み、リードが窓の外を見てハシントが昨日より入念に武器の手入れをしており、そしてアリエッタは昨日と同じように隅に座っていた。その表情は暗い。
アリエッタは昨晩のことを思う。夕食が美味しかった事、眠ってしまって班の全員を危険に晒してしまった事、そして助けてもらった事。未だ一部の班員からの視線は厳しいが仕方が無いことであると思う。何より死に掛けた自分が自分で招いてしまった恐怖を身を持って知ったから……。思えばあの時助けてもらわなければ、雪崩打って入ってきた悪魔を防いでもらわなければ取り返しのつかないことになってしまっただろう。そしてあの時自分は動くことも出来ず腰を抜かして震えるだけだった。そして子供のように泣き、粗相までしてしまい・・・アリエッタは本当に自分が情けなく思った。




